佐藤 聡 院長の独自取材記事
アリサ動物病院
(平塚市/平塚駅)
最終更新日: 2023/01/22
平塚市・平塚競技場の近くにある、「アリサ動物病院」。車社会である地域の特性に合わせ、自動車でも訪れやすいよう、十分な駐車スペースを確保している。院長の佐藤聡先生は、明るく朗らかで、ハキハキと話をする姿が印象的な獣医師。「専門分野を絞らずに、さまざまな動物を診てきました」と語る佐藤院長。犬、猫、うさぎから、爬虫類などまでと、その診療動物の数は多い。そんな佐藤院長が語るのは、獣医師と飼い主の信頼関係の大切さ。根底には、動物たちへの温かい思いがある。平塚と愛知県の豊橋、2つのクリニックを行き来し、忙しい日々を送る佐藤院長に、じっくりと話を伺った。 (取材日2015年11月13日)
先輩の動物への熱い思いにふれ、感銘を受けた学生時代
いつ頃から獣医師を志すようになったのですか?
幼少時代、私はクワガタを捕まえたり、クモの巣にバッタを引っ掛けて、捕食するのを観察するなど、昆虫や動物と接することができる環境で育ちました。そのうち、動物などを自分で飼ってみたいと思うようになり、亀や金魚の飼育に興味を持つようになっていきました。生物の図鑑なども好きで、よく読んでいましたね。小学校にあがるときのテストで、鳥の絵の中から、アヒルを選びなさいという問題がありました。カラス、クジャク、アヒルのような鳥が選択肢にあったのですが、そのアヒルのような鳥は、特徴をきちんと捉えていなかったので、「この中にはアヒルはいない、これはガチョウだ」と言ったりする子どもでした(笑)。中学生のときは、豪快なダンクシュートを決めるバスケットボール選手に憧れたりもしていましたね。ただ、バルセロナオリンピックで、当時ドリームチームと言われたアメリカ代表のNBA選手の姿を見て、日本人の体格との大きなギャップを感じました。その後、初心に立ち返って、獣医師を志すようになりましたね。
大学時代の思い出に残るエピソードがありましたら教えてください。
北海道江別市にある酪農学園大学獣医学部で学生生活を送りました。北海道の大自然の中で、牛などの家畜についての勉強から始まり、その後、ゼミに入って学ぶのですが、ゼミの1学年上の先輩から大きな刺激を受けました。というのも、私自身それなりにいろいろな動物の知識を持っていると思っていたのですが、それよりもっと上がいるなと痛感したんです。先輩は、プレーリードッグ飼育のための部屋を用意して、牧草をばら撒き、巣作りのための穴を掘れるようにしてあげたり、コウモリを換気口から自由に外に飛ばしていたりするなどしていたんですよ。カルチャーショックでしたね。北海道の冬は気温が低く、雪が降るので、24時間暖房をつけますし、夏でも、温度管理のために暖房をつけることもあります。ですから、先輩は、自分の生活を支えるためにアルバイトをするのではなく、動物の生活を支えるためのアルバイトをしているわけです。図鑑や書物で得た私の知識は、「コピペ」の知識というか、実体験の伴わない知識でしたので、飼育してみてわかることも多いという先輩の言葉を聞き、その姿勢に感動しましたし、非常に勉強になりました。
動物のために痛みをコントロールして治療
開業に至るまでの経緯を教えてください。
大学卒業後、まずは、名古屋の動物病院で勤務しました。その後、開業を念頭に置いて、半年間ほど知り合いの病院で代診をしながら、具体的な場所の検討やクリニックのイメージを考え、30歳のときに開業しました。平塚の地を選んだのは、大学などの研究機関が多く、医療水準が高い首都圏に近いこと、また、地元の愛知県豊橋とのアクセスを考えてのことです。豊橋で開業したいという思いもありましたので。2年前に豊橋にも開業して、現在は、平塚と豊橋、半々くらいで診ています。近年、新東名高速道と圏央道が整備され、アクセスが良くなったので、豊橋まで3時間ほどで行けるようになり、とても便利になりました。
可愛らしいクリニック名ですが、名前の由来は何ですか?
