井上 寛 院長の独自取材記事

国分寺台動物病院
(海老名市/海老名駅)
最終更新日: 2025/06/09

1992年の開業以来、長きにわたり地域のペットの健康を支え、飼い主との安心できる暮らしを支えてきた「国分寺台動物病院」。院内は爽やかなブルーを基調とした清潔感がありながらもアットホームな温かみのある空間。井上寛院長は多くの診療に携わる中で、ニーズに応えて皮膚科や眼科の研鑽も積んできたベテランで、息子の井上優先生も心エコー検査などを行う。地域貢献を第一に考える姿勢は、多くの飼い主から慕われており、2代目3代目のペットを連れてくる長い付き合いの飼い主も多いという。そんな井上院長に診療の特徴や動物医療への思いを聞いた。(取材日2025年2月5日/再取材日2025年5月13日)
30年以上、動物の健康と暮らしを支える
こちらは歴史のある動物病院と伺いました。

私が1992年に開業した動物病院で、今は犬と猫を対象に、一般診療や予防医療など幅広く行っています。開業当初は小鳥なども診ていましたが、鳥類専門の動物病院も増えてきたので、犬と猫を対象に絞って20年ほどたちます。飼い主さんは近隣の方が中心ですが、紹介などで少し遠方から来られます。私のほかに女性獣医師が在籍しており、また息子の井上優先生も週に2回診療を行っており、心エコー検査などに対応しています。
診療面にはどのような特徴がありますか?
動物医療も進展しさまざまな検査の精度が上がり、昔なら診断しにくかった症状も診断がつき治療ができるようになって、治療の選択肢も広がりました。皮膚病や眼科疾患にも力を入れており、犬では特に小型犬に心疾患が多いので循環器診療にも注力しています。早期発見できるよう健康診断の際に心臓の検査などをお勧めしています。また地域医療に貢献するのが第一と考え、地域のニーズに応える一環として、飼い主さんがご高齢になり通院が難しい場合には動物の送迎を行っています。飼い主さんのご自宅で診療を行う往診ではできる診療が限られ、必要な検査や処置などができないこともありますから、送迎スタイルにしています。さらに動物も高齢化していますので健康診断にも力を入れています。犬も猫も6、7歳になると、人間でいえば40歳ぐらいにあたり、そろそろ健康上の問題が出てきますので定期的な健康診断が大切だと思います。
診療する際、どのようなことを大切にされていますか?

診療では、なるべく細かく丁寧に説明することを心がけています。飼い主さんによく理解していただくために、例えば、整形外科ならば骨格の模型を利用するなどして、わかりやすく説明しています。また、長年、診療している間に実感するようになったことですが、ワンちゃん猫ちゃんをご自分のお子さんか、それ以上に大切に考えられている方が多いので、そのお気持ちを大切にすること、飼い主さんの意見をよく聞くことを心がけています。その上で、「検査結果から考えて、専門家の立場から適切だと考えられる治療方法はこれです」と提案して、どういう治療を行うか擦り合わせていく。丁寧に対話するということですね。
予防接種前には抗体検査を行い、最小限の接種を実施
こちらでは犬のワクチン接種の前に抗体検査をお勧めされていますね。

犬が打つべきワクチンは大きく2つのカテゴリーがあり、1つがコアワクチンといってすべての犬が接種すべきもので、3年ごとの接種が推奨されています。もう一つはノンコアワクチンといって必要に応じて毎年接種が推奨されています。コアワクチンは3種類の恐ろしいウイルスに対する免疫を獲得するためのものですが、予防接種を行うことで、長いと8~9年ほど抗体を持ち続けることも望めますが、期待できる平均値としては3~4年といわれています。ですからその3種類のウイルスに対する抗体の有無を検査して、抗体が下がっているときワクチンを打つという方法をお勧めしています。ペットホテルやトリミングショップなどを利用する際にワクチン接種証明書を求められることがありますが、当院では「抗体があるのでワクチン接種の必要はない」という証明書を必ず発行しています。
抗体検査をせずに接種しても良いように思うのですが?
予防接種のワクチンは病原となるウイルスを弱毒化して作られています。しかしまれに人間と同じように、副作用をもたらすことがあります。それに犬にとって多かれ少なかれ、身体的にも精神的にも負担になります。たまにワクチン接種のせいで動物病院を嫌っている子も見かけます。ですから抗体を持っていることがわかれば追加接種する必要はないので、抗体が下がってきて本当に必要になった頃に接種することをお勧めしているんです。抗体検査はごく少量の血液でできますので、負担も少ないと思います。定期的な健康診断の時のついでに受けることもお勧めです。またワクチン接種は自費になりますので、詳しくはお気軽にご相談ください。
猫コロナウイルスのチェックもできるのですね。

