多田 裕一 院長の独自取材記事
さつき台動物病院
(川崎市麻生区/五月台駅)
最終更新日: 2023/01/22
川崎市麻生区に、2016年4月オープンした「さつき台動物病院」。犬や猫、小鳥、ハムスター、モルモット、カメなど、ひととおりのペットを診療してくれる。内科から眼科、皮膚科、腫瘍科、整形外科。そして、外科手術までをこなし、幅広い症状に対応。「飼い主さんにとって気軽に頼れる存在になりたい」と話す多田裕一院長は、飼い主が納得するまでとことん話し合う診療スタイルで、多くの患者からの信頼を得ている。そんな多田院長に、治療理念や患者への想い、今後の展望までじっくり聞いた。 (取材日2016年4月11日)
対等な関係で、何でも相談してもらえる存在でありたい
治療の特徴についてお聞かせください。
基本的な内科的治療から外科手術も行っていますよ。ただ、私はなるべくならば内科的な治療での完治をめざしています。外科手術というのは、あくまで最終的な手段と考えていて、的確な診断を下し、内科的な治療をしても効果がなかった場合にのみ、手術をお勧めしています。専門的な治療や手術に関しては、責任を持って専門病院をご紹介させていただきます。しかし、飼い主さんの中には「今までどおり先生に診てほしい」とおっしゃってくださる方も。患者さんのためには何が最良なのかを考えながら、出来るかぎりのお力添えをしていければと考えています。
診療の際に気を付けていることは何ですか?
症状や治療法のご説明は、とにかく時間をかけて、ご理解いただけるまで何度も繰り返しお話ししています。飼い主さんのお考えや性格はさまざまですから、治療法を即決される方もいれば、悩んでしまってなかなか選べないという方も。悩まれている方には、ご家族全員を集めてお話し、さらに、獣医としての意見や、自分が飼い主だったらどうするかといった意見もアドバイスしたりと、飼い主さんが心からご納得いただける方法が見つかるまで、とことん話し合っています。重い病気になればなるほど、かかる時間も費用も、そして根気も必要になってきます。だからこそ、私が持てる知識をすべてお話しすることで、飼い主さんのご不安や漠然としたモヤモヤ感をなくしてほしい。そうすることで、前向きに治療に取り組む強いお気持ちを持っていただきたいのです。
飼い主さんとの信頼関係を大切にしているのですね。
命と向き合う仕事なので、医師と患者ではなく人と人として、変に威張ったり、反対にへりくだったりはせず、常に対等な関係性でいることを心がけています。そうすることで、いざという時に何でもご相談いただけるのではないかと思います。また、私はすぐに飼い主さんと友人のように仲良くなることが多いのですが、開業前の北海道で勤務していた時は、漁師の患者さんにお魚のおすそわけをいただいたり、ご自宅に遊びに行ったり。老人ホームに入られた方には、頻繁にお見舞いに行っていました。そんな方たちには開業するというハガキをお送りさせていただいたのですが、皆さんわざわざ北海道からお花やお手紙をくださったり、私が好きなオンネトウの写真を撮ってきて、プレゼントしてくれた方もいらっしゃいました。今思うと、私が理想とする関係性がきちんと築けていたのかなと思うと、うれしい気持ちでいっぱいです。
飼い主に不安を与えないことが役目
先生が獣医師をめざされたきっかけは?
小さい頃から猫が大好きだったのですが、家では飼えませんでした。そのためよく近所の野良猫と遊んだりしていたのです。その頃から、医療への漠然とした憧れをずっと抱いていました。亡くなる運命を救うことができる医師という仕事を、子どもながらに尊敬していました。動物が好きだったということもあり、次第に、獣医師ならばさまざまな動物やさまざまな病気を診ることができると考えるようになったのです。獣医師になって感じることは、医療とは、神さまと闘うということ。神さまが決めた寿命を引き延ばし、本来ならば迎えることのなかった明日という日を、与えてあげることができるのです。子どもの頃に抱いていた憧れを、叶えられている今に感謝しています。
勤務医時代に心に残っていることはありますか?
