成田 博繁 院長の独自取材記事
明石ほんまち動物病院
(明石市/明石駅)
最終更新日: 2024/01/12
JR神戸線・明石駅から徒歩圏内の場所にある「明石ほんまち動物病院」。ガラス張りの同院は、中の様子がわかるようになっており、誰もが気軽に入りやすい雰囲気だ。「この街が好きだから、やっぱりこの土地で開業することを選びました」と語るのは成田博繁院長。東京大学附属動物医療センターで救急医療や難症例疾患の動物たちに数多く対応してきた経験を持つ。ハードな現場での経験をしてきたからこそ早期発見・早期治療への思いは強く、いつでもオープンな動物病院をつくりたかったと成田院長。SNSも活用し、誰もが犬や猫を身近に感じられるように楽しい時間を共有できることを願っている。「明るく話しやすいスタッフばかりなので、診療に関わらず、遊びに来てください」と呼びかける成田院長に話を聞いた。(取材日2023年12月25日)
受診のハードルを下げ、早期発見・早期治療につなげる
明るくすてきなクリニックですね。
ありがとうございます。生まれ育った明石の街が大好きで、この街に感謝を伝えたいと、獣医療の分野で地域貢献できればと当院をオープンしました。この街の日常に溶け込むような動物病院にしたいというのが私の願いです。建物は明石を象徴する海色をシンボルカラーにしました。院内は明るくフルフラットで、ワンちゃん猫ちゃんが通いやすいよう設計しています。当院からは明石の海を望むことができ、2階のドッグランからは淡路島を見ることも。私のことを子どもの頃から知る人や同級生のお母さんなどもたくさん訪れてくれます。昔話に少し気恥ずかしく思うこともありますが、親しみを持って来てくださることにうれしく思いますし、 また身の引き締まる思いです。
こちらの動物病院のコンセプトは?
「ふらっと立ち寄れる動物病院」が当院のコンセプトです。気軽に来て近況報告してもらったり、病気というほどのことはないけれど、気になっていることを相談してもらったり、また何もない時でもおしゃべりしに来てほしいと思っています。ワンちゃんや猫ちゃんは自分の体調を伝えにくいものです。飼い主さんとのたわいもない会話から、何かしらの病気の前兆を見つけることができるかもしれません。大学病院に勤務していた時には、状態がかなり悪くなってから運ばれてくる子ばかり見てきたので、そういった状況になる前にしっかりと見つけ出してあげたいと思っているのです。そのため、当院ではあえて予約システムを取り入れていません。受診に対するハードルを少しでも下げたいからです。また院内にはおやつも用意しています。潮風を感じながらのんびりお散歩してもらって、当院をそのコースの1つに加えていただけたらうれしいですね。
どのような診療を行っていますか?
嘔吐、下痢、食欲低下などの消化器症状から、排尿や排便トラブル、皮膚疾患、ケガ、歯石取り、ワクチン接種などの一般診療のほか、避妊・去勢、また腫瘍・腫瘤の摘出などの手術、薬浴、トリミングなど、幅広くワンちゃん猫ちゃんのライフサポートをめざしています。検査機器も血液検査機器、尿検査機器、顕微鏡など一通りそろっており、中でも超音波検査機器は早期発見・早期治療をめざす上で重要なものですので、こだわっています。腫瘍が疑われた際などに内視鏡で消化管組織を一部切り取って分析する生検検査にも対応しています。とはいえ、当院で対応できない治療や検査もあります。MRI検査や大がかりな手術が必要な場合には、迅速に大きな病院を紹介しています。
的確な診断を心がけ、適切な治療の提供をめざす
大学病院で二次診療をご経験されたそうですね。
大学卒業後は、東京大学附属動物医療センターで勤務していました。中でも消化器内科と腫瘍内科を専門として、慢性腸症、肝胆道系疾患、リンパ腫、血液腫瘍、免疫疾患などの診療をしていました。 今でこそ大きな都市には二次医療を担う動物病院も増えましたが、私が勤務していた頃はまだまだ少なくて、さまざまな手を施した動物たちが最後の砦として頼ってくるような病院でした。通常2年の勤務が一般的ですが、私の場合は指導にも携わり、トータルで3年間勤務させていただくことになりました。毎日忙しく、 難しい局面に立つことも少なくありませんでしたが、学ぶところは非常に大きかったと思います。
大学病院での経験から、診療ではどのような点に気をつけていますか?
