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宇井 貴之 院長の独自取材記事
しらかば動物病院
(船橋市/新船橋駅)
最終更新日: 2023/01/22
船橋市にある「しらかば動物病院」は、清潔感のある居心地のいい病院だ。入り口を入ってすぐ、動物病院特有の臭いがほとんどしないことに驚いた。天井の高い開放感のある診察室も、患者が安心できる要素ではないだろうか。宇井貴之院長は、飼い主とのコミュニケーションを診療の柱に置く獣医師。診療内容の説明も丁寧で、飼い主がしっかり耳を傾けられる環境づくりを大切にしている。「過酷な環境の中でもすくすく育つ白樺のように、新たな土地で生き生きと根を張る病院でありたい」病院名にそんな思いを込めたという宇井院長に、獣医療へかける思いを聞いた。 (取材日2016年8月23日)
大切なのは飼い主目線。悩みの多い皮膚科に焦点
先生はなぜ獣医師を志したのですか?
小さい頃から動物を飼っていたのですが、幼い時は自分で面倒を見ることはありませんでした。成長するにつれ、自分で動物の世話をするようになり、生き物に関わる仕事がしたいと思うようになったんです。とはいえ、進路をはっきり決めたのは高校生のころ。それまでは、父の背中を追いかけてパイロットになりたいとか、運動選手になりたいという気持ちもありました。しかし、自分が育てていた、世話をしていたワンちゃんや、鳥たちが、病気等でなくなっていく中で自分が何をしてあげることができたかを考えた時、獣医さんが浮かんできたんです。学生のうちはいろいろ考えるものですが、今考えると進むべくして進んできたのが獣医師への道だったのでしょうね。
どのような患者さんが多いですか?
飼い主さんが訴える症状の中でもっとも多いのが皮膚疾患です。病気全体で考えれば、皮膚病そのものはものすごく多い病気でははないでしょう。しかし、飼い主さんにもすぐわかるものが多いため、動物病院へ来るきっかけになりやすいのです。他の病気は体の中のことですから、なかなか飼い主さんが気づけず、症状が重度になってから来院するケースもあります。ワンちゃんネコちゃんに何か違和感を覚えたら、ぜひ一度来院していただきたいですね。取り越し苦労のこともありますが、早期に病気が発見されれば、治りやすいケースが数多くあると思います。
具体的にどのような症状を訴える飼い主さんが多いのでしょうか?
かゆみと脱毛です。最近はアレルギー患者が多くなり、昔はほとんど聞かなかった動物の食物アレルギー、アトピーも増えています。かゆみのすべてがアレルギーではないものの、現代病といえる疾患になりつつあるのは間違いありません。当院にも他院でアレルギーと診断され、来院する飼い主さんがたくさんいらっしゃいます。多くの場合、飼い主さんの生活環境が少なからず影響しているものですから、しっかりお話を聞かせていただき、その動物に合った対応をご提案させていただきます。一度アレルギーと診断されても、その子の皮膚病が毎回アレルギーとはかぎりません。別の原因による発疹の可能性もあります。自己流で対処せず、皮膚治療に強い動物病院でしっかり判断していただくことをお勧めします。
正しい診断と治療のためのコミュニケーション
診療の中で心がけていることは何ですか?
