- 動物病院ドクターズ・ファイル
- 福岡県
- 福岡市博多区
- 竹下駅
- 福岡動物医療センター
- 大久保 淳平 院長
大久保 淳平 院長の独自取材記事
福岡動物医療センター
(福岡市博多区/竹下駅)
最終更新日: 2024/12/04
学生、会社員、子育て世帯、高齢者など、幅広い年代が行き交う博多区竹下。竹下駅から5分ほど歩いた場所にある「福岡動物医療センター」は、1974年の開院から長きにわたり地域に親しまれてきた動物病院だ。グループ病院の「動物医療センター春日」と連携することで、適切なリハビリテーションにつなげられることも強みの一つ。院長を務める大久保淳平先生は、勤続24年のベテラン獣医師。決して前に立とうとしない穏やかな人柄で、多くの動物と飼い主たちをサポートしてきた。診療対象は、犬、猫、鳥類、うさぎなどが主。初診では子どもだった動物たちも今では高齢になり、看取りに立ち会うことも増えたと言う。飼い主の喪失感は計り知れず、手紙を書いて寄り添うこともあると話す大久保院長。そんな、人と動物を愛する温かな心にふれてきた。(取材日2024年10月10日)
50年にわたり診療を行ってきた地域密着型の動物病院
開院から50年。長い歴史のある動物病院ですね。
グループ病院全体を統括する総院長の佐藤良治(さとう・よしはる)先生が1974年に開院されてからちょうど50年。今も現役で診療されています。今回は、私が入職した2000年からのお話をさせていただきますね。当時はまだ建物を改装する前で、春日の動物病院では夜間診療も行っていました。そのため、春日と竹下を行ったり来たりする日々。私は新卒でここへ入職しましたので、最初は右も左もわからず、ただただ必死でした。スタッフの皆さんにずいぶんと助けていただきました。夜間診療がなくなってからは、こちらでの診療に専念するようになり、顔見知りの方も増えました。この竹下エリアは下町気質の方が多い地域で、道を歩いていると皆さん気軽に話しかけてくださいますし、親切な方が多い町なんです。近所の方もよくペットを連れてきてくれますので、会話も弾みますね。
地域の皆さんとともに歩んでこられた24年。その間、来院される方や動物に変化はありましたか?
犬と猫を連れて来られる方が多いというのは今も昔も変わりませんが、以前は大型犬だったのに対し、小型犬がメインに変わりました。この辺りにもマンションが建ちましたし、住宅事情も多分に影響していると思います。一つの動物病院でずっと診療させてもらっていますので、うれしいことにご家族の成長も見ることができるんですよね。最初はお母さんと一緒にペットを連れて来ていたお子さんが、今はご自身がお母さんになって赤ちゃんを連れて来てくださることもありましたし、3代目のワンちゃんを連れて来てくださる方もいて。そうやって楽しく昔の話をできるのも、同じ場所にずっといるからこそ。ありがたいなと思っています。
春日と竹下というように、グループ病院の連携は今も大きな特徴ですね。
ええ、休診日が重ならないようにしているので、どちらかの動物病院で常に診療できる体制は、皆さん心強く思ってくださっているようです。スタッフの行き来も頻繁に行っていますので、情報や物資の共有もしっかり行えますし、連携しやすいシステムが構築されているからこそ可能なことがたくさんあります。例えば、春日の動物病院に併設されているリハビリセンターでの診療も、当院で診療した際にリハビリが必要だと判断すれば、すぐにおつなぎすることが可能です。そこは当院の強みでもありますね。
グループ病院間で連携したチーム医療が強み
そもそも院長が獣医師になりたいと思ったきっかけは何だったのでしょう。
子どもの頃から動物が大好きで、近所にいた地域猫によくご飯をあげたりしていました。獣医師になりたいと明確に思ったのは小学6年生の時。父が私に「獣医師が向いているかもしれないね」と言ったその一言がきっかけでした。父は覚えていませんでしたけど、親の何げない一言が、子どもの将来を決めるきっかけになることって意外と多いかもしれませんね。ほかにもやってみたい職業はありましたが、それは大学時代のアルバイトで経験しました。その上で、自分の持っているものを生かせる職業を考えた時に、やっぱり獣医師だなと思ったんです。その選択は今でも正しかったと実感しています。夜間診療を行っていた頃は、緊急を要する動物が来院することも多かったので、一人でオペをしたり、大変なこともありましたが、動物が好きだからやってこれたのは間違いないと思います。
