佐藤 祐 院長の独自取材記事
みなとおおほり動物病院
(福岡市中央区/赤坂駅)
最終更新日: 2024/10/15
赤坂駅から徒歩9分ほど。目の前には浜の町公園があり、人々の生活の息吹が肌に心地良く感じられる街の一角にあるのが「みなとおおほり動物病院」だ。地元福岡を愛する佐藤祐院長が2015年に開業した院内は木目調の落ち着いた雰囲気で、猫のみが受診できる時間帯としてキャットアワーを設けるなど、飼い主と患者の不安に寄り添う工夫がいくつも見受けられる。話し上手の佐藤院長が大切にしているのは、飼い主と患者がハッピーに過ごせるようなサポートを行うこと。中でも定期的な健康診断の大切さを伝えたいと佐藤院長は語る。「“より良く飼う”ことは実は難しいもの。だからこそ気軽に私たちを頼って、すてきな時間をより長く過ごしてほしいと思っています」と話す佐藤院長に、今抱えている思いや健康診断の大切さなどについて詳しく聞いた。(取材日2024年9月6日)
飼い主と患者の生活がハッピーであるようにサポート
先生が獣医師の道をめざしたきっかけや、開業の経緯などを教えてください。
やっぱり動物が好きだからですよね。小学校の卒業文集には将来獣医師になると書いていたくらいで、同級生に会うと「夢かなえたんだな」と言われることもあります(笑)。大学卒業後は福岡市内の動物病院のほか、神奈川県の日本動物高度医療センターではがんを専門にし、非常にやりがいのある日々を過ごしました。動物のがんも人間と同じで、早期発見・早期治療がポイント。実際、勤務医時代に「進行する手前でがん発見できて本当によかった。佐藤先生に感謝しています。」というありがたい言葉をかけていただきました。そんな患者さんの命を奪ってしまうがんをもっと早期に発見できれば、という思いも芽生え、地元福岡で開業しようと決意しました。
日々どんな思いで治療にあたっておられますか?
まずは、飼い主さんに笑顔になって動物病院から帰ってほしいということです。小児科に置き換えるときっとどなたでも想像できると思うんですが、子どもが体調を崩したとき、うまく症状を説明できない年齢だと「この子は何を訴えたいんだろう」と心を痛めてクリニックにいらっしゃる。その後診察や検査などを通じて、「もう大丈夫ですよ、こういうことですからこのお薬を飲ませてあげてくださいね」と医師から説明を受けて、そこでようやく状況がわかって安心できるようになりますよね。飼い主さんがほっとして笑顔になるためにはどうすればいいのか、という点を常に考えて診療にあたっています。患者さんのそばにいつもおられる飼い主さんと、私たち獣医師が二人三脚でサポートして、いつか必ず来るお別れまでハッピーに過ごしてほしいと考えています。
複数名の獣医師がいらっしゃるのですね。
獣医師は私を含めて3人在籍しており、どの獣医師であっても診察が可能ですが、診療内容によって、例えばがんなどの疑いがある場合や手術が必要な場合、手術後の治療を継続していく場合は私が主に診るなど、それぞれの得意分野によってメインの担当医が変わることも。とはいえ当院のスタッフは皆さん優秀な方ばかり。スタッフは7人在籍しており、繊細で怖がりな猫にもびっくりするほどスムーズかつ丁寧に対応していて、この技術の高さにはいつも助けられています。
病気を「治療する場所」から「予防する場所」へ
手術やその後の入院対応もされているのですね。
MRIやCT、内視鏡などが必要な場合は他院へのご紹介になってしまいますが、血液検査、尿検査、エコー(超音波)検査、エックス線検査といった健康診断や一般的な手術・治療に必要なものは当院にそろっています。勤務医時代にがんの治療に数多く携わっていたこともあって一般的な外科手術、例えば脾臓、腎臓などの手術やその後の入院ももちろん可能です。最近増えている傾向がうかがえるのは猫の尿管閉塞ですね。猫はあまり水を飲まないので、ペットフードとお水というベーシックなセットだけでは尿管に結石ができてしまうことがあるんです。手術はもちろん、水飲み場を増やしてこまめに水分補給ができる工夫のアドバイスや、自宅で尿を採取して当院にもってきていただき検査を行うなど、幅広く対応しています。
最近特に意識されていることは何でしょうか?
