新井 仁 院長の独自取材記事
谷津どうぶつ病院
(習志野市/谷津駅)
最終更新日: 2023/01/22
京成本線の谷津駅から徒歩10分の場所にある「谷津どうぶつ病院」。院内に入ると、陽光が差し込む明るい待合室にゆったりと腰掛けられる長いすが並んでいる。院長である新井仁先生は、「動物も飼い主さんもくつろげる空間にしたい」との思いを持ち、ほかの動物との接触が苦手な動物用のスペースも外に用意し、さまざまな動物や飼い主が来院しやすい環境を整えている。新井院長は、2010年に父の代からの医院を受け継ぎ、このエリアのホームドクターをめざし診療に注力。さらに、飼い主とのコミュニケーションを大事にし、診療時間外でも電話で相談に応じている。今回のインタビューでは、新井院長に医院のこだわりや診療で大切にしていることなど、じっくり話を聞いた。 (取材日2016年4月25日)
動物と飼い主にとってベストな治療法を提案
明るくきれいな待合室ですね。
父の代からの動物病院を引き継いだのが2010年、2年前に今の医院に建て替えました。待合室の長いすはスペースを広めにとっているので、キャリーバックやケージを乗せてもゆったりとお座りいただけます。少しでも動物や飼い主さんにとってストレスがないようにと考え、このような造りにしました。このエリアは昔ながらの商店街や住宅地があり、のどかな雰囲気がありますが、最近は新しいマンションが建ち並び開発も進んでいます。以前よりも猫を飼っているご家庭が増え、診察では犬と猫が半々くらいの割合ですね。父が開業してから30年以上たちますので、父の代から来ていただいている方のお子さん世代も、またペットを連れてここに来てくれています。
電話での相談にも応じてもらえるそうですね。
ええ。電話でお話を伺って、その状態によっては診察時間外に連れてきてもらうなど対応をしています。すぐに診たほうが良いのか、診察時間まで待っても大丈夫なのか、飼い主さんが判断をするのは難しいですよね。そういった場合は、電話でお気軽にご相談ください。不安な気持ちで過ごすよりも、話すことで少しでも安心していただければと思います。当院では地域のホームドクターとして質の高い医療を提供すると同時に、飼い主さんとしっかりコミュニケーションをとりながら、きめ細かい診療を行うことをめざしています。ペットの飼い方も昔と比べるとずいぶん変わってきていますので、大切な家族の一員であるワンちゃんや猫ちゃんについて「ちょっとしたことでも聞きやすい」獣医師でありたいですね。
診療で心がけていらっしゃることはありますか?
治療についての選択では、こちらの意見を押しつけないようにしています。最新といわれる治療が、その子や飼い主さんにとって必ずしも一番良い治療ではないこともあります。治療の効果は高くても痛みを伴うものであれば、それを望まない飼い主さんもいらっしゃいます。動物の年齢によっても治療の選択肢は変わってきますので、それぞれの治療法の良いところと悪いところをきちんとご説明して、その子にとってどの方法が一番か、飼い主さんにとって納得できるものを選んでいただく。例えば怖がりな性格であれば、入院ではなく自宅でできる最善の治療を考えるなど、その子にとってベストなものをご提案します。飼い主さんが治療に対してどのような思いを持っているのか、まずはそれをお聞きすることを大切にしています。
自身の診療の幅を広げるため、小動物診療を志す
先生が獣医師になろうと思われたきっかけは?
