- 動物病院ドクターズ・ファイル
- 神奈川県
- 平塚市
- 平塚駅
- 福沢動物病院
- 福澤 和浩 院長
福澤 和浩 院長の独自取材記事
福沢動物病院
(平塚市/平塚駅)
最終更新日: 2023/01/22
平塚市中原にある「福沢動物病院」。診療を行う本院の他に、動物病院には珍しいヘリカルCTやリハビリルームを設けるCTセンターがある。院長の福澤和浩先生は、常に新しい検査機器や手術機器、治療法などを勉強し、良いと思ったものはどんどん取り入れる。それは、どんな病気であっても最善を尽くせる環境を整えたいという思いから実現している。地域に根差したクリニックでありながら、専門性の高い診療を提供してくれる頼れる存在だ。「これ以上手の施しようがないと診断されてしまった子にも、何か手を尽くせるかもしれない。そんな思いで常に情報を集めています」と話す福澤院長に、他では珍しい治療のことや患者への想い、今後の展望までじっくり聞いた。 (取材日2015年11月19日)
CTや内視鏡など、検査を充実させて適した治療提供を
CTなどの検査機器が充実しているそうですね。
これまでは、CT検査が必要な場合には大学病院にご紹介していたのですが、そうするとどうしても長い待ち時間や高い費用がかかってしまいます。費用が高いために検査を諦めたり、検査待ちの間に病気が進行してしまうのは、一番悲しいこと。すぐに正確な検査結果を出して、より良い治療に進んでいただきたいという思いで、CTを導入しました。一般的な病気の検査はもちろん、異物を飲み込んでしまったときの検査も手軽にお受けいただけるメリットがあります。また、内視鏡検査では、がん検査において正確な診断ができるだけでなく、誤って飲み込んでしまった異物を開腹せずに摘出することもできます。開腹とは異なり体への負担が少なく入院も不要で飼い主さんにもお喜びいただいています。また、レントゲンではわかりにくい慢性的な嘔吐にも、お腹の中を直接検査することができますから原因の特定がしやすいです。
眼科の検査も受けられるとか。
はい。眼科領域の検査設備も整えています。眼科はたくさんの専門医の先生がいらっしゃいます。しかし、初期診断でその予後が大きく変化する領域です。例えば緑内障は、初期の治療の遅れが即失明につながります。最適な診断と、そして治療をお受けいただき予後を良くしていくためにも、的確な初期診断のできる設備を整えています。目が赤い、目が白い、眩しそうにしていると感じたら、なるべくすぐに診察を受けていただくといいと思います。当院では、角膜の病気における手術までを対応しています。
角膜の病気の他には、どのような手術に対応していますか?
避妊・去勢手術はもちろん、整形外科、がんなどの手術を行っています。特殊なものとしては、体内に手術糸を残さない機器や超音波メス、電気メスなどの機器を取り入れ、より精度の高い手術を行うことや、体の小さな動物のために手術時間の短縮、無血手術を心がけています。がん(の治療)においては、手術では切除が困難な場合や再発してしまうことも。そのような患者さんへは、手術以外の治療法も提案しています。その一つに、光線温熱器という機械で患部に熱を当てることでがん細胞を死滅させる方法があります。抗がん剤を使いたくなかったり、手術では取り切れなかった場合に適した治療法です。どんな病気でも、手術も効果がなく「これ以上手の施しようがない」と言われた子と飼い主さんに、少しでもしてあげられることはあると思うのです。そのためにも私は、常に新しい知識や技術を学んでいきたいと考えています。
リハビリによって予後も快適な生活が送れるように
力を入れている治療や設備はありますか?
