北川泰彦 院長の独自取材記事
きたがわ動物病院
(横浜市旭区/二俣川駅)
最終更新日: 2023/01/22
相模鉄道線の二俣川駅と和田町駅を結んだほぼ中間に位置し、保土ヶ谷バイパスの新桜ヶ丘ICからも約3分という閑静な住宅地に「きたがわ動物病院」の優しい水色の壁が見えてくる。一緒に描かれているのは、院長の北川泰彦先生が小さい頃に飼っていたチャウチャウ犬だそうだ。北川先生自身は、生まれてからずっと変わらずこの地で暮らしている。飼い主自身が犬や猫の病気や治療法を理解して、きちんと納得してくれることが大事と穏やかに話す優しいドクターだ。院内はとても明るく清潔感にあふれていて、一歩足を踏み入れただけで安心感が漂う。プライベートでも5匹の犬たちに囲まれて、野球は阪神ファンだという北川先生に、子どもの頃のことから、看板のチャウチャウ犬のことまで、たくさんのことを語っていただいた。 (取材日2013年12月3日)
浪人中に立ち会った飼い犬の手術で獣医師になろうと決意
小さい頃はどんなお子さんだったのでしょうか。
生まれは横浜市旭区で病院の隣が実家です。小学校から中学校、高校まで、特に手先が器用だったわけではなく、ごくごく普通の子どもでした。僕には3歳ずつ離れた姉と弟がいますが、小さい頃は姉弟げんかをすると、自分が真ん中だったこともあり、姉とけんかすると男の子なんだからと怒られ、弟とけんかすると、お兄ちゃんなんだからと怒られ、怒られ役を一手に引き受けていたような感じでした(笑)。そのせいかけんかは自分に得が一つもないと感じて、早いうちからしなくなりましたね。クラブ活動は、中学1年生の時にバレーボール部に入りましたが、半年くらいでやめてしまいました。中学2年生からはなぜか週に1回ソフトボールができるからという勧誘で考古学部に所属しました。入部してからも考古学はほとんどやらず、ソフトボールばかりやっていましたね(笑)。
獣医師になろうと思ったきっかけは何ですか?
小さい頃から家では何匹も犬を飼っていて、動物は常に身近にいたのですが、特に獣医師になろうとは考えていませんでした。父もサラリーマンだったので、将来は漠然と、普通のサラリーマンになるんだろうなと考えていたくらいです。ところが、浪人中に家で飼っていた犬が手術をすることになり、手術の現場に立ち会うことになりました。その時に冷静に手術を見ていることができた自分を知り、ひょっとしたら獣医師という職業も、将来の職業の一つの選択肢なのではないか? と考えたのです。今思えば、これが獣医師になるきっかけだったと思います。あとから両親が、姉弟の中で、1人くらい獣医師になって欲しかったということを言っていたので、手術に立ち会わせたのも戦略だったのかもしれません(笑)。もし浪人をしていなかったら、獣医師にはならずに普通のサラリーマンになっていたと思います。
大学時代から卒業後のことをお伺いします。
僕は日本大学獣医学科に入学したのですが、大学時代の6年間は、毎日勉強や実習に明け暮れる、普通の大学生という感じでした(笑)。卒業後は横浜市の栄区にある動物病院に代診として4年間実務経験を積みましたが、正直、大学時代とは全く違うなと感じました。大学で学んだ実習や知識は、単に「知っている」というだけであって、実際の治療の場はまったく一からやり直しという感じでした。また大学とは違い、獣医師とペットの間に飼い主さんが入りますから、飼い主さんが何を思っているかを考えるのが一番大切だと感じました。飼い主さんもペットの病気を自分の子どもと同じようにとらえる人もいれば、そうでない人もいます。大切なのは、どの場面においても、飼い主さんが一番納得できる方法を常に意識しながら治療にあたることが大事だと感じました。
人間とペットが共に共存できる環境づくりをしたい
こちらの病院のことをお聞かせください。