アリサというクリニックの名前は、以前実家で飼っていたシェパードの名前からとりました。高校2年生の12月くらいに、私がもらってきて飼い始めた犬です。もらったときは子犬でしたが、あっという間に大きくなりました。私が学校から帰ってくると、犬小屋を壊していたり、とても元気な犬でしたね。受験勉強より、しつけの方が大変になるほどでした。結果的に、1度目の大学受験に失敗して、親にはこっぴどく怒られましたよ(笑)。
平塚はどういった動物が多いですか?
栄えている場所からは少し離れているので、皆さん自然な感じで犬を飼っているように思います。柴系の犬が多いかな。都心部と比べると、やや大きい犬を飼う方が多いように感じます。外で飼う方が多いのでしょうね。あとは猫、うさぎ、フェレットなどですね。爬虫類を連れてくる方も、いらっしゃいます。私自身、これまで専門分野を絞らずに、いろいろな動物、症例を診てきましたので、間口は広いと思います。椎間板ヘルニアの手術も提案できますし、変わったところだと、亀の避妊手術も行っています。
診療にあたり、大切にしてることは何でしょうか?
学生時代、麻酔科の先生に影響を受けて、痛みのコントロールというのを熱心にやってきました。私は痛みをとってあげることは大事だと思っています。術前、術後、一般的な治療も含めて、痛い治療、つらい治療は出来るだけ避けたいと考えています。ペインクリニックと同じ考え方ですね。飼い主さんとのコミュニケーション、インフォームドコンセントは当然大切で、必要なことですが、そもそも根底には動物が好きで、悪いところがある、痛いところがあるなら治してあげたいという気持ちでいます。麻酔をすることに不安を感じる飼い主さんは多いですが、リスクという部分については、獣医師が担保して、安心してもらうこと。触ろうとしたら、引っかいてくるような興奮している猫の場合、麻酔して寝ている間にすべて終わった方が、猫にとっても治療する側にとっても良いと思いますので。
大切なのは、獣医師と飼い主が信頼関係を構築すること
さまざまな検査にも対応できるそうですね。
診療の中で、必要になってくる検査機器は一通りそろえています。外部の検査機関と協力関係にありますので、特殊な検査にも迅速に対応できます。設備については、外部の検査機関で対応出来るのであれば、導入しなくてもいいという考え方もできますが、迅速性や、自分が求める診療の質を考えて、必要なものは導入しようと思っています。超音波検査機も新しいものに変えたことで、診断に生かせていますし、気づきや学びにもつながっています。技術の進歩は早いですから、数年でアップデートすべきこともあるなと感じています。
休日はどう過ごされていますか?
私はドライブが好きなので、車で出かけることが多いです。ゴルフもしますね。緊急な対応が必要な場合に備えて、平塚と豊橋の間をとって静岡あたりでプレーしたりしています。あとは、犬と遊んだりもしますよ。今は、熊みたいなジャーマンスピッツをかわいがっています。余裕ができたら、また、シェパードを飼いたいですね。
今後の展望についてお聞かせください。
若い先生に経験を積んでもらって、複数の獣医師と力を合わせたグループ診療を行っていければと考えています。動物は人のようにナースコールはできません。つきっきりで治療、見守っていないと治らないというケースもあり、技術が進歩しても、マンパワーに頼らざるをえないことは、やはりあるんです。朝来たら、すでに亡くなっていましたというのは私でなくてもどの病院でも言えることですが、私がお預かりした責任として、せめて1人ぼっちで亡くなるということ無いようにできれば、と思いますね。私は、動物に対して「具合はどう?」と手で触れてみて話しかけることが、心のこもった治療だと思っていますので、今後もこのスタンスを大切に診療を続けていきたいです。
最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
最近、獣医師会の先生と話したことなのですが、今は、獣医師が行った治療や処方した薬、あるいは費用について、インターネットで調べて正しいのか、適切かどうか確認するという方が増えているようです。ネット社会の今、そういう時代になってきており、仕方ないことなのかなと思います。でも私は、治療には飼い主さんと医師の信頼関係がとても大切だと考えています。実際に動物を診て、飼い主さんとお話をして分かってくることがたくさんあります。ですから、動物医療においては、まず飼い主さんと医師とがきちんと話し、コミュニケーションをとりながら治療していくことが第一だと思います。その方が動物たちにとってもいい治療になるのではないでしょうか。飼い主の皆さんにはビジネスライクにならず、きちんと信頼関係を築いていくことができるかかりつけ医をみつけていただきたいですね。