戸塚 和宏 院長の独自取材記事
きたかまくら動物病院
(鎌倉市/大船駅)
最終更新日: 2023/01/22
「きたかまくら動物病院」は戸塚和宏院長が2017年3月に開院。ガラス越しに光の差し込む明るい院内と明るい笑顔で出迎えるスタッフに、ついふらっと寄りたくなってしまう雰囲気のクリニックだ。戸塚院長自身、病院が苦手といい、患者の目線に立った配慮が院内の随所に見られる。診療室が犬猫に分かれてることはもちろん、トイレは動物も一緒に入ることを想定した広さを確保。診療においても、外来のみならず往診にも力を入れ、動物と飼い主の幸せを最期まで願う戸塚院長の深い愛情を感じた。今回、戸塚院長に獣医師をめざした経緯から、開院、診療にかける思いについてなど、たっぷりと話を聞いた。 (取材日2018年1月17日)
患者の視点に立った院長の細やかな気配りを感じる院内
獣医師をめざしたきっかけは何ですか?
小さいころから生き物が大好きで、小学生の途中から犬を飼い始めました。犬を飼ってもらうまでは虫が好きで、当時は玄関の半分が虫だらけでしたね(笑)。高校生になって将来を考えた時に、自分の手でできる仕事に興味があったのもあり、獣医師をめざしました。学生時代は勉強の傍ら、アルバイトもよくしていて、そこで接客業の極意を学んだり、また寮に住んでいたので、人と接する楽しさというのを知りました。それまで内向的な性格だったのですが、学生のときの経験があったから今の自分があると思いますね。
いつか開業したい思いはありましたか?
当初は開業を考えていなかったのですが、どこかの病院に勤務しても、開業しても、仕事の内容が変わらないのなら、より自分の考えや理想を反映できたらいいな、と思うようになり、開業を考えるようになりました。その後、妻の実家が近くにありますし、この辺りにはなじみがあったので、3年ほど開業場所を探していた中、たまたまこちらを見つけ、幹線道路沿いにあり、遠くからでもわかりやすい立地に惹かれ、瞬間にこちらでの開業を決意しました。現在、主に近隣にお住まいの方にご利用いただいています。この辺りの飼い主さんは穏やかな方が多く、流行り廃りに影響されない印象を受けますね。それが私の性格にも合っているのを感じます。
開業する上で、こだわった点はありますか?
実は私自身、病院がすごく苦手なんです。雰囲気が暗い、医師が怖い、というイメージからですね。そこで、飼い主さんと動物が来て気持ちが良いと思っていただける病院づくりを意識しました。院内は暖色を用いており、外観はガラス張りなので日の光もたくさん入ってくる明るい雰囲気にしました。それから、待合室と診療室はみなさんが一番長くいる場所なので、心穏やかに過ごしていただけるよう、広めに取っています。それから、動物病院は正確な情報を発信する場でもありますし、また待ち時間に退屈させないように、という思いもあって、季節ごとに待合室のディスプレイの内容を変えています。冬だと節々が痛くなる関節のお悩みについて、夏だとシャンプーについての情報と、それにまつわるグッズをディスプレイしました。
患者を待つのでなく、スタッフから歩み寄る動物病院
こちらではどのような診療を行っていますか?
犬猫を専門に、主に一次診療を行っています。お待たせしないように予約制もとっています。ご予約いただければ、こちらも事前に準備できるので診療時間がかからず、動物への負担も少なくて済むのでお勧めです。内科の診療を中心に行っていますが、あらゆる症状に対応できるよう、現在もセミナーや勉強会への参加は欠かしません。また、当院はエコーを導入していますが、医療費のご負担をできるだけかけないよう、高度な検査が必要な際は適切な医療機関をご紹介しています。やはり金銭的な問題を含め、みなさんにとって来やすい病院でありたいという思いがありますね。他の医療機関での検査、治療後も、当院にて同じような獣医療を継続できるように努めていますのでご安心ください。
どのようなきっかけで動物病院を利用するのがいいでしょうか?
お散歩のついでにこちらに寄って休憩していかれるだけでも大歓迎です。体重も計測や簡単なご相談も随時受け付けています。また、病院って入りづらく、医師が皆さんを迎える場所というイメージがあると思いますが、当院ではそうした一方通行ではなく、私たちの方からみなさんに歩み寄りたいという思いがあります。そこで、当院かかりつけの動物であれば、基本の診療時間以外でもできるだけ対応したいと思っています。また、3キロ圏内にお住まいの飼い主さんでしたら往診に伺ったり、フードをお届けにあがっています。というのも、動物の容態に関わらず、コミュニケーションを重ねることで気づける事というのが多くあるからです。日頃より飼い主さんの考えや価値観を理解していれば、それに基づいて治療ができますし、動物についても普段から正常な状態を見させてもらうことで、何かあったときの変化にも素早く気づくことができます。
続いて、診療方針についてお聞かせください。
私は病院とは病気を治すだけのところではないと思っています。例えば余命が限られている動物の場合、延命だけが選択肢ではなく、最後の時間を一緒に楽しめるようにできることをするのも私たちの役割だ考えています。それぞれの飼い主さんの背景や価値観に寄り添って診療を行う病院でありたいと思っていますね。診療ではその子が発している自覚症状を見落とさず、そしてその子が飼い主さんとどういう物語を歩んできたのかを感じ取るようにしています。その上で選択肢をご提示し、私でなく飼い主さんに選択していただける状態にできるように心がけています。
飼い主の心にも寄り添う往診
また、往診にも力を入れて取り組んでいるそうですね。
飼い主さんの中には、何をしたらいいか、どうしたらいいかわからないという方も少なくないので、その場に実際に私がお伺いして家庭環境を見ながら獣医師としてのアドバイスをさせていただいています。在宅医療は動物に対する終末医療でもありますが、飼い主さんの心のケアという面も大きくあります。動物とどんなに楽しい時間を過ごしてきたとしても最後に「あのときこうすればよかった」という後悔が残ると、「動物なんてもう飼わない」という考えになってしまいますし、その後の人生もそれを引きずってしまうのはあんまりだと思うんです。だからこそ、最後は飼い主さんにとってもきちんとした形でその時を迎えられるよう、お手伝いしたいと考えています。
振り返ってみて、獣医師の仕事をどのように感じていますか?
好きな動物と触れ合うことができ、飼い主さんの人生を豊かにするお手伝いをするこの仕事はたいへんやりがいがあります。また、診療で直面する病気一つひとつ奥が深いのでそれについて学ぶのも楽しいですね。学生時代の紙の上での勉強と異なり、経験を積めば積むほど、この仕事に面白さを感じています。常に新しい発見がありますから、獣医療の進化の流れに振り落とされないよう、今後もセミナーや勉強会に参加し、勉強を重ねたいと思います。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
できたら同じ考えを持つ獣医師をもう一人増やして、年中無休の診療を実現したいですね。よく「こんな用で来ても大丈夫ですか?」と言われる飼い主さんがいらっしゃるのですが、当院にはこうでなきゃダメといったような方針はなく、病気と関係なくても遊びにいらしていただけるだけで私たちはとてもうれしいです。もし不安なことがあれば、躊躇せずにまずお越しいただいて、それからご相談ください。今後も飼い主さんにとってふらっと寄りやすく、緊急時は「ここに来れば安心」と思っていただけるような動物病院であれるよう、更に環境を整えていきたいと思います。