勤務をはじめて3ヵ月が経った頃、まだ右も左もわからない状態で夜間救急の現場に出なくてはいけない事がありました。救急医療は重篤なペットたちが運ばれてくることが多かったので、とても不安で仕方なかったです。そこで、その不安な気持ちを当時お世話になっていた先輩に相談すると、たとえ不安であっても、患者さんの前では堂々といなさいと教えられました。自信のない獣医師による診療ほど、患者さんを不安にさせることはないですよね。根拠のない自信はいけませんが、決して余計なご不安を与えないようにと教えてくれたのです。診断が付かないときも、その場しのぎでごまかすような診療はせず、現状をきちんとお話ししています。そういったスタイルを、獣医師になって1年目で確立できたのは、その先生に出会えたからであり、今でも本当に幸運だと思っています。
先生の治療方針をお教えください。
飼い主さんとペットの関係性というのは、そのご家庭によってさまざまです。例えば、入院してベストな治療をしたいのか。それとも、通院でできるだけ長い時間を一緒に過ごされたいのか。もちろん、かけられる費用も異なってきますよね。そのため、そのご要望をお伺いすること。そして、家族構成もお伺いします。それによって、「いつも自宅に誰かがいるならば通院できますね」「昼間は誰もいないならばその時間だけ入院にしましょう」など。最善の方法を一緒に考えていきます。飼い主さんは、正解が一つあると思われている方も多く、お話を重ねていくうちに、徐々に本当のご要望が見えてくることもあるのです。お話しいただきやすい環境と、たくさんの選択肢をつくってさしあげることを大切にしています。
いつも身近にある動物病院をめざして
今後、どんなクリニックをめざしていますか?
まずは地域に根付き、かかりつけ医として役立つこと。そんな目標が達成できたら、叶えたい理想があるのです。それは、教育病院として機能すること。現在、かかりつけとして活躍している獣医師は50~60代が大多数です。そして、40代は専門医が多いのです。当然、その先輩方が引退されたとき、現在の20~30代が引き継いでいかなくてはいけませんよね。しかし、うまく引き継ぎができていない現状があります。そのため、これまで長く地域に根付いてきたクリニックが、なくなってしまうことも増えてくると思うのです。そんな現状を打破するためにも、これからどんなことでも吸収できる若い獣医師が、いい知識ややる気を学びながら見聞を広めていける環境が必要なのだと考えています。当院も、今後の獣医療の発展に少しでも役立てっていきたいと思っています。
読者へメッセージをお願いします。
何かあったときに、病院に出かけることに腰が重くなってしまう方が多いかと思います。そのため、普段から行きやすい動物病院を見つけておいてほしいですね。気軽に相談できる獣医師がいることで、病気の初期状態で治療が開始できたり、予防につながることも。そうして、飼い主さんとペットたちにとって身近な存在になっていきたいと考えています。当院では、内科や外科以外にも、眼科や皮膚科、腫瘍科、整形外科など、広い領域の診療に対応していますが、それもそんな想いにつながっているのです。待つのが嫌だという方のために、予約も承っています。もちろん、そのままいらしても診療をお受けいただけますので、まずはお気軽に、世間話するような感覚で来院いただきたいですね。
開業したばかりでお忙しい日々かと思いますが、その中でのリフレッシュ方法は?
確かに、開業準備はとても大変でしたね。しかし、開業してみて診療がはじまると、その疲れはすぐに吹っ飛んでしまいましたよ。私は学生時代、毎日のようにハンドボールをしていたのですが、獣医師になってからはパタッとしなくなりました。それは、趣味が仕事に変わったからだと思っています。動物は好きですし、人と話すことも大好きですから、この仕事はまさに天職。飼い主さんと世間話なんかをしている時間が、何よりのリフレッシュなのです。と言っても、仕事でストレスは溜まりません。反対に、休日の方が疲れてしまうほど(笑)。好きなことを仕事にできていることに感謝しながら、これからもっともっとたくさんの飼い主さんやペットたちと関わっていければうれしいですね。