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佐藤 良治 総院長、佐藤 友紀 院長の独自取材記事
動物医療センター春日
(春日市/大野城駅)
最終更新日: 2025/02/05

「動物医療センター春日」は、博多区竹下にある「福岡動物医療センター」のグループ病院として1989年に開院した。50年以上、地域の獣医療を担ってきたグループの総院長である佐藤良治先生、その背中を見て育った娘の佐藤友紀先生が院長を務める動物病院だ。併設されたリハビリセンターでは、動物の理学療法を学んだ友紀院長はじめ、動物理学療法について専門的に研鑽を積んだスタッフが、病気やけがの後はもちろん、老犬の歩行訓練や肥満犬の運動補助に至るまで幅広くサポート。また、院内の壁に掛けられたボードには、ペットが旅立つ際に受けた手厚いケアに対する感謝の手紙が隙間なく並ぶ。一通一通から感じられるのは、2人の愛情深い人柄。そんな長年動物と飼い主に寄り添ってきた2人に、動物病院の歩みも振り返ってもらいながら話を聞いた。(取材日2024年9月2日)
理学療法を柱とした包括的な医療環境が強み
動物病院の歴史からお聞かせください。

【佐藤総院長】最初に開院した場所は、博多駅前でした。3年ほど診療をした後、動物病院の近くに家を建てようということになったものの、当時はバブル全盛期。博多駅周辺の土地を購入し、家を建てるなんてことはできず。そこで、まだ畑だらけだった竹下に家を建て、動物病院もそちらへ移転したんです。それが1974年。娘が誕生した年に「福岡動物医療センター」を開院しました。当時は、都心と住宅地が広がる郊外の動物病院、どちらが主流になるかまだわからない時代。ならば、竹下は都心に近いから、次は郊外にということで、1989年に当院を開院したんです。そうしましたら、竹下に来られる方は繁華街が近いことから自営業の方が多く、来院されるのは月初めから中頃に集中。一方、こちらには会社にお勤めの方が月の後半にペットを連れて来られるというふうに、忙しくなる時期が重ならなかったんです。
スムーズに診療が行えたわけですね。
【佐藤総院長】おかげで両方続けることができ、2008年には理学療法に特化した施設を併設する運びとなりました。それが今の体制となった経緯です。竹下と春日の2院はコンピューターシステムを結んで迅速な対応と詳細なデータ管理を実践。デジタル社会ならではの環境を構築しています。そして、時代とともに、世の中の動物に対する考え方も20年ごとに変化しているんですよ。戦後は番犬、高度成長期はペット。つまり、家を建てたら犬小屋を作り犬を飼う、その後はドッグショーやコンテストも盛んな時代でした。平成に入る前後で動物はともに生活する仲間というコンパニオンアニマル、そこから動物は自分の子ども、あるいはそれ以上の感覚を持って接する擬人化へと変化し現在に至ります。
時代が変化していく中、理学療法専門の施設を開設された理由もお聞かせください。

【佐藤総院長】時代が移り行くと同時に、われわれ動物病院、獣医師はどうあるべきか問われます。開院当初から内科、眼科、整形外科、循環器、各種手術など幅広く行ってきましたが、その中でも一つ大きな専門性をもって診療することが必要であると考えました。その結果、リハビリセンターの開設にたどり着いたわけです。 【友紀先生】私は日本で獣医師の資格取得後、アメリカのテネシー大学で理学療法について専門的に学んできた先生に師事していましたので、診療ではすでに取り入れていました。動物の理学療法は、「遊ぶ」「散歩する」「ご飯を食べる」「トイレに行く」といった行動が自由にできるようになること、生活の質を上げることが目的。痛みを和らげ、生活の質を向上させることは、飼い主さまが一番望んでいることだと実感していましたので、理学療法を柱とすることに迷いはなかったです。
習性や行動学などに基づいた「しつけ教室」も実施
実際に理学療法ではどのようなことを行われるのでしょう。