的確な診断をするよう特に気をつけています。例えば、人間の場合にはどこでも同じような治療が受けられるようガイドラインといった医療指針が設けられています。ですが、犬や猫の治療ではそれはあまりありません。そこで当院では、大学病院でも使用していた数多くの症例をもとに作られたガイドラインをベースに、病気の重症度をステージ分類やスコア化し、それに基づいた治療提案を心がけています。病気の進行段階を具体的に数値化することで、病気の初期段階で強い薬を使うこともありませんし、逆に病気が進行したと思えば、すぐに積極的な治療に移行することもできます。もちろん、こういった判断基準は医療が進歩すれば、方向性や治療そのものが変わるもの。その際には速やかに対応できるよう、常に日々の研鑽は怠らないようにも心がけています。
飼い主さんとのコミュニケーションも大切にされているそうですね。
もちろんです。ガイドラインどおりの治療が、飼い主さんと動物にとって最良の治療とは限りません。治療では、できるだけたくさんの選択肢を提示して、それぞれのメリット・デメリットを説明し、飼い主さんに判断してもらうようにしています。また、どれを選択しても、それが正解だと思っています。中には、できる限りの治療をすることが良いことだと思う人がいるかもしれませんが、飼い主さんが治療や介護で疲れきってしまっては元も子もありません。犬や猫が大好きという気持ちを大切に、一緒にいる時間を楽しく共有することが一番です。ですので、飼い主さんのライフスタイルについてもしっかりと把握し、一緒に考えながら治療を決めるようにしています。
動物の目線で、優しい動物病院に
動物と接する際、どんなことに気をつけていますか?
ワンちゃんはお散歩もお出かけも大好きですし、普段から気軽に立ち寄れるようにして、当院を大好きな場所と認知してもらえるように心がけています。日常の変化に飼い主さんも気づきやすいので、散歩の様子や食事の仕方、表情など、ご自宅でのお話をじっくりお聞きするようにしています。逆に猫ちゃんの場合は、触られたくない、近づかれたくない、見られたくないという子も多いです。そもそも動物病院に来るのも怖いので、飼い主さんとの問診中は極力ケージから出さずにいて、触診や検査をする時間はできるだけ短くするようにしています。
院内も動物の気持ちに立って、さまざまな工夫をされていますね。
待合室にはパーティションを設け、犬と猫の待合スペースを別々にし、安心して待てるようにしています。1階にある診察室と処置室は透明な扉でつながっていて、採血やエコー検査の際も、飼い主さんと動物が離れることのないようにしています。また、2階には明石の海風が心地良いドッグランやトリミング室、手術室などを備え、お泊まりや入院のためのお部屋は、小型犬や大型犬用のほか、繊細な猫ちゃんのために、ワンちゃんのにおいが気にならないよう扉がついた猫専用ゾーンの宿舎を設けています。国際猫医学会(ISFM)が掲げる国際基準の規格である「キャットフレンドリークリニック」の認定も取得しています。
最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
私がめざすのは地域に根差したクリニックです。これからもワンちゃんや猫ちゃん、飼い主さん、地域の人々のため、できるだけ新しい見地を取り入れながら、ここ明石で先進の医療を届けていきたいと思っています。今どきはいくつかの動物病院にかかっているのも、普通のことかと思います。セカンドオピニオンも受けつけていますので、気軽にご相談にお越しください。検査データをお持ちいただければ、もう一度検査する必要もありません。動物病院を離れれば、私も皆さんと同じようにワンちゃんや猫ちゃんが大好きな一人の人間です。動物たちと過ごす時間を皆さんとともに共有していければうれしいです。