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水谷 達二 副院長の独自取材記事
水谷動物病院
(藤沢市/鵠沼海岸駅)
最終更新日: 2023/01/22
鵠沼海岸駅より徒歩7分、「水谷動物病院」は、弧を描くように積まれたガラスブロックの壁面からさんさんと陽光がふりそそぐ明るく清潔な動物病院だ。開院 以来46年間で築き上げてきた信頼関係を大切にしつつ、プライバシーに配慮した個室型の診療室を設けるなど、時代の流れに合わせた対応と先端の医療で、常に飼い主のニーズを上回る対応を心がけてきた。水谷達二副院長は、朗らかな笑顔と謙虚な姿勢が魅力的なドクター。水谷先生には、診療理念から獣医療にかける真摯な思いなどをじっくりと聞いた。 (取材日2016年1月13日)
獣医療の礎を築いた院長の思いを継いで
1970年開院の藤沢市でも歴史ある動物病院だそうですね。
46年前に藤沢市で数軒目の動物病院として開院したと聞いています。まだ動物病院は数少ない時代で、院長夫婦で四坪の診察室から始めたそうですが、「明るく清潔で気軽に来院できる動物病院」というコンセプトのもと、大勢の飼い主さんとともにここまで歩んできました。現在は細菌やウイルスを通さない手術室用 と同レベルの空気清浄器を院内すべてに導入しています。長いお付き合いの方も多く、動物も人も2世代、3世代にわたって通われる方もおられます。院長の代 から築いてきた信頼を大切にしつつ、医療面においては先端の獣医学を提供できるよう後継者としての責任を感じます。
水谷渉院長はどのような先生なのでしょうか。
院長は日本の獣医界を開拓してきた獣医師の一人で、より良い動物病院を目指し、その成果を社会に還元していこうという熱意の下、仲間とともに、1978年アメリカ動物病院協会(AAHA)をモデルにした日本動物病院協会(現:公益社団法人日本動物病院協会JAHA)を立ち上げました。当時はメールなどない中、獣医師が卒業後も常に最新の獣医学を学べるよう、外国から講師を招くなど本当に大変だったと思いますが、そのおかげで今の日本の獣医療があるといっても過言ではありません。JAHAや神奈川県獣医師会の会長を務めるなど人望も厚く、何よりも動物の治療だけでなく、自然を愛し、人と動物と共に暮らすことにより、心身に良い影響を与えることを理解し、伴侶動物医療に取り組む姿勢を尊敬しています。そんな偉大な獣医師のそばで学べることは本当にありがたいことだと思っています。
診療対象の動物や院内の様子について教えてください。
近年はペットの多様化が進み、当院にもさまざまな動物が連れて来られるようになりました。基本的に犬、猫、うさぎ、ハムスター、フェレット、モルモット、ハリネズミや鳥など来院されたものはすべて診ています。まずは窓口としてすべてを受け容れ、専門機関での受診が必要かどうか診断していくのも地域のホームドクターとしての重要な役割。建物自体は増改築を繰り返しながら、現在は診療室3つに手術室、レントゲン室、ICU、入院室などを備えています。スタッフの目が行き届くようオープンな作りになっていますが、個室型の診療室を用意するなどプライバシーにも配慮しています。診療内容は多岐にわたり、血液検査、レントゲン検査、血圧測定を含む人間ドッグ相当の一通りの検査に加え、エコー検査および内視鏡検査から避妊去勢、腫瘍外科や整形外科の手術など幅広く対応 しています。
長年、この地域で獣医師として活躍してこられて気になることはありますか?
この辺りは海も近く自然に恵まれているため、犬をノーリードで連れている方をよく見かけます。そのためか、動物が車にひかれたり、喧嘩による咬み傷事故が 絶えません。広々としたところで飼い犬を思いっきり走らせたいという気持ちもわかりますが、不幸な事故をなくすために飼い主としてどうするべきかも考えていただければと思います。
ホームドクターだからこそできる細かな対応や心のケア
スタッフの方も皆さんとても気持ちの良い方ばかりですね。
どんなに良い医療をしていても、飼い主さんに最初に応対したスタッフの第一印象が悪いとその病院には行きたくなくなってしまいますよね。飼い主さんだけでなく、業者さんなど誰に対しても気持ちのよい対応をできるよう接遇面でも日々努力を続けています。飼い主さんのニーズに応えるのは当たり前、われわれは常にそのニーズの上をいく対応をめざしていきたいですね。
診療の際、大切にされていることは?