この現代、動物を飼うことはそう難しくありません。ただ、“より良く飼う”ことは飼い主さんだけでは難しいのではないかと考えます。例えば昔は犬を飼う場合、野外かつ犬小屋で、というのがメインでしたが、今は室内飼いが多くなりました。ペットをより家族の一員と考えることが当たり前になったんですね。それと同時に犬も歯周病になりやすくなり、それがいろんな病気につながるから歯磨きが大切だ、ということも常識に変わってきました。そういった最新の情報を飼い主さんに適切にお伝えしていくことを日々意識しています。人間にとってそうであるように、動物にとっても動物病院は「病気を治療する場所」から「病気を予防する場所」へと変わってきているのだと思います。
だからこそ健康診断にも注力されているのですね。
健康診断を受けても「異常がなくて良かったですね」となることがほとんどで、それが一番いいですよね。ただ、その「正常値」の中にあっても年単位でずっと見ていると、だんだんと異常のほうへ近づいていて、それが初期の腎臓機能の低下だとわかることもあります。またお散歩ついでに数ヵ月ぶりにお会いすると、「なんだか痩せている」「何か触れるものがある」などと気づくことも。これらは動物病院に定期的に通うからこそわかることです。一方でご家庭にいるからこそわかることもあります。いつもであれば、帰宅したら吠えながら出迎えてくれるのにじっとしている、といったことですね。獣医師、ご家族の両方の目で見ていくことが大切なのです。
どんな動物でも居心地良く過ごせる場所にしたい
繊細な猫も通いやすいようにキャットアワーを設けておられるとか。
待合室にも猫専用スペースを設けてはいるのですが、やっぱり同じ時間に犬がいたりすると、鳴き声が怖くて飼い主さんですらひっかくほどパニックになってしまう子もいます。そうすると動物病院嫌いになってしまいますし、結果的にその子の健康に害を与える可能性もあります。他院には通いづらいという飼い主さんからの相談があったこともあってキャットアワーを設けてみると、思った以上に血液検査やエックス線検査などを穏やかに受けてもらえました。定期的に通院が必要な慢性病の子などもいますから、できるだけ居心地が良い場所になるように心がけています。
初めて動物を家に迎えるという方もおられると思いますが、些細な相談も可能ですか?
もちろんです。散歩のついでにふらっと来院して「体重を計ってほしいんですが」なんてことも大歓迎です。前述したような最近多く見られる症状・疾患などの注意喚起もできますし、年齢に合わせてどんな食事がいいか、どんな運動がいいかなどの細かいアドバイスもお伝えします。私が注意してほしいと特に思うのは、インターネットの情報ばかりを頼りにすること。どうしても飼い主さんの視野が狭まっていまいますし、患者さんにとって害悪な情報を正しいものと誤認する恐れも。そうならないためにもやはり動物病院を頼っていただきたいですね。それが結果的に“より良く飼う”ことにつながるはずですから。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
動物たちは言葉を話すことができません。ただ、尿が出なかったり、くしゃみを繰り返すなどのいつもと違う症状があると、かわいそうでたまらず飼い主さんもとても心配な気持ちになりますよね。「相談だけで動物病院に行っていいのだろうか?」と疑問に思う飼い主さんも多いのではないでしょうか? 当院は些細な相談でも扉をたたいてもらって大丈夫です。飼い主さんと患者さんがお互いにハッピーに生きるため、そのサポートをしっかり行っていきます。専門知識を持つプロの獣医師として、伴走していきますので、ぜひお気軽にいらしてくださいね。