猫コロナウイルスは、実は多くの猫が持っているものです。さまざまな遺伝子型があり、中でも猫伝染性腹膜炎ウイルスは、発症すると猫伝染性腹膜炎(FIP)になってしまいます。かつてはとても致死性が高く不治の病といわれていた病気でしたが、今はその対処法について研究が進んでいるものでもあります。それでも高額な診療費用がかかってしまったり、残念ながらお亡くなりになる猫ちゃんもいます。ですから猫コロナウイルスを持っているとわかれば、FIPを発症しないように気をつけて予防してあげることが大切なんです。そのために必要なのは、猫コロナウイルスを持っているかどうか抗体検査で調べること。ウイルスを持っていなければ、どこかでもらってこないように行動範囲や対処を考える必要があります。一方、持っている場合は発症しないようストレスのない生活をさせるといった対処をしなくてはなりません。
高齢化や介護も含めたペットとの暮らしをサポート
動物を飼う時に心がけたいことを教えてください。

飼い主さんによく聞いていくと、動物をよく見ているようで、意外とあまり見ていないということがあります。例えば「食欲がない」と連れてこられることは多いのですが、本当に具合が悪くて食欲のない子は半分ぐらいで、フードの匂いをかいで食べるのをやめるというような子は食欲はあるが、えり好みをして食べないということが少なくないのです。えり好みをしている子は空腹になったら食べ始めますから、その見極めが大切。また犬や猫は生まれてから1年くらいで、人間でいえば高校生ぐらいになります。成犬、成猫といってもまだ大人にはなりきっていないのでよく観察し、いつもと違うとか、病気になる前のサインをうまくキャッチしていただきたいです。犬も猫も、人間のようにどこが痛いとか、何がつらいとか話してはくれませんから、飼い主さんがしっかりと見てあげてほしいですね。
これから動物を飼いたいという人へ伝えたいことはありますか?
よく「どんな犬が飼いやすいか」と聞かれますが、その子の生まれた性格もありますし、一概には言えません。ただ犬はどんな犬種でも飼い方で変わるので、飼う前に動物病院などに相談して、より良く育つ飼い方を心がけていただきたいですね。猫は難しいところがあり、慣れてくれない子もいますし、意外と保護猫や拾われた子が懐きやすいこともあります。ただ、犬も猫も母親やきょうだいと長く生活した子は、その後人間の社会に適応しやすいようです。あまり早くに母親やきょうだいと離れた子は、自分が犬や猫という認識がないまま人に育てられるというケースもあるので社会化がうまくできないといわれています。小さい子のほうがかわいいですし、よく慣れそうなイメージがありますが、できれば少し成長してからのほうがよいでしょう。
読者へのメッセージをお願いします。

犬や猫を飼うことをどのように考え飼い始めるかは、人それぞれ。ペットは人生を豊かにしてくれますし、お子さんの情操教育にも役立つと思います。犬も猫も10年20年と生きるもの。高齢になったり介護が必要になったりすることも含め、末永く責任を持って飼っていただきたいですし、そんな動物やご家族を動物病院として支えたいと願っています。私もまだまだ頑張りますが、ゆくゆくは息子がこの地で動物医療に携わってくれればいいなと思っています。地域のかかりつけ医として身近で丁寧な診療を心がけ、大切なペットの健康と安心な暮らしをお手伝いしたいと考えていますので、気になることがあれば気軽にご相談ください。