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堀越 優一 院長の独自取材記事
ユーノ動物病院
(綾瀬市/長後駅)
最終更新日: 2023/01/22
長後駅から車で10分ほどの住宅街にたたずむ「ユーノ動物病院」。院内には看護師の手描きの掲示物が随所に貼られるなど、温かさにあふれている。堀越院長は、北里大学獣医学部獣医学科を卒業後、同大学獣医学部附属動物病院や麻生大学附属動物病院などで、主に整形外科手術に携わってきた。その確かな技術と豊富な経験から、開業後も緊急で運ばれてきたたくさんの命を救っている。また、院長は患者と本音で話し合うことを信条とし、自分では対応できないと判断した場合には豊富なネットワークから適宜専門医も紹介。クリニックの特色や診療の際心がけていることについて、熱く語ってもらった。 (取材日2016年2月23日)
整形外科を得意とし、鎮痛処置も行う
北里大学をご卒業後、開院されるまでの経緯について教えてください。
母校である北里大学にて研修や研究などにも携わりながら、診療をしていました。その後麻生大学病院にて勤務していた際に知り合った先生が、三重県で開業されることになったのでお誘いいただき、3年ほどお世話になりました。その先生はとても優秀な方でしたので、一般的な診療はもちろん、外科についても学ぶところが多く、また飼い主さんとのやり取りなどについてもとても勉強になりましたね。その後再び北里大学に戻り、小動物第一外科にて2年ほど勤務していました。師匠が整形外科の専門医だったので、整形外科について多くのことを学びました。そして、師匠からもそろそろ開業したらどうかと言われて開業を決めました。生まれ育った神奈川県内で開業したいと思っていたので、いろいろと検討した結果当地にて開業した次第です。実は「ユーノ動物病院」という名は、私の名前の“ゆう”と、妻の名前の最初の一文字目の“の”からとって名付けたんですよ。
クリニックの特色は、どのようなところですか?
整形外科を強みにしていまして、外科手術もほとんど当クリニックでしています。緊急時以外は、午前診療終了後と午後診療開始の間の12時から16時に行っています。長時間になりそうな場合や待てるケースについては、火曜日の午後が手術になります。また、腫瘍に関しても北里大学病院の専門医と連携を取りながら診ています。他に、会社員の方などがいらっしゃることを考えて、開業当初から土日も診療しています。実際に、土日にいらっしゃる飼い主さんも多いですね。また、動物たちの痛みを和らげることで生存率が上がると証明されていることもあり、痛みを伴う診療の際には鎮痛処置をしています。例えば、外科手術の際に硬膜外麻酔をしたり、重症の場合はモルヒネを使用して痛みを緩和したりします。
犬や猫を診る際、どのようなことに注意していますか?
当クリニックではワンちゃんと猫ちゃんの割合が6対4くらいなのですが、一番気を遣うことが多いのは猫ちゃんのほうですね。猫ちゃんは怒ったら触らせてくれませんし、薬を飲めない場合も多いんですよ。助けてあげたいけれど触らせてもらえないとどうしようもないので、そういうときは少し処置をして、また別の日に来ていただきます。無理をして病院に来ること自体が嫌いになってしまうと困りますからね。また、待合室は1ヵ所だけですが、吠えてしまうワンちゃんや必要以上に警戒してしまう猫ちゃんがいたら、3つある診察室の1つを開放して、そちらでお待ちいただくようにしています。
自分の犬や猫だったらどんな治療を望むかを考える
整形外科以外にも、力を入れている分野はありますか?
皮膚科にも力を入れていまして、クチコミでいらっしゃる飼い主さんも多いですね。中でも転院されて来られた方は、以前の病院でいろいろなことをやってもらっていると思うのですが、意外と大事なことを知らない人も多いんです。よくステロイド剤を敬遠される方が多いのですが、決して怖い薬ではないんですよ。要するに、使い方なんです。正しいやり方さえ守っていれば、むしろ頼れる薬です。また、薬だけではなく、シャンプーをして清潔に保ってあげることも大事なので、飼い主さんのご協力も必要ですね。
診療の際、どのようなことを心がけていますか?
