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吉田 高嗣 院長の独自取材記事
よしだ動物病院
(白井市/西白井駅)
最終更新日: 2023/01/22
千葉ニュータウンの一角を占める白井市(しろいし)西白井にある「よしだ動物病院」。院長の吉田高嗣(たかつぐ)先生は診察のモットーとして、病気で苦しむ動物を早く治してあげたいとしながらも、「飼い主さんに治療をいかに納得してもらえるかということも重要」と語る。そして検査の必要性やそれに伴う治療費などを丁寧に説明することに重きを置いている。開業したのは2008年。今では多くの飼い主からの信頼を得ているが、「始めた当初はここは住宅のまばらな土地だった」と振り返る。そんな新たな街の歴史を切り開いている先生に、同じ獣医師だった亡き父への思い、今も胸に残る経験など、いろいろと聞いてみた。(取材日2016年12月28日)
納得してもらえる医療
先生のモットーを教えてください。
臨床獣医師の仕事は、医療であると同時にサービス業だと思っています。治す相手は言葉を話せない動物なので、最終的には日ごろ面倒を見ている飼い主さんの意向に大きく左右されます。例えば治る病気をお金の問題で断念せざるを得ない方もいらっしゃいます。こちらからも誠心誠意ご説明しますが、治ったとしても費用がかかってしまうことを良しとしない方も当然います。ですから獣医師はペットの治療が最も大事ですが、その治療を飼い主さんに納得していただく為のインフォームド・コンセントも重要だと考えています。
診察にあたってのお考えをお聞かせください。
検査をするのは病気を見つけるためだけではなく、「本当に悪いのか」「どれくらいの状態なのか」と疑問を持たれている飼い主さんに理解していただくためでもあるんです。当院は一般的な検査機器であるエコーやレントゲン、血液検査機器などを備えていて飼い主さんに状態の把握をしていただいています。ほかには、聴診器からのペットの心音を飼い主さんと一緒に聞いたりもします。いずれにしても、飼い主さんに理解していただきつつ早く治してあげたい、それだけですね。
力を入れている取り組みはありますか?
当院は2次病院ではありませんので特にこの分野を重点的にということはありません。ただ初期段階で体全体をルーティンに診ることを心がけています。例えば耳が痒いという症状で来院されても他の部位も触ってみるとか。飼い主さんも気づいていない症状・病態を発見し、病気のトリアージを行うことに力を入れています。そして高度な検査・治療が必要な場合、大学病院等の2次病院と連携して治療にあたっています。
良い治療でも最後が肝心
先生が獣医師になったきっかけを教えてください。
実家は岩手で、2代続く動物病院でした。祖父は戦前から軍馬を診察、後を継いだ父は小動物の診療に興味を持ち犬・猫の獣医療を始めました。そんな父の姿を間近で見てきて、小学校の卒業文集でも獣医師になることを将来の夢に掲げていたのですが、父は44歳の時に病気で他界してしまいました。当時中学生だった私は獣医師への思いをさらに強くし、地元の岩手大学に進学。卒業後も故郷から出るつもりはなかったのですが、教授から勧められた千葉県松戸市の動物病院に勤務し、現在の診療の礎となる先生に出会うことができました。それから群馬、埼玉の病院でいろいろな経験を積むことができました。
印象に残っている臨床経験があれば教えてください。
以前、1年以上診ていた動物がいました。ある夜、そのペットの具合がすぐれないからすぐ来てほしいと、ご家族から電話がかかってきたのです。私としては行きたかったのですが、飼い主さんの家が遠かったこともあり、翌朝に診る判断を下しました。ところが、その後ペットの容態が急変、そのまま亡くなってしまったのです。若かった私は、それでも自分なりに精一杯やったとばかり思っていました。でものちに飼い主さんからいただいた手紙に「最後に先生に診てもらいたかった……」と書かれてあったのです。飼い主さんを寂しい気持ちにさせてしまったんだなと今さらながら気づき、急いでその方に電話したのですが出てはくれませんでした。その時、どんなに良い治療をしても最後を共に看取ることができないと飼い主さんにはやり切れない感情が残ってしまうことを痛感し、これからはより最後まで看取れるようにしようと思いました。
こちらの白井市で開業しようと思った理由は?
もちろん故郷・岩手での開業も考えました。でも同時期に大学の先輩が同じ地域で開業したことや元々豪雪地域だった為千葉で開業しようと決意しました。私の代で地元の病院の歴史を途切れさせたという申し訳ない気持ちもありますが、故郷に残っている母は開業の援助をしてくれました。本当に感謝しています。開業当初この辺りにはまだ動物病院がなく、飼い主さんは隣接する市の病院に通っていました。そのとき、わざわざ隣の市の病院に行かなくても良いようにしようと心に決めてやってきました。その時は当院の周囲はまばらな住宅街でしたが、その後、宅地も造成され、住民も増えました。あとで皆さんから「良い場所に建てましたね」と言われましたが、実は建てたあとに周りが賑やかになったんです。
西白井の犬猫を守るのが責務
西白井という街はいかがでしょうか。
この西白井は先ほども言ったようにまだまだ新しい街。同じ時期に分譲が始まりましたから、ほかの住民の方も、結婚して子どもができて、ここに家を建てて……と同じような人生の時間を過ごしています。生活が落ち着いてくるとペットを迎え入れたいと思わせる環境だと思います。来院される多くの方が30代か40代ということもあって、診療の合間には仕事の話になったり、子育ての話になったりと飼い主の方々とは何かと共感しあえるんです。
今後の展望をお聞かせください。
今後も気軽に寄れるような病院作りをめざし、この周辺地域の犬猫の健康を守っていきたいと思っています。日々の診療の中で、初期診断には力を入れておりますので、今後もしっかりと緊張感をもって、診察に当たっていきたいですね。また、多岐にわたる症状をより詳しく診るために病院の設備面をもっと充実させたいと思います。そういえば今度、亡くなった父と同じ年齢を迎えます。自分がそれを越えて年を重ねていくことが不思議な感覚なのですが、これからも、街の人々とともに歩いていきたいと思います。
最後にメッセージをお願いします。
無駄な治療をせず、出来る限り早く治し、早くお家に帰すことを心がけています。ただ、治ったら終わりという事ではなく、定期的に通院して頂けるような取り組みも行っております。当院には爪切りや肛門腺絞りなど散歩がてら来院される方も非常に多いので、皆さん気兼ねなく立ち寄っていただけるとうれしいですね。やはり定期的に来院してくださることで、病気の早期発見につながります。飼い主さんにしかわからない小さな異変もあると思いますので、いつもと何か違うなと感じた際には迷わずにご相談にいらしてください。