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武田 繁幸 院長の独自取材記事
柄沢どうぶつ病院
(藤沢市/藤沢駅)
最終更新日: 2023/01/22
2002年、藤沢市柄沢に開業して13年がたつ「柄沢どうぶつ病院」。犬や猫、うさぎ、ハムスターなどを対象にした一般的な診療から各種外科手術までを行う同院。病気を治すだけでなく、しつけや問題行動を改善するためのパピークラスや行動療法カウンセリングなども行っている。武田繁幸院長は、「ホームドクターとして、ペットとの日々の生活を楽しく笑顔で過ごしていただけるようにサポートしていきたい」と話す。その言葉通り、飼い主の気持ちに寄り添い、ペットに不安を与えない診療を心がけている。ペットを通してその家族の歴史まで見ていけるホームドクターの役目を担いたいと願う武田院長に、クリニックで行う治療や患者への想い、今後の展望までじっくり聞いた。 (取材日2015年11月25日)
ホームドクターとして、笑顔で過ごせる毎日をサポートしたい
クリニックの特徴をお教えください。
当院は、ペットの健康のお悩みにおいて、はじめの窓口となれるようなホームドクターでありたいと考えています。生まれてすぐのワクチンから、加齢や病気による終末期のケアまで、ペットたちの一生を診ていきたいのです。そのため、何か一つの専門的な治療に特化するのではなく、幅広くすべての症状に対応できるジェネラリストをめざしています。当院の特徴は、たっぷり時間をかけた診療を行うこと。なぜこの検査が必要なのか、どうして費用がかかるのか、そういった疑問に対して一つ一つご説明して飼い主さんの理解を深め、ご納得いただくことが大切だと考えています。一方的なコンサルティングではなく、飼い主さんのご要望をしっかりとお伺いするカウンセリングを行っていけるよう心がけています。また、病気の治療だけでなく、パピークラスの開催や食事指導、行動療法カウンセリングなどにも力を入れ、ペットと楽しい日々を過ごしていただくためのサポートをしていますよ。
パピークラスについてお聞かせください。
私が学生時代に飼っていた犬が、噛み癖のある子で。健康であっても家族中を噛んでしまうことは、その子にとっても家族にとっても、悲しいことだと思いました。ちょうどその頃、子犬の頃からしつけや社会性について学べるパピークラスの存在を知り、開業する際に取り入れたのです。当院のパピークラスは、犬同士やスタッフたちと遊んでもらったり、飼い主さんへのしつけ指導、そして最後に、お泊り会をしています。これは、ホテルとしてお預かりする際や、手術での入院の際に不安が大きくならないよう、クリニックに慣れてもらうことを目的としています。病院は怖い場所ではないということを子犬の頃から認識してもらうことで、その後病気になってしまったときにも治療がしやすくなるのですよ。当院のパピークラスは、生後2〜4ヵ月ぐらいの子を対象に、毎週開催しています。本当であればもっと回数を増やしていきたいのですが、現状は週に一回の開催となっております。何度も参加してくれる子も多く、ご好評いただいていますよ。
行動療法カウンセリングとは、どのようなものですか?
吠え癖や噛み癖、排尿問題、摂食問題。これからは、問題行動と呼ばれ、現在は専門医の先生も増えています。当院では、そんな問題行動を抱えたペットたちの悩みをお伺いして原因を探り、治療法やトレーニング法をご提案しているのです。もちろん、当院では対応できない場合には専門の先生もご紹介していますよ。お父さんには噛みつかないのに、お母さんには噛みついてしまう。ドッグフードを食べずにジャーキーなどのおやつばかりを食べる。これらの問題は、決してわがままや好き嫌いではないのです。その原因が病気にあるのか、心の問題なのか、環境の問題なのか、与えているドッグフードが合わないのか。原因は一つではないのです。それを解いてあげることで、ペットとご家族が笑顔で楽しく生活していけるようにサポートしています。
出会ってきたすべての患者からもらった、記憶のカルテが宝物
先生が獣医師をめざされたきっかけは?
私は幼少期から、犬猫からお魚、植物など、とにかく生き物が好きで。「獣医師になりたいな」と漠然と考えていました。学生時代の教育実習が、将来について真剣に考えるきっかけに。何のために勉強をするのか?と考えたときに、それまで漠然と思い描いていた獣医師という夢に、本気で挑戦したいと感じたのです。それから獣医学を学ぶために大学へ進学。その頃に実家で飼っていた犬が、母や妹にだけ噛みつく子でした。たとえ健康であっても、それは私たち家族にとってつらい時間が流れる出来事で。こうした悲しい想いをしている家族はきっとたくさんいるのだろう。それを手助けすることが、獣医師の役目なのだと感じました。そこで、病気を治すことはもちろん、日常生活まで支えていけるホームドクターになりたいと思ったのです。
勤務医時代に印象的だったエピソードはありますか?