院長は「われわれ臨床獣医師は動物だけを診るのではなく、人もみるのだ」と言っています。その言葉のとおり、私たちは「飼い主さんのいる動物」の診療をしていることを忘れないようにしています。検査、治療を押し通すのではなく、飼い主さんが何をどこまで望まれるのか、どこまでやれば飼い主さんが納得できるかを考えます。最近は動物の高齢化が進み、悪性腫瘍(がん)の治療に連れて来られる飼い主さんも増えました。いつか来る別れが避けられない以上、後悔ではなく「最期までよく頑張ったね」と納得していただけるよう、可能な限りつらい思いをさせない優しい治療を大切にしています。ホームドクターならではの飼い主さんに合わせた診療、そして決して0か100以外の選択肢を知っていただきたいですね。
そこまで親身に飼い主に後悔させたくないと思われるのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
私は小さい頃犬を飼っていました。当時は近くに動物病院などない田舎でのことでしたから、理由はわかりませんが、特に病院にかかることなく死んでしまった ことが幼心にもとても悲しかったことを覚えています。それ以上に犬が大好きだった母のショックは大きく「こんなつらい思いをするなら」と二度と実家で犬を飼うことはありませんでした。そんなこともあって、飼い主さんに母と同じような思いはさせたくないと思ってしまうのかもしれませんね。
「C.A.P.P.訪問活動(ふれあい活動)」にも力を入れています。
JAHAは動物病院を核とした社会貢献として1986年に会員獣医師とボランティアによる活動をスタートし、当院でも週に1回、獣医師とボランティアで小 動物を連れてお年寄りや心身に障がいのある方を訪問する活動を行なっています。高齢の方や手足の不自由な方が動物とふれあうことでとても良い表情をみせて くれることがあります。これはアニマルセラピーの1つ「動物介在活動AAA」と呼ばれていて、動物のぬくもりや優しさにふれあうことで多くの人が癒やされることから精神的なリハビリテーションであると同時に、ちょっとした生活のうるおいの場としてとても喜ばれています。
人と動物の絆を大切に、みんなが幸せになれるサポート
お忙しい毎日だと思いますが、休日はどのように過ごしですか?
ランニングか、ツーリングに出かけることが多いです。獣医師仲間で「今度の日曜日にツーリングしませんか」と誰かが呼びかけると、行く行く!という感じで 集まるんですよ。海沿いを走ること自体が気持ちいいし、みんなで集まることでワイワイと情報交換もできるので、気分転換になるだけでなく良い刺激を受けています。
今後の展望をお聞かせください。
今後ますます獣医療の専門化が進むと思いますが、だからこそ「総合医」という窓口、ホームドクターの存在が重要。まずきちんと診断した上で、当院で治療を 続けるのか、専門機関で検査や治療を受けた方がいいのかを見極めます。当然、最先端の情報にも通じていなくてはなりません。極端な言い方をすれば、治るか 治らないかはすべてホームドクターの力量にかかっているというくらいの責任を感じています。だからこそ勉強会では医療について学ぶだけでなく、いろいろな 先生の考えなども伺って、一人よがりの治療にならないよう気を付けています。獣医師としてのあり方も日々向上していきたいですね。
最後に読者にメッセージをお願いします。
動物と暮らしている方にとって、動物は大切な家族でありよきパートナー。最後まできちんと面倒をみたい責任感の強い方や、たとえお金はかかっても適切な治 療を受けさせたいという方も増えてきました。ただ、その責任感でがんじがらめにならないでほしいと思います。動物はいつか人間より先に自然に還るもの、と いう意識があれば、ペットとともに共倒れになってしまうという不幸は避けられるのではないでしょうか。当院では「この子のために何とかしてあげたい」という思いで動物病院に来てくださった飼い主さんの思いを大切にしながら、人も動物も幸せになれるようお手伝いしていきたいと思っています。どんな小さなこと でも気軽にご相談くださいね。