私が治療をする際に真っ先に考えることは、自分の犬や猫だったらどのような治療をしてほしいか、ということです。その中で選択肢をいくつかご提示し、費用の問題やかかる時間なども考慮し、飼い主さんとご相談した上でベストな治療をするということを心がけています。また、決して先入観を持たないよう気をつけています。経験上、たぶんこの病気だろうということは大体予想がつくのですが、他の病気が隠されているのに気づかないなど誤診の原因になりかねませんから。あともうひとつは、「病名に結びつけないこと」です。何でもすぐ病名に結びつけると、逆にそれだけ視野が狭くなってしまいがちですので、その症状はどうして起こっているのか、どう治療していくのかということを考えるようにしています。
印象深いエピソードがあったら、教えてください。
2年ほど前の話になりますが、交通事故に遭ったワンちゃんが連れて来られたことがありました。交通事故は骨折していることが多いのですが、このワンちゃんは骨折していなかったこともあり、まずは胸やおなかから診ました。エコーで診ると膀胱が見えず、おなかに多少水が溜まっていたのでおかしいなと思って検査したら、膀胱が破裂していたんです。さらに胸部のレントゲンを撮ったら横隔膜ヘルニア(ショックによって胸とおなかの境目にある膜が破裂して臓器が中に入ってしまう状態)を起こしていたので、飼い主さんにご説明して緊急手術をしました。そしておなかを開けたら肝臓も破裂していて脾臓も捻転していて……とにかく大変な状態でしたが、同時に手術しました。そのワンちゃんはすっかり元気になり、何かあると当クリニックへ診察に来てくれています。
医師と患者が本音で話し合える関係をめざす
獣医師を志したきっかけについて、教えてください。
もともと動物が好きで、子どもの頃はミニチュアシュナイザーを12年くらい飼っていました。そして、高校生の時に医師になりたいと思うようになり、人間を診るか動物を診るかで悩んだのですが、ご縁があって獣医師への道に進むことになりました。そして、学生の時に交通事故で骨折した猫が病院に連れて来られたのですが、飼い主さんがお金がかかるからこちらで引き取ってほしいと申し出られ、私が引き取ることにしました。そうしたら先生が手術をしてくださって、猫はものすごく元気になったんです。整形外科に興味を持ったのはこの時でした。私が整形外科が好きなのは、病気に比べると比較的治せることが多いからなんです。治らないケースがあっても、少しでも今ある苦しみが減ってくれたらと思いながら診療にあたっています。
飼い主の立場から、何か気をつけたほうが良いことはありますか?
現代はインターネットが普及しすぎていて、それ自体は悪くないのですが、中には嘘の情報もあるので惑わされないように気をつけていただきたいですね。何か心配なことがあれば、病院に連れて行ってご相談されるといいと思います。また、フィラリアの薬もインターネットで販売されていますが、副作用の心配もありますので注意が必要です。他に、医療の現場を描いたドラマの影響か、抗がん剤は怖いとのイメージを持たれやすいですが、動物は人間ほど副作用がほとんど出ません。ですので、医師を信じて安心して任せてくださいね。
読者に、メッセージをお願いします。
ワンちゃんや猫ちゃんは言葉を話ませんので、飼い主さんが気づいたときには病気がすでに進行してしまっている場合があります。何か少しでもおかしいなと感じたら、たとえ何でもなくても病院に行っていただきたいですね。それから、飼い主さんの中には、医師が相手だと思うように話せないという方もいらっしゃると思います。私は本音できついことも何でもお話します。ですから、飼い主さんにも遠慮なくお話ししてほしいとお伝えしています。例えば高い治療費は払えないとか、そういうことでもおっしゃっていただければ、できる範囲でベストを尽くします。ぜひ「こうしてほしい」と本音で話し合える病院や医師を探してください。また、「待つのも治療」ということもあります。薬が効いているか様子を見ながら進めることがありますので、焦らずにお付き合いいただければと思います。