中川 善裕 院長の独自取材記事
しろいアニマルクリニック
(白井市/西白井駅)
最終更新日: 2023/01/22
「しろいアニマルクリニック」は、北総鉄道北総線・西白井駅より徒歩15分のところにあり、遠くからでもわかる黄色の愛らしい建物が目印だ。木の温もりを感じる心落ち着く雰囲気の院内。受付には赤い屋根がかかり、高い天井には5匹の小鳥のオブジェが隠れているといい、おしゃれかつ遊び心にも富んだ、病院を感じさせない明るい院内づくりになっている。中川善裕院長は、相手の気持ちを汲み取りながら会話を進める穏やかで優しい先生だ。受付カウンターには患者からの作品が飾られ、オープン以来、長きにわたり、地域住民に慕われているのを感じた。開業に至るまで、さまざまな経験を積んできた中川院長。開業に至るまでの経緯や診療に対する思いなど、たっぷりと話を聞いた。 (取材日2017年1月25日)
開業へ歩を進める後押しとなった阪神淡路大震災
獣医師をめざしたきっかけを教えてください。
小さい頃から動物が好きだったのですが、家では犬猫を飼えなかったので、祖父の形見のセキセイインコをかわいがっていました。僕が中学生のときにそれが亡くなってしまい、自分が治せてあげられたらな、と思ったのが最初の動機です。それから、動物園の飼育員であり、カバ園長として有名な方の著書を読んで、日常では体験し得ないその仕事内容に感銘を受け、動物園の獣医師になりたいと思いました。獣医師免許を取得するには、獣医学部を卒業しないことには果たせませんから、まずは受験勉強を頑張りましたね。大学での獣医学の勉強は、とても面白かったです。
それから進路はどのように決めたのでしょうか?
動物園の獣医師になるのは非常に狭き門でしたので、大動物の勉強をしようと、4年生のときに北海道へ牧場実習に行きました。そこで衝撃を受けたのは、病気になった犬猫の場合、治療をして救うという選択肢がほぼ採択されるのに対し、大動物の場合、治療にお金をかけるか、あるいは食用にするか、という2つの選択肢があり、犬猫とはまるで異なる価値観で診療を行うことでした。大動物を扱うことはおおらかな自分の性格にも合っていましたし、楽しかったのですが、僕には動物を救いたいという思いがやはり強かったので、犬猫の開業医をめざしました。
その後はどちらで経験を積まれたのでしょうか?
ある日教授が、大阪にある化学会社が人員を募集しているということで、応募者を募っていました。そこは大企業でしたから合格するとは思っていませんでしたし、それより僕は交通費や宿泊費の手当ても出るということでしたので、これを機に大阪にいる先輩の元に訪ねたいという思いもあり、軽い気持ちで面接を受けに行きました。そしたらなんと合格してしまい、開業資金を貯金したいという思いもあったので、そのまま就職することになりました。その会社では、農薬や医薬品の登録申請に際して、安全性を証明するための試験の監修をしていました。8年間勤めていたのですが、そこで社会常識を身につけることができたりと、サラリーマンという他の獣医師にない経験をできたのはとてもよかったと思っています。
開業に踏み切ったきっかけは何でしたか?
僕が大阪で勤務しているときに、阪神淡路大震災を経験しました。直接大きな被害を受けた訳ではありませんが、その経験を経て命の尊さを改めて感じ、生きているうちにやりたいことを叶えようと、そこでいよいよ臨床に足を踏み出す決意をしました。それから大学の先輩のいた千葉県に身を移しました。開業して18年が経ちますが、当時この一帯は今のように開発が進んでおらず、動物病院は一軒もありませんでした。そこで地域のためにも開院の必要性を感じ、この場所で開業することにしました。
動物の負担を最小限に抑える診療
こちらのクリニックの診療スタンスを教えてください。
当初は動物病院が近辺にありませんでしたので、小動物の診療も行っていましたが、現在は専門の先生にお任せして、こちらでは犬猫を中心に診療しています。また、専門性の高い病気については他の医療機関へご紹介し、当院では地域のホームドクターとして一次診療に努めています。動物と飼い主さんの双方にとって苦痛の緩和ができるような医療を届けたいと思っています。
地域性をどのように感じられていますか?
市内の患者さんのご利用がほとんどです。ここは新しい住民と古くからの住民が共存している町で、患者さんの中には昔ながらの方法でペットの飼育をされている方も結構いらっしゃいますね。例えば、フィラリアに感染していないから予防する必要がないとお考えの方もいらっしゃるのですが、それはたまたま周りの動物が予防をしているからフィラリアがいないのであって、やらなくていいということにはなりません。そうした誤解を解いていけるよう、地道に飼育指導も行っています。それから僕が関西にいたのもありますが、この地域の患者さんは静かで穏やかな方が多い気がします。
そんな患者さんの胸の内を引き出すためにされていることはありますか?
動物の状態を一番よく把握しているのは飼い主さんですから、飼い主さんからお話を引き出せるように努めています。一回質問をしてわからなければ、角度を変えて質問をし直したりもします。そして、飼い主さんの証言をヒントにどこが悪いのかターゲットを絞っていきます。治療法については、患者さんによって経済的な事情は異なりますので、できるだけその患者さんがどれだけの治療を望んでいるかを汲み取り、いくつか治療法をご提示した上で、お選びいただくように心がけています。実際、お金をいくらでもかけられるなら、いくらでも検査や治療を行うことができます。しかし、それが動物にとって一概にいいとは言えません。僕がプロとしてできることは、患者さんの負担を最小限に抑えて、その中で診断をつけ、病気を治すことにあると思っています。
優秀なスタッフもクリニックの自慢の一つ
来院される飼い主さんにアドバイスされたいことはありますか?
年齢を重ねたら健康診断を受けていただきたいですが、費用もかかりますので、年齢の若いうちはそれよりもやはり患者さんの目で動物の変化に気をつけて見ていただきたいです。少しでも異変を感じたら、すぐに来院ください。それからワクチンの接種についてはしっかり行っていただきたいと思います。動物の平均寿命が延びているのはそうした予防の周知が徹底され、実践されていることもあると思います。
こちらにはどのようなスタッフが在籍していますか?
僕の他に、動物看護士が2人とトリマーが1人おります。トリミングについては行っておらず、病気などがあり、自宅でのシャンプーの困難なワンちゃん猫ちゃんの薬浴のみさせていただいています。スタッフには気持ちよく仕事を行ってもらえるように、ミーティングを欠かしませんし、お休みもしっかりと取ってもらっています。それから月に1回食事会を開いて、クリニック外でもコミュニケーションを図っています。どのスタッフも長く勤めてくださっているので、患者さんのこともよく把握してくれていますね。優秀なスタッフも当院の自慢の一つです。
最後に今後の展望をお聞かせください。
予めご自分で情報を調べてから来院される患者さんが多いのですが、それが情報源の不明なインターネットからの情報である場合がほとんどです。中には正しい情報もありますが、それを一般の方が取捨選択をするのは非常に難しいことですから、正確な情報を発信すべく、今後、クリニックでセミナーを開催できたらいいな、と考えているところです。最近は、○○動物病院の△△獣医師による監修という謳い文句のフードがドラッグストアでも簡単に手に入ったりと、特に食事については情報が錯綜し、患者さんに大きな誤解を生んでいるのを感じますので、それについて啓蒙していけたらいいですね。