東尾 直樹 院長の独自取材記事
ひがしっぽ動物病院
(鎌ケ谷市/鎌ヶ谷駅)
最終更新日: 2023/01/22
ピンク色の建物が目印の「ひがしっぽ動物病院」は2017年2月に開院。院長の東尾直樹先生は、たいへん温厚なドクターであると同時に、獣医師として強い使命感を持ち、どんな症状も正確に診療できるよう、勉強を惜しまない熱心なドクターだ。飼い主へアドバイスする際、動物の生活環境や性格といったところまで踏み込み、具体的に話をするように心がけているという。東尾院長は、読書が小さい頃から好きだと言い、そこで培った想像力が、相手を気遣う思いやりとなって、患者の視点に立った診療を実現させているのだろう。開院したばかりの同院について、また診療や動物にかける思いについてたっぷりと話を聞いた。 (取材日2017年3月6日)
飼い主と動物の気持ちを和らげる工夫のなされた診療室
獣医師になったきっかけを教えてください。
中学の同級生に会うと「動物が好きで、獣医になりたいって言ってたよね」と言われるので、その頃には公言するほど、獣医師に憧れがありましたね。また、高校生のときに初めて飼ったボーダーコリーが急死してしまい、その経験も僕に大きな影響を与えました。そして鳥取大学へ入学後しばらくして、近所に動物病院が開院したので尋ねると、そこの院長先生がとてもよく面倒を見てくださって、交流を重ねる中で臨床に興味を持つようになりました。その後、自分の病院を持ち、プロとして責任を持って診療している沢山の先生たちと出会い、僕も先生方と同じ土俵で話ができるようになりたい、と思いました。そして、2人目の子どもが生まれた時に、「これがお父さんの病院だよ」と子どもたちに自分の歩んでいる道を見せてあげたいと思う気持ちがより強くなり、開業の夢を実現することにしました。
なぜ、鎌ヶ谷で開業したのでしょうか?
僕は滋賀県出身なのですが、妻が鎌ヶ谷市の出身でして、世帯数に比べて動物病院が多くなく、開院の必要性を感じ、こちらで開業することにしました。そしてこの特徴的なクリニック名ですが、動物は話せなくとも、しっぽには言葉ではないサインが表れているので、それをくみ取る気持ちを忘れずに診療したいという思いと、僕の名前である東尾を組み合わせて名付けました。実は学生時代にこの名前を思いついていて、自分のメールアドレスにしたい気持ちを抑え、外に出さずに開業まで温めてきました(笑)。
院内づくりでこだわったところはありますか?
僕は命を扱う仕事をする上で、季節や時間の流れを感じることをとても大切にしています。それで診療室はオープンなつくりにし、もともとあった大きな窓を生かして、外が見えるようにしました。例えば、通院治療が長くなったりした場合、飼い主さんにも疲れがたまってくることがあります。けれど、そんな時に、窓の外に桜が見えたりすると、「ああ、この子はもう、一年も治療を頑張っているのだな」と、時を感じることができて気持ちが和らぎ、苦しい状態でも受け入れられるようになると思うんです。開院は2月だったのですが日の光がたっぷり注ぐので、暖房いらずでぽかぽかしていましたね。一方で、神経質な猫ちゃんは小さな空間で安心して診療を受けられるように、猫ちゃん用の完全個室の診療室もあります。
幅広い知識を備えた総合診療のスペシャリストをめざす
こちらのクリニックの特徴は何ですか?
15時から16時の診療は予約制にしています。怖がりな猫ちゃんやワンちゃんを飼っている方や大型犬の怖い方など、飼い主さんのご要望に沿って、ご予約を整備しています。急な症状が出た時、また時間が空いて思い立ったときなどにお気軽にご利用いただけるように、それ以外の時間帯は予約の必要はなくお越しいただけます。
続いて、こちらの診療方針を教えてください。
飼い主さんの不安を取り除けるよう、入りやすい雰囲気にしていますし、散歩のついでに気軽に病院にお寄りいただくのも当院は大歓迎です。ですが病院の役割は、ここへ来ればきちんと診てもらえて安心、と思っていただける確かな診療をプロとして飼い主さんに提供することにあると考えており、それが当院の診療方針です。獣医師に得意な診療分野のあることは、診療を続ける上でのモチベーションにもつながるので必要であり、僕にとってそれは歯科や循環器科や腫瘍科の診療になります。けれどそれよりも僕は、各診療科の幅広い知識を備え、どんな症状も正確に診療できる、総合診療のスペシャリストでありたいと思っています。
飼育に関して、飼い主さんにアドバイスできることはありますか?
高齢の猫ちゃんには腎不全が多く、水分を多く摂取したほうがいいことはどの飼い主さんもご存知なのですが、実際にそれをどう実践したらいいか悩まれている方が多いです。そのとき僕は、水飲み場を増やしたり、素材の異なる器を置いてみたりすることをお勧めしています。そうすると、いつもどこから水を飲んでいるか、またその子がガラスの器が好きなのか、陶器の器が好きなのかがわかり、それはお水を飲みやすくするヒントになるからです。診療では、飼い主さんの生活に合わせて、そこに実際に踏み込んで具体的にお話するようにしており、それを喜んでいただけると僕もうれしいですね。
飼い主にとって安心して通える、頼れる病院でありたい
診療する上で心がけていることは何ですか?
動物は飼い主さんの気付かないサインを発している場合もあるので、診療時は先入観を持たずに動物を診るように心がけています。もちろん、飼い主さんからの話はたっぷり聞きます。そこに加えて、動物をよく診ることで、症状の原因を特定し、一つの方向に収束できると、やりがいを感じますね。そして飼い主さんへは、治療するにあたり、どのような手段があるかご説明することはもちろん、それを選ばなかった場合何が起こりうるか、具体的にお話するようにしています。それが重病の場合、どうしても嫌な話になってしまうことが多いですが、僕と飼い主さんが一緒にその山を乗り越え、同じ方向を向いて動物の治療にあたるために、それは必要なことだと思っています。また、飼い主さんが心の準備をするためにも、予測できることをあらかじめお伝えしておくことはとても大切なことだと思っています。
印象に残っているエピソードはございますか?
以前、容体が急変してしまい、緊急処置を行ったワンちゃんがいました。その際、さまざまなチューブやコードをつながれた愛犬の姿を目にした飼い主さんは「こんな姿を望んでいなかった」とおっしゃいました。これは、とても大きなショックでした。命のために医療としてやらなければならないことでも、その全てが飼い主さんにとって受け入れられることとは限らない、と身を持って知りました。そうした経験もあって、先に述べたような飼い主さんと心を一つにして一丸となって治療に向かいたい、飼い主さんには具体的なお話をしようという思いが強くなりました。また、どんな選択をしたとしても、飼い主さんにはそれを後悔してほしくないので、一緒にした選択には全力で応えます。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
まずはなにより、ひがしっぽ動物病院が、飼い主さんがいつでも安心して通うことができる頼れる動物病院になれるよう、努力を重ねていきたいです。それから、僕は近い目標と将来の夢みたいなものをいつも持つようにしているのですが、それでいくと近い目標は家族と病院のスタッフで東京オリンピックを見に行くことですね(笑)。そして、夢としては、故郷・滋賀の琵琶湖畔、あるいは気候のいい千葉の房総でワンちゃんや猫ちゃんのホスピスみたいなものができたらなぁと思っています。