金子直博 院長の独自取材記事
井土ヶ谷しっぽ動物病院
(横浜市南区/井土ヶ谷駅)
最終更新日: 2023/01/22
京浜急行線「井土ヶ谷」駅より徒歩7分、横浜市営地下鉄「蒔田」駅より徒歩8分、環状1号線沿いに、「井土ヶ谷しっぽ動物病院」はある。くるんと丸まった可愛らしいしっぽマークと、広々としたエントランスが同院の目印。「地域の皆様に親しんでもらえるような医院名を選びました」と語る金子直博先生。はきはきとした口調と時折見せる笑顔がトレードマークの院長だ。「誰にでも門戸を開いたスーパー1次診療を行うことをモットーとしています。いたずらに最新治療ばかりを行うのではなく、根拠や成果がはっきりとしているものを行うことを基本とし、それではカバーしきれない場合に新しいものを取り入れる、それがわれわれの役割」と力強く語る院長に、これまでの医院の歩みや、来院者のことについてなどお話を伺った。 (取材日2013年10月1日)
しっぽの気持ちまでわかってあげたい―。医院名に込められた思い
「井土ヶ谷しっぽ動物病院」。ちょっと変わった名前ですね。
たまに言われます(笑)。医院名を決めるときに思ったのは、わかりやすく覚えやすい名前にしたいということでした。地名である「井土ヶ谷」に、覚えやすく、誰が見ても動物病院だということがわかる、「しっぽ」という言葉を加えました。しっぽって、動物にしかありませんよね。だからわれわれ人間には、「しっぽの気持ち」は絶対にわかりません。いつも動物の目線や立場に立ち、「しっぽの気持ちが」少しでもわかるようになりたいとの思いを込めてこの名前にしました。
診療で心がけていることを教えてください。
飼い主さんへは、どんなことも正直にお話するようにしています。日々知識を吸収し、それを実践するよう心がけてはいますが、ときとして不明な症状や病気に出会うことがあります。そんなときは、ごまかすことなく正直に飼い主さんに話すようにしています。「ここまではわかるけどこれ以上は、今の状況ではわからない」などというように順を追って話します。また、来院した時点ですでに病気が進行してしまっており、これ以上手の施しようがないというときも、ちゃんと話すようにしています。言われたその瞬間は辛いでしょうけど、黙っていれば飼い主さんはなんとか治したいという思いから、無駄な治療や検査まで行うことになりかねない。ペットにとってみれば、それは辛いことですよね。
実際に、「手遅れだ」というケースは多いのですか。
動物というのは、人間と違って痛みや辛さを訴えることができません。それに、動物の本能として弱っている姿を見せないようにします。弱った姿を見せると他の動物に襲われてしまうので、外敵から身を守るためにそうするんです。だから、飼い主さんがなかなか気づかなかったとしても仕方ないことだと思います。それに、私達自身でさえ、不調があっても直ぐに病院に行かないですよね。「行こう行こうと思っている間に時間が過ぎてしまった」ということは誰もが経験があるはず。だからたとえ、「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ」というようなペットが来たとしても、「もう少し早く来たらよかったのに」などということは言わないですね。皆さん、日々の忙しい生活の中で一生懸命ペットと向き合っておられると思うんですよね。
初心忘れず。猫を診るたび当時の教授の姿を思い浮かべて
獣医師をめざした理由を教えて下さい。
小さいころは、両親がペットが好きでないという理由でペットが飼えなかったので、それまではペットというものを知らなかったんです。にも関わらず獣医師になろうと思い立ったのは高校生の頃でした。進学にあたり、将来を真剣に考えたとき、「とにかく人の役に立つ仕事がしたい」と思ったんです。当時理系だったこともあって、そのときに思い浮かんだのが、精神科医か獣医師でした。高校生ながらに、これから必要とされる職業ではないかな、と思ったんですよね。そんなとき、ちょうど獣医師を主人公にした漫画を読みまして。単純なようですがそれがきっかけとなって獣医師への道をめざすことにしました。