子犬の頃からずっと診療していた子がいました。その子は、名前を呼ぶと頭をコテンと右側に傾けるかわいい仕草を持っていて。来院するたびに名前を呼んでいました。しかし、10歳を過ぎた頃から頭を傾けると目が回るようになって。実はその子は、子犬の頃から右の脳に脳炎を抱えていたのです。かわいいと思っていた仕草が、脳炎があったために右側が重かったことが理由であると知って。気付くことができなかったことがショックでたまりませんでした。その経験から、色々な角度から多くの視野を持って診察をしなければいけないと学びましたね。そのように、ペットたちや飼い主さんたちと出会うたびに、私の頭の中には記憶のカルテが貯まっていきます。それが、私の獣医師人生の一番の宝物ですね。
開業から13年ですが、振り返ってみていかがですか?
開業当初、この地域はこれから住宅が立ち並んでいく新しい街でした。この街と一緒に年を取っていけるクリニックになりたいと考え、開業を決意。開業当初から貫いているのは、よくお話しを聞いて、よくお話しをすること。それがくどい先生だと思われてしまうこともありました(笑)。しかし、徐々にそんな私を慕って来院くださる患者さんも増えてきて、今日までやってくることができましたね。私の思いと患者さんの思いがつながり、一緒に年を取っていける関係性を築けている今に、感謝しています。ホームドクターとしての喜びは、ペットの一生を通してご家族の歴史まで見ていけること。細胞の数だけ病気があり、ペットの数だけ治療法がある。ペットや飼い主さん、それぞれに寄り添った医療をご提供できることが、開業医の何よりのやりがいですね。
どうすれば患者のためになるのかを考えたクリニックづくりがしたい
診療の際に気を付けていることを教えてください。
何より、ペットにとって快適な治療が受けられるように心がけています。例えば、注射を打つ前に「頑張れ」、「大丈夫だよ」などと声をかけてしまうと、その言葉の後には痛い注射が待っていると認識してしまいます。そのため、2度目や3度目にはその言葉に反応して怯えてしまったりするのです。また、ペットたちは知らない人から突然名前を呼ばれるとびっくりしてしまいます。初診から名前は呼ばず、心を開いてくれたなと感じたところで名前を呼んであげることで、より安心感を持ってくれるのですよ。ほかにもお利口に診療を受けられたらご褒美におやつをあげたりと、常にペットたちの気持ちを考えながら診療を行っています。そうすることで、おのずと飼い主さんにとってもストレスなく通っていただけるようになると考えています。
ところで、お忙しいかと思いますが、どのようにリフレッシュをされているのですか?
もともとアウトドアが好きでよくキャンプや釣りに出かけていたのですが、開業後は休日も夜間の急患対応をしていて、なかなか趣味に使う時間がなくなっていって。その結果、体調を崩してしまったことがあったのです。リフレッシュにと考え久しぶりに釣りに出かけたら、すごく楽しくて体調も良くなって。それからは、休日には趣味に時間を使うことも大切にしています。最近では、釣った魚を使って料理をしたり、院内のテーブルをDIYしたりと、物作りにも凝っていますよ。パピークラスに参加してくださる患者さんに、手作りのグッズをプレゼントしたりもしています。そうしてリフレッシュをしながら、日々の楽しみながら診療に取り組んでいます。
今後、どんなクリニックをめざしていきたいですか?
一般的な診療はもちろん、パピークラスや問題行動のカウンセリングなど、患者さんのお悩みに幅広くお応えしていけるクリニックをめざしています。誰に相談をしていいのかわからず、長年問題行動に悩まされている飼い主さんは多くいらっしゃいます。しかし、少し習慣を変えるだけで改善してしまうこともありますから、一人で抱え込まずにご相談いただきたいですね。当院ではほかにも、病気にならないための早期発見に努める検診や、どうしても通院できなくなってしまった子のための訪問診療や送迎も行っています。設備やスタッフの面も併せて、常にどうすれば患者さんのためになるのかを考えながらクリニックづくりを行っています。丁寧なカウンセリングや治療にこだわった診療をしていきたい。そうして、いつまでも気軽に頼っていただける存在になっていければうれしいですね。