診療時間をしっかり取り、飼い主さんとのコミュニケーションを大切にしていることです。病気に対して治療の進め方は、人それぞれ考え方が違うので、メリットデメリット含めて様々な治療法を飼い主さんに話してそこから選んでもらっています。スムーズな診療のためには必ずしもいい面ばかりではないですが(笑)。でも正しい診断をし、それを飼い主さんにわかりやすく伝えることこそが重要なんです。じっくり会話をしているとわかるのですが、シャンプーや自宅でのケア方法など、飼い主さん自身が獣医師の話を間違って理解していることも多々あります。そういったことを説明しなおすことも重要な治療の一貫だと思います。たった数分、会話の時間が長くなっただけで、これまでわからなかった「何か」が見つけられ、しなくていい検査を避けられるかもしれません。飼い主さんの診察に来てもらう時間と労力を少しでも減らすためにも、会話は大切だと思っています。
病院の特色を教えてください。
マイクロバブル発生機を入れ、毛穴からきれいにするシャンプーを実践しています。もちろんこれだけで疾患が治りはしませんが、医学的な治療と合わせて取り入れることで、相乗効果が期待できます。また、当院は「予防できる病気はまえもって予防する」ことを診療スタンスとしています。そのため動物を飼い始めた段階で飼い主さんにそれを習慣づけてもらえるよう努めています。病気予防だけでなく、歯磨きや薬の飲み方なども動物が小さいうちに慣らしておくことが大切です。また、病院に慣らすことも飼い主さんに意識してもらって対策をたてています。実際、病気になった時に以前よりスムーズに治療に入れるようになり、病気が治りやすくなった気がします。
小さいころの習慣づけというと、しつけも同じですね。
その通りです。当院では、しつけインストラクターを月に2回お呼びし、「犬のしつけ教室」を開催。飼い主さんたちにも声をかけ、積極的に参加していただくようにしています。参加できるクラスもさまざまで、生後数ヵ月で行うパピーパーティー、その後すぐに行うパピークラス、ある程度大きくなってからの初級クラス、飼い主さんに向けたセミナーをご用意させていただいています。ワンちゃんが大きくなってから「しつけに困っている」と相談される飼い主さんも少なくありませんが、人間とも同じように、大きくなってからの癖直しは簡単ではありません。インストラクターとタッグを組んでしつけ教室を開いている動物病院はあまりないと思いますので、飼い主さんにはぜひ有効利用してほしいですね。
ペットは大切な家族。それを教えてくれた患者に感謝
印象に残っている患者さんとのエピソードはありますか?
今でも忘れられないのは、代診時代に担当したてんかん持ちのワンちゃん。ずっと病院に通っていただいていたのですが、脳の障害がでて歩行困難が著しくなってきた頃、開業した自分が治療を引き継ぎ、ご自宅へ往診に行くようになったんです。そのお宅ではご家族みんなが交代し、寝たきりのワンちゃんを24時間体制でお世話していました。1年以上その生活を送った末、ワンちゃんは亡くなったのですが、僕はその飼い主さんに獣医師として大切なものを教えていただいたんです。それは「ペットは家族である」という本当の意味。そのできごとが、それまで「獣医師は病気を治せばいい」と思っていた自分から、「飼い主さんのサポートをしながら、病気を治したい」と思う自分への転換期になりました。
今後の展望を教えてください。
生まれた時から亡くなる時まで、来ていただいているワンちゃんネコちゃんの一生を丁寧にケアしていきたいというのが僕の望みです。当院でできることはできる限り取り入れていき、それ以外の面では必要な時に必要な機関をご紹介できる体制を整えていきたいと思っています。また、飼い主さんがどうすればいいのかわからないとき、当院に来れば何が必要かわかるようにしていきたいですね。ちょっとした疑問を聞きに、動物を連れて病院に来ていただくのも大歓迎です。いつか必要になったとき、病院に連れてきやすくするためにも、できるだけ小さなころから病院に通っておくことも大切。元気な時におやつをもらいに来たり、体重を量るためだけに来たりしながら、病院が単に治療をするこわい場所ではなくいいことがある所と教えてあげてほしいです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
動物病院を選ぶ時は、ぜひ気の合う獣医師がいる病院を選んでください。病気をきちんと治してくれる病院であることは大前提ですが、獣医師も人それぞれです。どんな名獣医でも、飼い主さんの考えと合わない人もいるでしょう。動物病院は“大切な家族”の一生を預け、通い続けていく場所。また、飼い主さんの不安は動物にも伝わります。いざという時、動物がすんなり治療させれくれるかどうかは、飼い主さんと病院の信頼関係も無関係ではありません。どうか自分と動物のためになる病院選びをしてくださいね。また先述のとおりより正確な診断をするために診療時間は多めにとっていますが、その代わり診療後の時間は短くなるようにスタッフを増やし、なるべく待つ時間を少なくできるように努力しています。月1回程度で体重をはかるついでに普段との違いを軽く話すこともできますので、病気を早期発見するためにも気軽に相談していただければと思います。