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土屋 典和 院長の独自取材記事

かしわだい動物病院

(海老名市/かしわ台駅)

最終更新日: 2023/01/22

かしわ台駅から車で5分、徒歩で15分。「かしわだい動物病院」の土屋典和院長は、検査や診療中に得られた画像などのデータを飼い主に見せながら説明するなど、診断のプロセスが目で見てわかるような診療を心がけているという。ペットを病気にさせないようにするための病気予防のアドバイスにも積極的だ。もともとは1978年に土屋院長の父である土屋喜良前院長によって開かれた動物病院で、2013年までは「土屋獣医科病院」だったが、院のリニューアルに際して「地域にとって大事な動物病院であり続ける意図を、より前に出すため」に自分たちの苗字をクリニック名から外し、地名を加えたそうだ。土屋院長から、飼い主やペットに向き合う姿勢を聞かせてもらった。 (取材日2017年2月1日)

夜中も対応していた父の背中を見て、獣医師を志す

獣医師になろうと思われたきっかけをお聞かせください。

僕が生まれた頃には1階が父の診療する動物病院で、2階に家族で住んでいました。ですから、物心ついた頃から動物や獣医療に接することはほとんど当たり前のような環境で育ったわけです。父は「必ずしも『継がなければならない』というわけではないんだぞ」と進路については自由意志を尊重してくれていました。それでも、中学生時代に「未来に就きたい職業」を発表する課題を出す頃には「獣医師」と記していたんです。動物は好きだし、地域でもかなり古い動物病院を開業した父に対しては大勢の人が頼りにしていましたからね。父は夜中に電話がかかってくれば飼い主さまのために対応したり、そもそもは大型動物を専門にしていたこともあって朝から周囲の牛など家畜動物を診て回っていたり、かなり忙しくしていて、周囲から感謝されている姿もよく見ていたんです。そんな経緯で僕はこの道を選び、日本大学・生物資源科学部の獣医学科を卒業しました。

貴院に入ることを決めたきっかけはあったのでしょうか?

父からは未来の獣医療について、よく「今後は、小動物の医療を手がける時代になる」「だからこそ、専門性の高い診療が必要になる」などと助言をもらっていました。しかし、大学卒業後、よその病院に勤務し始めてまだ数年という時期に父が脳梗塞で倒れてしまい、当院での獣医療に専念せざるを得なくなったんです。父は緊急搬送された病院で、喋ることもままならない時点でさえも「当院での予防注射を行うシーズンが来るから、それだけは何とか遂行してもらえないか」と僕に伝えていました。地域の人たちに迷惑がかからないように、と獣医療に本当にまい進していた父の姿勢を再確認したものです。

お父さまの一大事の折に実家の動物病院に戻り、どのように診療を続けてこられましたか?

父の病状も含め、すでに通院されている飼い主さまたちにはきちんと説明をしなければならない状況ですよね。ただ、僕は顔が父とそっくりだったためか、説明するよりも前に「あぁ、息子さん、この子をよろしくね」とサッと大事なペットを託してくださる飼い主さまが多かったことには、助けられたと同時に発奮させられました。僕のような若造を、息子であるというだけで信じてくださっている。これは、飼い主さまと父が良い関係を築き続けてきた証拠だろうから、大事に受け継いで頑張っていかなければ、と感じたのです。以来、誠実な診療を心がけてきました。少し余裕が出てきたら、地域の皆さんに還元できるよう、そのつど新しい医療機器を導入してきたものです。例えば、循環器科でいえば超音波画像診断装置を備えました。

プロセスを飼い主に伝えることも含めてが仕事である

診療についてわかりやすく伝える姿勢も、素晴らしいですね。

診療では「見える化」を進めています。良い医療機器を導入したなら、検査などの内容が飼い主さまに伝わったほうが納得されやすいですよね。例えば、言葉のみで伝えた時よりも画像で患部をお見せしながらのほうがダイレクトにペットの状態を把握していただけます。今はわかりやすい説明をするために画像を例に挙げましたが、他のさまざまな診療のプロセスについても、それこそ獣医療に関わる者としては常識の範疇に入る知識も含めて、ペットの健康にまつわる情報はしっかり伝え続けたほうが良い、と考えています。しかも、一般論を伝えるだけでなく、具体的な状況に寄り添って伝えるべきでしょう。歯周病を予防するために大切なのにワンちゃんの歯磨きをさせられないなら、ダメだと断罪するのではなく飼い主さまと一緒にやってみる、やってみて難しければ他の方策を考える、というようにです。

飼い主さんとの接し方についてはどのようにお考えですか?

病気が治ることもうれしいのですが、ペットの健康について初めに相談するホームドクターである当院では、病気にかからないこともめざしていきたいのです。そして、状況が許せば、飼い主さまとの話は明るく行いたいとも考えています。そうすれば、ペットのほうも心配になりづらいですからね。飼い主さまと私たち医療者がにこやかに話していれば、「どうしたの?」と膝に乗ってくるワンちゃんや猫ちゃんもいます。それだけ、動物は私たち人間の心情を推し量っているのです。スタッフは動物が好きでこういう職業に就いている訳ですが、飼い主さまから預かった「動物たち」を大事に懸命にケアするのは当然のこと、連れてきていただいている「飼い主さま」とのコミュニケーションも大切にすることで、その子に対する思いや治療・ケアについて飼い主さまにしっかり伝えたいですね。

「見える化」をはじめ、飼い主さんに納得していただくことを重視されているのですね。

最近のデジタル写真はこまかいところまでよく写り、ごまかしが利かないので結果的に私たち医療者の治療内容も問われることになりますね。「見える化」を進めることで診療の質が高まっていくという良い面もあるかと思います。当院に併設しているトリミングサロンはガラス張りになっています。トリミングの過程はすべて窓の外から見えて、飼い主さまにとって「見えないところで何をされているのか不安」ということがないよう、ここでも「見える化」を徹底しているのです。

子どもを持ち、不安な気持ちに寄り添う気持ちが増した

明るい色の外観で、動物病院の看板をあまり大きく出されていませんね。

北欧の家のような雰囲気を持つ当院は、黄色い外観もあって近隣の方にとってはなじみのある建物かとは思うのですが、楽しく穏やかな場所であることを第一にしてクリニック名を目立たせることもないため、「ここは動物病院だったの?」と驚かれる方も少なくありません。ご近所の皆さんの間でそんな話題が出た際には、別の飼い主さまが「今、診療している院長先生のお父さんの代からうちではお世話になっていてね」なんて伝えてくださるようで、クチコミで来院される方が増えてきているという感じです。

お忙しいとは思いますが、診療の合間の息抜きにされていることは何でしょうか?

子どもが小さいこともあって、家族と共に過ごす時間でしょうか。小さい子どもが体調を崩すと、本当に心配になりますよね。その意味では、親になって、飼い主さまの「この子は大丈夫でしょうか?」と不安に思う気持ちと近いものがあるだろうと思い、前よりもさらに寄り添えるようになったような気がしています。

最後に、今後の展望をお聞かせください。

地域の良きホームドクターであり続けられるよう、きめ細かな診療を行い、やはり「病気にならないための知識」を正確に伝え続けていきたいですね。当院は院内の各スペースを広めに取ってあるのですが、それも、4年前にリニューアルした際に「人にも動物にも居心地の良い場に」と考えてのことです。動物たちが来るのをいやがらない、むしろ、定期的に楽しく健康をチェックするからこそ病気の予防ができて元気でいられる、なんて良い循環をつくっていきたいと思います。

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