来院する動物や多い主訴についても教えていただけますか。
動物の種類としては犬と猫、最近は小鳥やうさぎの来院が多く、以前よりも減りましたがフェレットもよく診ています。昔はプレーリードッグも多かったけれど、今は輸入禁止になったため、診る機会が減ってしまいました。主訴に関しましては、おなかを壊したというのが多いですね。最近はインターネットで検索して、チョコレートや玉ねぎといったメジャーなもの以外にもブドウや観葉植物を食べたからと連れて来られるケースも。昔は危険性があるとあまり知られていなかったので、そのまま放置されていたことが多かったのですが、今はすぐに連れて来てくださることが多いので、対処の幅も広がるのは情報社会になって良かったなと思う点の一つです。
こちらならではの治療があれば教えてください。
当院では、レーザーを用いた温熱療法を実施しています。椎間板ヘルニアをはじめとする運動器疾患で、痛みが持続的に続いているケースにレーザー治療を施し、痛みの緩和を図ります。当院はチーム医療を得意としていますので、先ほどもお伝えしましたが、リハビリが必要だと判断すれば春日の施設へおつなぎするなど、グループ病院間での連携も大きな特徴だと言えるでしょう。
診療は動物だけでなく、飼い主の心も支えていく
では、スタッフさんについてもお聞かせいただけますか。
勤続年数が長い方が多く、私が指示せずとも検査の準備ができていたり、緊急時の対応にも長けた方ばかりです。当院は上下関係というのがほとんどなく、スタッフ同士でディスカッションできる風通しの良い環境です。飼い主の方がフランクに話してくださる方が多いので、コミュニケーションの中で得た情報を診療に生かせています。飼い主さんが抱く小さな違和感は、実はとても重要。「何かしら違和感があるということは、異常がある」という前提で診ます。そのため、診療で最も心がけていることは、飼い主さんのおっしゃることをさえぎらないこと。何でも話せる雰囲気づくりに注力するとともに、私たちも見落としがないか常に緊張感を持って診療を行っています。
治療に関しては、飼い主さんによって考えがさまざまだと伺いました。
特に重病の子に関して治療を続けるべきか否かといった迷いがある時は、ご家族の中でも意見が分かれることが少なくありません。そこをいかに支えていくか。どの選択も間違いではないんですよね。ただ、動物たちがどう感じるか、どうしてもらうのがベストなのかといった方向性は、ある程度お伝えすることはできます。苦しんでいる子をそばで見るというのは本当につらいもの。一方で、治療を諦めたことを後悔される方も見てきているので、その時の感情だけではなく、納得して方向性を選択いただけるよう努めています。私も経験がありますが、飼い主さんのペットロスの喪失感は計り知れないほど大きく、ペットを見送った方へお手紙を書いて寄り添うことも。そんなつらい経験を乗り越えて、次の子を連れて来てくださった時は、立ち直られたんだなと胸が熱くなります。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
最近、里親に登録し小学生の男の子を預かっているのですが、その子と動物が接している姿を見ても、人と動物が触れ合うのはとても良い影響があるんだなと実感しています。最初は怖がっていたのがどんどん触れるようになったり、おやつの取り合いをしたり(笑)。動物でないとできないことってたくさんあると思うんです。言葉は話せないけど、接することで相手の想いを感じ取っていくというのは彼らだからこそできると思うんですよね。人と人だと言葉が邪魔してできないことも、動物が相手だとできていることがあると、子どもと動物のやりとりを見ていても感じることが多くて。だから、たくさんの方に動物と触れ合っていただきたいなと思います。そして、人も動物もいつも元気ではありませんから、何かしらペットの様子で気になることがあれば、いつでも気軽にご来院ください。