大学時代の思い出を教えて下さい。
教授がある猫を診察した際に、さっとお腹を触っただけで「腸重積だからすぐに手術だ」と言ったことがありました。普通であれば、検査をしてはじめて診断がつき手術となるのに、触っただけで手術なんて、「何を言ってるんだ」と思いました。しかし、実際にお腹を開けてみたらそのとおりで。あれには驚きましたね。今でも猫を見るたびにその教授の顔が思い出されるくらいインパクトの強いものでした。ペットにとってみても、あれこれ調べられ、検査されるよりも、いち早く診断がつき治療されたほうがいいに決まっていますよね。あのときの教授に少しでも近づきたいと思って今も頑張っているのだと思います。
お休みの日はどんなことをされていますか。
子どもがいるのですが、上が中学校一年生で下が1歳。ふたりとも女の子です。できれば休みの日は子どもと一緒にいたいのですが、土日も医院を開けているので、なかなかその時間がないのが悩みですね。なんとか時間を作って年に1〜2度は旅行に行くようにしていますが、今はその時間を作るので精一杯です(笑)。帰宅時間が、たいてい23時から24時位なので、帰宅したらすぐお風呂にはいって寝るだけしかできません。とは言え、何かしていないと気がすまないようなところがあるので、忙しくしているのは好きなんですが。
シャンプーだけで皮膚症状が改善することも
どんな主訴が多いですか。
この辺りは、マンションも多いので小型犬や猫などが多いですね。最近はうさぎを目にすることも増えました。病気では、皮膚病、胃腸疾患、心臓病などでしょうか。超音波検査を得意とした獣医師がいますので、心臓の超音波検査も多く行っています。もちろん、それだけではなく歯や目に関する病気、骨折などの整形外科疾患など、さまざまな病気を抱えた子がやってきますね。骨折や癌などの外科手術も増えていますし、基本は地域密着なのですが、少し遠方から評判を聞いて来院いただいている患者さんが増えています。それと、トリミングのニーズも多いんです。当院では、シャンプーは体を洗うためのものだけでなく、皮膚病の治療や予防のためにも行っています。その子の皮膚状態にあったシャンプーを獣医師とトリマーが相談して選び、適切な洗い方をすることで、皮膚症状がよくなることが多いんですよ。1〜2週間に1回のペースで行うんですが、薬を使うことなく症状がよくなることもあるので、ペットはもちろん飼い主さんにも喜んでもらえていると思います。
目指しているスーパー1次診療とはどんなものですか?
Noとは言わない守備範囲の広い診療です。当院は、現在獣医師5名、トリマー7名、看護士1名の構成です。飼い主様とともに診察室に入るのは基本的に一人の獣医師ですが、基本的な疾患以外は必ず複数の獣医師の目で確認し間違いを少なくしています。一度の診察でセカンドオピニオンまで受けていることになります。また、複数の獣医師がいることで緊急にも対応が可能ですし、幅広い知識や技が集まっている訳です。だたし、人数が多すぎると情報を共有しにくくなりますので、多すぎず、少なすぎずが1次診療には大切だと思っています。もちろん、ずーっと同じ獣医に診てもらいたいなどの希望があれば、可能な限り指名もお受けしてます。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
最近の飼い主さんは、知識があるのでペットのことをしっかりと理解しています。以前は、うさぎを飼う際に、草食動物ということを忘れて色んな食べ物をあげてしまう人もいましたが、最近はそのようなことがなくなってきました。しかし、どんなに気をつけていても病気になってしまうことがあります。当院は、そんなときに役に立てる存在でありたいと思っています。必ずしもすべての治療を自分が行うわけでなく、必要に応じて他病院と連携をとりながら治療を行い、また最新の治療を実験的に行うのではなく、安定した効果の望める治療を提供していくよう心がけています。「皮膚の状態がおかしい」とか、「食べたものを吐いてしまう」といった明らかな症状だけでなく、「なんとなくおかしい」というときにも是非相談にきてほしいと思います。