中島 穣 院長の独自取材記事
くるり動物病院にとな
(千葉市中央区/大森台駅)
最終更新日: 2023/01/22
大森台駅から徒歩約10分。星久喜三差路交差点から大網街道を少し下ったところにある「くるり動物病院にとな」。開業は2015年。以来、中央区の犬、猫の飼い主たちから信頼を寄せられている。中島穣(なかじま・じょう)院長は、ナーバスな猫と飼い主が安心して受診できるよう、診療室やホテルを犬用と猫用に完全分離し、診療時間も猫専用の時間を設けるなど猫に配慮した診療環境をつくっている。ペットの健康維持と病気の早期発見には定期的な健康診断と毎日のホームケアが重要と考え、飼い主への啓発活動にも力を入れる。最近では歯科診療に注力しており、歯科専門のエックス線撮影装置も導入。そんな中島院長に、獣医療への思いやクリニックの特徴について話を聞いた。 (取材日2018年4月25日)
ナーバスな猫のために特別診療時間を設定
こちらでは「猫の時間」が特徴だそうですね。
開業当初から、午後1時から2時まで完全予約制の猫専用の診療時間としています。私も猫を飼っているのでよくわかるのですが、猫は普段あまり外に出ることはないので、病院に来るととても緊張します。待合室で犬が吠えたりするとおびえてしまって体を触ることができなくなる子もいます。ですので、猫と飼い主さんともにリラックスして受診できるよう特別な時間を設けました。「猫の時間」があるためでしょうか、今は、診察の約4割を猫が占めています。一般の診療時間でもできるだけリラックスできるよう、飼い主さんが自由に使えるブランケットを置き、猫が落ち着くようにフェロモンの発生器なども使用しています。診察室やホテルも犬用、猫用で分けています。犬用のホテルは家具屋さんに特注した木製の部屋、猫には一部屋丸ごとキャットウォークのつけたホテルを用意し、場所も離して用意することで不安やストレスを軽減できるよう工夫しています。
優しい配慮ですね。ほかに心がけていることはどんなことですか?
猫を診察するときは、できるだけリラックスできるように特に注意しています。猫の飼い主さんは繊細な方が多いので、あえて飼い主さんの目をあまり見ないようにしたり、静かに話したりするなど気を配っています。うちの猫もこんな感じでしたよなどと話すと、皆さん心を開いてくれることも多いですね。開業以来、いろいろな飼い主さんのお話を伺ってきていますが、飼い主さんたちは皆さん本当にペットのことを心配しているのだなとあらためて実感しています。あまりに心配しすぎで飼い主さんのストレスになってもいけませんから、少しでも安心してもらえるように時間をかけてわかりやすくお話しするなどを心がけています。
こちらの診療方針について教えてください。
病気は遺伝的要素と環境要素が合わさって発症することが多く、動物の生活環境を知ることは診断する上でとても重要となります。ですので、診察の際はしっかりと飼い主さんの話を聞くことを重視しています。例えば皮膚疾患が発症した際、室内飼いか外飼いか、室内飼いであればヒーターやエアコン、カーペットなどの室内環境、また同居している動物がいるかどうか、食事やおやつの内容、ノミ・ダニ予防の方法などをお聞きしています。そういた生活環境を得た上で、五感を使って理学所見を丁寧に行い、必要な検査や治療法などについてわかりやすく説明しています。治療については飼い主さんによくご理解、納得していただいてから始めるようにしています。
デンタルケアに注力。歯科用エックス線撮影装置も完備
特に力を入れているのはどんな診療分野ですか?
循環器科、歯科、皮膚科などです。特に最近では歯科に注力しています。最近は歯科のセカンドオピニオンが増えてきていますね。犬や猫も人間と同じように、口内炎や歯周病にかかります。猫の場合、歯垢が歯石になるのは7日間といわれていて、人間よりも数倍早いですから、毎日の歯磨きケアがとても重要です。犬の歯周病対策は皆さん行うようですが、猫となると無頓着の飼い主さんが多いように思います。猫の歯磨きは乳歯の頃から習慣をつけることがとても大切です。実際に行うのは難しいと感じている方も多く、私が猫に歯磨きしている様子をスマートフォンでお見せしながらコツを教えています。また当院では歯科用エックス線撮影装置を導入しています。
定期健診にも力を入れているそうですね。
病気の予防、早期発見という意味で定期健診はとても重要です。毎年の健診のデータを積み重ねるからこそ、体の変化に早期に気づくことができると思いますので、できれば年に1回は定期健診を受けていただきたいですね。猫の病気予防にも特に力を入れています。フィラリア予防といいますと犬だけと誤解している方も多く、猫もフィラリア予防やワクチン、ノミ・ダニ予防が必要なのですね。ですので、そうした猫の病気予防について飼い主さんによくお話しするようにしています。
これまで何か心に残ったエピソードはありますか?
開業してしばらくたった頃、診ていた犬が残念ながら亡くなってしまいました。その時、飼い主さんに自宅に来てほしいと言われ、最後のブラッシングなど、いわゆる納棺師のようなことをさせていただき、その犬が家族の一員としてとても愛されていたことを実感しました。獣医師として、動物の命に対してあらためて襟を正したことを覚えています。最近ではこのように愛犬、愛猫を看取った飼い主さんに、その後の様子をお電話してお話を伺ったり、おはがきをお出しすることも多いですね。獣医師として少しでも飼い主さんの心に寄り添いたい、そんな思いがますます強くなっています。
動物も人間も癒やすことができる、獣医師の仕事
獣医師をめざされたのはどんな理由からでしょうか。
祖父がいろいろな動物を飼っていて、私自身も動物が好きでした。小さい頃から兄弟のようにじゃれ合って育ってきた愛犬が、小学生の時、病気で死んでしまい、とても悲しい思いをしたことがきっかけですね。鳥取大学獣医学科に進学後、恩師が話された「獣医師は動物を通じて人間の心を癒やす仕事」という言葉に深い感銘を受けたことを覚えています。動物も人間も同時に癒やすことができるのは獣医師ならではのことだと思います。その言葉を胸に、動物と飼い主さんがより長く幸せな時間を過ごせるようにと日々努力しています。今は循環器科をより深める勉強をしているところです。
ところで、プライベートの時間はどのようにお過ごしですか?
入院やホテルで預かっている子がいる期間は休診日でもクリニックで診ていますので、なかなかゆっくりとお休みがとれないのが実情です。お正月もお盆休みもクリニックにいることが多いんですよ。ただ、預かりのない時は好きな温泉に出かけたり旅行に行ったりしています。最近は、ボルダリングに関心があって、千葉市内にも施設がありますので、ぜひチャレンジしてみたいと思っているところです。
では最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いいたします。
動物たちの健康寿命を延ばすために、健診・予防、デンタルケアにより力を入れていきたいと思います。現在行っている診療の精度や自分が自信を持ってできること、それらに磨きをかけて、さらに正確な診断・治療につなげていきたいですね。地域の飼い主さんには、ぜひ定期的な健診を受けていただきたいと思っています。定期的に検査し早期に介入していくことで、病気の重篤化を防ぐことができると考えています。動物の健康維持や予防方法、ホームケアなどに関するセミナーなども今後積極的に行っていきますので、ぜひご参加ください。