以前に比べ、通院している患者さんの中に、高齢で寝たきりになってしまう子が増えてきています。また、整形外科領域の手術後、以前のように歩けなくなってしまったという子も多く、人間同様にペットたちにもリハビリが必要だと考え、リハビリの設備を整えました。現在は評判が良く、たくさんの方にご利用いただいております。水中トレーニングや歩行トレーニング、バランスボールなどを使った全身のトレーニングやマッサージをメインに行っています。屋上がドッグランになっているので、ある程度回復してきたら思いっきり走ることも可能です。また、症状によってはレーザーや電気鍼を加えた理学療法や、鍼灸・漢方の東洋医学も取り入れ、ヘルニアや股関節の治療などに効果的です。さまざまな治療を組み合わせ、ペットそれぞれに合わせたプログラムを組んでいます。飼い主さんにもご好評いただき、今後ももっと強化していきたい分野ですね。
ペットの定期検診をお勧めしているそうですね。
当院では、どんな病気に対しても最善を尽くすための設備を整えています。しかし、最も重要なのは、病気にならないための予防に努めること。食事を変えるだけで大きな病気が防げることだってあります。しっかりと検診を受けていただくことで、予防のためのアドバイスができたり、早期治療をすることができます。検診は7歳以上ならば半年に一度、10歳以上ならば3ヵ月に一度受診いただくことが理想的です。まずは血液検査や尿検査などの手軽なものからお受けいただき、問題があれば超音波検査やCT、内視鏡検査など掘り下げた検査まで対応させていただきます。お気軽にご相談いただきたいです。
診療の際に大切にしていることは何ですか?
ペットは言葉が話せない分、人間の医療よりも診断がしにくいことが多いのです。そのため、飼い主さんのお話しをしっかりとお伺いし、見落としのないように努めています。飼い主さんと密にコミュニケーションを取りながら、今どんな状態なのか、なぜこの検査が必要なのかをお話しし、ご納得いただけてから十分な検査をすること。そして、その検査結果をもとに、どんな治療法が最適なのか、どんな予後が見込めるのかを丁寧にご説明します。
支えてくれた地域患者にずっと恩返しを続けたい
先生が獣医師をめざされたきっかけは何ですか?
もともと父親が獣医師で他の場所で開業しておりました。幼い頃から犬や猫、うさぎ、モルモット、小さなワニまでたくさんのペットを飼っていて動物が大好きでした。さらに高校時代に、獣医師がヒトの大学病院でがんの基礎研究をしている記事を読み獣医師にもこんな世界があることを知り獣医師をめざそうと決意しました。大学院では病理学教室に所属し、がんの研究に携わることができました。獣医師を志したきっかけでもある念願の研究でした。そこでは、教授や先輩からたくさんの研究の基礎を教わりました。卒業後は臨床の道に進みましたが、当時は今と違って、獣医学における情報が非常に少ない時代だったので海外留学経験のある先生方からお話を聞き、技術を学びさまざまな知識を吸収できました。私の獣医師としての基盤をつくってくれました。
開業されて20年以上ですが、今の思いをお聞かせください。
私が生まれ育ったこの平塚で開業して22年。当時はクリニックのみでしたが、4年前にはすぐ近くにCTセンターも設けることができました。おかげで入院施設も広くなり、あらゆる治療に対応できる環境を整えることができました。患者さんは近隣の方がほとんどですが、ご紹介やインターネットを見て、セカンドオピニオン的に遠方から来院くださる患者さんも増えています。開業して感じるのは、患者さんに恵まれているということ。温かい方々ばかりで、お互いに感謝しながらずっとお付き合いを続けていける環境です。また、スタッフも明るく笑顔の絶えないメンバーが集まっています。スタッフ同士で情報交換をするなど、スタッフが一丸となり、同じ思いで患者さんをサポートしている。そんな最高の環境で働けている今に感謝しています。
最後に、今後の展望など伺えますか?
これからも新しい知識や技術を貪欲に吸収しながら、少しでも患者さんのお役に立てる治療を提供し続けていきたいですね。例えば現在は、がん治療やヘルニア、皮膚病などの治療における新しい可能性である再生医療を勉強中です。このように、常に「患者さんのためになることはないか?」と頭をひねっています。また、積極的に獣医師を育てたいと思っています。めざしているのは、どんなことでも相談できる身近な存在。そして、そのお困りごとに最適な方法を提示することができる技術や設備、医療連携が整ったクリニックです。決して、「わからない」で終わらせないよう、情報収集や新しい設備の導入を怠りません。その姿勢にこれからの獣医師たちにもついてきてほしいです。