橘 実喜和 先生の独自取材記事
八幡みなみ動物病院
(市川市/本八幡駅)
最終更新日: 2024/03/15
そこが動物病院であることを忘れてしまうような、リゾートを思わせる居心地の良い空間。市川市大和田の通り沿いにある「八幡みなみ動物病院」は、動物と家族の気持ちに寄り添った獣医療を提供する動物病院だ。執行康弘院長とともに診療にあたる橘実喜和先生は、子どもの頃からの夢をかなえて獣医師になった。大学卒業後は24時間体制の動物病院で経験を積み、その後に結婚・出産を経験。臨床以外の場にも獣医師として広く携わった後に、2021年の同院開業に合わせて本格的に臨床の場に復帰した。「大好きな動物たちに関わる仕事ができて、本当に幸せです」と笑顔で語る橘先生に、獣医療への思い、また育児と仕事の両立についても話を聞いた。(取材日2024年2月6日)
憧れの獣医師になり、育児をしながらキャリアを積む
まずは、先生が獣医師をめざした理由とこれまでのご経歴をお聞かせください。
私、子どもの頃から動物が大好きだったんです。両親の仕事の都合もあり自宅にペットはいなかったのですが、小学校の卒業文集に「将来は動物のお医者さんになりたい」と書いていたくらいです。その思いを持ち続けたまま獣医師の道に進み、大学卒業後は地元である市川市での勤務を希望して、夜間診療にも対応する動物病院に就職しました。そちらでは3年間勤務した後に、結婚を機に退職しています。子どもが生まれてしばらくは、東京や千葉の動物病院でパートとして診療を行ったり、獣医師による電話相談サービスに従事したり、動物看護の専門学校で講師を務めたりと、さまざまな経験を積んできました。子育てがひと段落して、本格的に臨床の場に復帰したのは2021年。当院では開業時より診療にあたっています。
育児をしながらのキャリア形成は大変だったのではないでしょうか?
大変なこともありましたが、周りの方々にサポートしていただいてここまで来ることができました。最初の動物病院を退職した後も、仕事仲間だった先生方が職場の紹介やアドバイスをくださったんです。獣医師としての働き方はいろいろあるのだとも知りました。仕事から完全に離れていたのは、出産前後の約1年間だけ。結婚前の私は、24時間対応の動物病院で獣医療に向き合い、医療面で多くのことを学びました。ですが動物の診療は得意でも、人と話すのは少し苦手……というか苦手と思い込んでいたのかもしれません。検査結果をご家族にお伝えするのに、それでは困ってしまいますよね。結婚後に子どもができ、さまざまな職場を経験して、保育園の先生やママ友などと会話する機会も増える中で、いつしか人と話すことが得意になりました。仕事からも育児からも、多くのことを得られたのだと思います。
こちらでは開業当初から勤務されているのですね。
はい。2人の子どもたちは小学生になりましたし、今は仕事に全力で取り組んでいます。大好きな動物たちに関わる仕事ができて、本当に幸せです。私は今も地元である市川市に住んでおり、子どもも市内の学校に通っています。ですから子どもの友達やママ友が当院にいらっしゃることもあるんですよ。少し緊張してしまいますが、とてもうれしいです。そうして来られた方が、動物病院を探しているご友人に当院を紹介してくださることも。「江戸川の河川敷で、犬の散歩仲間にこちらの動物病院のことを聞いたので」なんて言葉を聞くと、身が引き締まる思いです。こうして皆さんに信頼していただけるのはありがたいことですね。
家族の選んだ方法が、ペットにとっても良い方法
診療の際に心がけていることをお聞かせください。
ご家族の思いを尊重し、納得いただける治療を提供できるよう努めています。多くの場合、治療法は一つではありません。どの方法を選ぶべきなのか、それはご家庭によっても答えが変わること。その子の性格をよく知っているのは私ではなくご家族ですし、考え方や事情もそれぞれです。ご家族が「この子にとって、これが一番良い方法だ」と選ぶものが、その子からしても良い方法なのだと私は思います。精度の高い治療をめざすだけでなく、ご家族の思いに寄り添って、私に何ができるかを考える。これは当院のコンセプトである「柔軟な獣医療」につながるかもしれません。
ペットの異変に、不安を感じて来られる方も多いのではないでしょうか?
そうですね。犬や猫は言葉を話せませんから、ちょっとしたことでもご家族はとても不安になられます。私も大学時代から犬や猫と暮らしてきたのでご家族の気持ちはわかるのですが、できればその心を軽くして差し上げたいんです。心配のない症状の場合、複雑にならないように簡潔にわかりやすく話します。細かいことを一つ一つ説明すると、それがまたご家族にとって不安の種になってしまう気がするんです。そしてご家族の不安な気持ちは、犬や猫にも伝わってしまいますから。もちろん、ご家族が詳しい説明を望まれたり、お伝えすべき重要なことはきちんと話します。もし重い病気だった場合には原因や治療法をお伝えして一緒に考え、動物もご家族も必要以上に不安にさせないようにと心がけています。
動物と接する際に工夫していることはありますか?
犬も猫も、ベタベタと触られることを好まない子が多いです。触診はスムーズに、不要な検査や嫌がることはできるだけしたくありません。大きな声やリアクションも動物に嫌われる原因になりますから、こちら側の動作も丁寧に。とはいえ、そうはいかないこともあるのですが、少なくとも第一印象を悪くしたくはないですね。犬・猫・うさぎ・モルモット・フェレット・ハムスターと、当院の患者さんは種類も性格も多様です。動物たちからすると痛い思いをさせる「お医者さん」のことは嫌いかもしれませんが、私にとってはどの子もかわいくて仕方がないんです。
何でも話せるような、親しみやすい獣医師でありたい
今後の展望をお聞かせください。
何でも話せるような、親しみやすい獣医師でありたいです。この辺りには子育てファミリーが多く、私と同年代のご家族もいらっしゃいます。友達に話しかけるように気兼ねなく、何でもお聞かせいただけるとうれしいですね。ご家族そろってのご来院の際は、小さいお子さんにも見えるように診察台を低くして診療を行います。ペットも大切な家族の一員。手術の日に泣きながらペットを預けていくお子さんもいらっしゃいます。そうして動物たちとの暮らしを通じて、楽しかったり悲しかったりさまざまな経験をしながら、かつての私のように「動物のお医者さんになりたい」と思うお子さんが現れるかもしれません。そんな日を夢見ながら、心を込めて診療をしていきたいと思います。
先生は子どもたちにも動物たちにも愛情を注いでいらっしゃるのですね。
私は大学時代から犬や猫と暮らし、その後結婚して子どもが生まれました。犬にも猫にもわが子にも、立場は違えど同じように愛情を注いできたように思います。人間の子どもはいずれ成長して言葉が通じるようになり、一人で何でもできるようになります。私も子どもが小学6年生と3年生になり、あまり手がかからなくなったからこうして働けているんですね。一方、犬や猫はいつまでも赤ちゃんのように愛くるしいです。ですが人間とは体の構造が異なりますし、病気以外にも例えば食事に関することなど、悩む場面も多いかと思います。そんな時は、ぜひ私に相談してください。ペットに関する悩みも子育ての悩みと同じように、相談することで解決することや新たな発見があるかもしれません。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
動物にはできるだけストレスを感じさせないよう心がけていますが、病気の時は注射もしますし痛い思いもさせてしまいます。できれば小さいうちから、何もなくても健康チェックにいらしてください。ここが嫌な場所ではないとわかれば、いざという時に過度なストレスを感じさせずに済むかと思います。お気軽にいらしてくださいね。
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