やはり獣医師だった父の影響は大きいですね。医院と自宅がつながっていったので、小さい頃から生活の一部に動物医療がありました。父が診療をしている様子をバックヤードからこっそり見て、自然と獣医師に興味を持つようになりました。治療を終えて動物たちが元気になると、飼い主さんは「ありがとうございます」と言って帰られる。幼いながらに人から感謝してもらえる仕事なんだと感じたのを覚えています。父から「獣医師になってほしい」と言われたことはありませんでしたから、プレッシャーを感じることなく素直に「やりたい」と思えたのでしょうね。
大学卒業後は産業動物に関わっていたそうですね。
はい。岡山県で乳牛などの産業動物を中心に対応していました。それまでは父の仕事を見ていたこともあり、自分も小動物の診療をと考えていましたが、大学で大動物の医療を学ぶうちに「こんな世界もあるんだ!」と新たな道がパッと開けたのです。産業動物はペットとして飼われる小動物と違い、診療は命に直結することが多く、非常にシビアな世界。汗をかいて泥だらけになって動物と向き合っていました。そのぶん、ひとつひとつのことをやり遂げた瞬間は、とてもうれしく、それまでの疲れが吹き飛びましたね。
その後、小動物診療に転向されたのはなぜですか?
日々産業動物を診る仕事をしていく中で、ある時から、自分の診療の幅をもっと広げたいと思うようになったんです。犬や猫などの小動物は獣医師の判断で提供できる診療も広がりますし、いずれは父の病院を継ぎたいという思いもありました。そこで、千葉の動物病院に勤務を経て、ここに戻ってきたんです。獣医師としてうれしいのは、病気だった動物が元気になる様子を見ることができた瞬間。飼い主さんに喜んでもらえることが、やりがいにつながっています。
目の傷や病気は早期の検査・治療が重要
眼科の疾患や治療について教えてください。
犬、猫、それぞれなりやすい目の病気があり、種類によっても変わってきますが、まずはきちんと検査をすることが大切です。ワンちゃんに多いのは、角膜潰瘍、緑内障、白内障。角膜潰瘍は活発に遊んでいたり、動物同士のじゃれ合いなどで目に傷がつくことで引き起こされます。ワンちゃんは人間よりも瞬きが上手にできないため、ドライアイになってしまうことがよくあります。痛がって目をつぶっている、目が赤くなる、目やにが多いなどの症状が出ていたら注意をして、早めに獣医師に相談してください。目は替えがききませんので、早めの判断が重要です。猫ちゃんの場合も、涙目になっていたり、膿が出ていたり、目がうまく開けない状況であれば、感染症の可能性がありますので治療が必要です。
最近増えていると感じる疾患などはありますか?
皮膚の疾患を抱えている子が多いと感じています。特にワンちゃんは、犬種によって皮膚病になりやすい場合があります。また、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなど体質によるものは、長期的な治療が必要になりますので、飼い主さんと獣医師が良い関係を築きながら一緒に経過を診ていかなければなりません。治療をすればすぐに治る病気ではないため、病気のことを理解してもらった上で、良い状態を維持していく。一生付き合っていかなければならない病気ですから、症状をコントロールしながら、その子にとってベストな治療法の選択が必要です。
診療されていて何か気になることはありますか?
人間の高齢化が進んでいますが、ペットも長生きする子が増えてきている印象があります。病気というよりは介護についてご相談を受けることが多くなりました。「夜泣きがひどくて困っている」「褥瘡(床ずれ)ができて痛そう」といったことで、悩んでいらっしゃる飼い主さんはたくさんいらっしゃいます。そういった場合は、飼い主さんに自宅でのケアの仕方を教えてあげたりなど、できる限りの対応をしたいと思っています。
最後に今後の展望をお聞かせください。
この地域の動物たちのホームドクターとして、長く診療を続けていきたいと思っています。何でも気軽に相談できて、安心してもらえる診療を心がけていきたいですね。特に目の病気については、私自身ももっと深く掘り下げて学びながら、レベルの高い医療を提供できればと考えています。少しでも気になる症状があれば、遠慮なくお尋ねください。また、高齢のペットも増えてきていますので定期的な健康診断が大切です。5歳以上になれば年に1回は検査を受けたほうが良いですね。診療以外では、今後ワンちゃんの育て方についてのアドバイスやしつけ教室の開催、捨て猫の譲渡会などへの協力もしていきたいと考えています。