【友紀先生】代表的なものを大きく分けると、「陸上で行う運動」「水中で行う運動」「機械や道具を併用して行う運動」の3つ。その子の症状に合わせて適したプログラムを組み立てていきます。歩けなかった子が歩けるようになることは、痛みの改善や心肺機能の回復にもつながるため、単に歩けることだけがメリットではありません。また、肥満に関しては、治療やエクササイズの種類はかなり豊富ですので、生活環境も考慮した上で効果が期待できるメニューを立てています。また、当院ではしつけ教室も実施。事故に遭ったり、問題行動を起こしたりしないためには、習性や行動学などの正しい知識に基づいたしつけをすることが大切です。 【佐藤総院長】人間と一緒で強制的にやらせるのは駄目。動物も飼い主さまも楽しい、うれしいというのが基本です。 【友紀先生】しつけはアイコンタクトが大事なんですね。目を見て号令をかけるところから始めます。
友紀先生は、まさに動物病院とともに人生を歩まれたことになりますね。
【友紀先生】竹下院が開院した年に生まれたので、同い年です(笑)。私が9月に誕生、竹下院が10月に開院。ほぼ一緒ですね。バギーに乗せられて動物病院にいたので、来院された方におむつを替えてもらったり、あやしてもらったりしていたようです(笑)。家と動物病院が一緒だったので、学校から帰ってきたらランドセルを置いて動物病院に遊びに行くという。今では考えられないと思いますが、それがオッケーな時代だったんですよね。小さな頃から処置の様子も目のあたりにしていましたので、どんどん動物の体の構造や医療に関する興味は膨らんでいきました。犬や猫を拾って帰っても叱られることもなく、飼っていましたしね。動物がいるのが当たり前の生活でしたから、獣医師になったのも自然な流れというか。うちは家族全員獣医師なんですよ。
獣医師一家なのですね。

【佐藤総院長】ええ、妻も2人の子どもも獣医師。だから家でも病院や獣医師の在り方なんかの話ばかりですよ(笑)。私は、もともと牛や馬など大動物の獣医師をめざしていましたが、大学在学中に妻と婚約し、卒業後すぐに結婚。妻は犬・猫の獣医師になると決めて大学に来ていましたので、私も同じ道に。おかげで福岡では多くのご縁をいただき、診療と並行して九州大学の寄生虫学教室にも入り、12年お世話になった後、母校の麻布獣医科大学に戻り獣医学博士を取得できました。このように、貴重な経験をさせていただきながら、家族でやれている今があります。
アメリカ型のチーム医療を一貫して行う診療スタイル
こちらにはどのような動物が多く来院しますか?

【友紀先生】鳥、ハムスター、うさぎなどさまざまですが、多いのはやはり犬と猫ですね。 【佐藤総院長】当院は担当制ではなく、アメリカ型チーム医療を一貫して取り入れています。獣医師は8人いますが、代わる代わる診ることで、見落としや新たな問題点に気づきやすくしているんです。目が変われば、違った角度からの治療案も出ますからね。それを全員でディスカッションしながら治療方針を固めていくスタイル。それが当院の特徴です。
スタッフの働き方改革にも取り組んでいるとお伺いしました。
【佐藤総院長】以前は夜間診療も行っていましたが、今は診療時間を短縮しました。以前が働きすぎだったんですよね。 【友紀先生】今後は勤務時間の短いスタッフ数も増やしていきたいと考えています。というのも、スキルはあるのに結婚や出産などを機に現場から遠のいていった方がたくさんいるんです。質の高いサービスの提供をめざす上でも、すでに2階にはキッズルームを備えていますし、必要となればベビーシッターの採用も考えたいですね。子育て世代が働きやすい環境をめざしています。
読者へのメッセージをお願いします。

【佐藤総院長】かれこれ40年ほど、高齢者施設などに動物を連れて行き、触れ合ってもらうボランティアをやっていますが、施設の皆さんに喜んでもらうだけではなく、私たちもたくさんの気づきをいただいています。すでにリタイアしている獣医師仲間もいますが、私はボランティアも診療もやれるだけ頑張ってみようと思ってます。 【友紀先生】動物病院は病気やけがを治すところですが、本当に大事なのはその先だと思っています。病気やけがが治ったとしても、立てない、歩けないとなると、その子も飼い主さんもつらいですよね。小さな積み重ねが結果につながるので、理学療法は時間を要しますが、とてもやりがいがありますし、感動の連続です。当院は入院施設に加え、ホテル、美容室も併設し、快適に過ごしていただける環境も整えています。何か困り事があれば、お気軽にご相談ください。