1999年4月に開業しました。犬とネコを専門に治療していて、開業当初から変わらずこの地で続けています。特に知り合いが多いわけではないのですが、生まれて育ったこの地なら、回りの環境も知っているのでここを選びました。他の場所だといろいろとリサーチしなければならずリスクも伴いますが、地元なら安心して開業できますからね。来院される飼い主さんも、近隣の方よりも、車で10分、15分とかかる地域から来院される方が多いです。また当院は救急診療センターであるDVMsどうぶつ医療センター(旧・横浜夜間動物病院)とも提携をしています。病院の看板に描かれている犬は、僕が小学校の頃から大学の頃まで2代続けて飼った、エディスとセーラという名前のメスのチャウチャウ犬をモチーフにしています。病院をつくる時、かわいいイメージよりもシンプルで清潔感があるようにしたかったので、院内のレイアウトは僕がしましたが、細かい内装や壁紙の色、外の看板などは妻にまかせました。実は妻も獣医師です。そして、一番気を使ったのは匂いについてです。院内に入った時に匂いがしなかったのに気付かれたと思いますが、匂いだけは一番気をつけて妥協をせずに、きちんとした空気清浄機を院内に設置しています。
災害時におけるペットとの避難訓練を行ったことがあるそうですが。
僕は旭区の獣医師会会長をしているのですが、2011年に東日本大震災が起きたのをきっかけに、ペットと飼い主さんのきちんとした避難の取り組みが大切なのではないかという意識が起こり、横浜市の獣医師会と役所の方々や地域の方々が協力しあって避難訓練を行いました。実際に災害時になると、ペットを飼っている人たちはペットを連れて避難所に来る人も多いはずです。避難所では当然ながらペットを飼っていない人たちもたくさん避難しているわけですし、全員が動物好きな人たちばかりでもありません。また中には動物アレルギーの人もいるでしょう。こういった人たちの意識の差や、受け入れる避難所側の意識にも、まだまだお互い隔たりがかなり大きいと感じます。災害時には多くのペットたちも避難してくることになるので、受け入れる避難所がどうあるべきか、どんなことが必要なのか、また、ペットを飼っている飼い主さんたちはどういった意識を持っていなければいけないのか、こういったことを事前に対処して擦り合わせをしておく必要があると思っています。また、こういった避難訓練はそれぞれの地域にある、広域避難場所が理解を持っていただけないと実施できないので、多くの広域避難場所で実施できるように、今後も働きかけは必要だと思っています。今はまだ始まったばかりですが、いつ災害が起こっても大丈夫なようにしておかなければなりません。受け入れ側や飼い主さん側、ペットを飼っていない側の意識をどこで交える部分が作れるかが今後の課題だと思っています。
普段治療の時はどういった部分を心がけているのでしょうか。
飼い主さんが納得して安心できる治療を心がけています。僕は飼い主さんには、がんなどの難しい病気に関してもハッキリと言うようにしています。曖昧な言い方は、飼い主さんにも誤解を招くことになりますし、きちんとした治療を行う上でも妨げになってしまいます。難しい病気の場合も幸い紹介できる大学病院が多くあるので、僕のところでは一次診療として飼い主さんに説明をする位置づけをして、それから大学病院へ二次診療として紹介するようにしています。また、病状や治療法を説明するときは、できるだけ専門用語やわかりづらい言葉は使わないようにしています。あまりにも説明が多岐にわたる時は、場合によってポイントを絞って、今日はここまで覚えてくださいと、今日わかって欲しい部分だけを説明します。そして次回来院した時でも大丈夫なことは次回説明するようにしたりします。飼い主さんが納得して理解してくれてこそ良い治療ができますからね。
飼い主が納得して満足してくれることが何より大切
先生は休日をどのようにして過ごされていますか?
もともと体を動かすことは好きなのですが、かといってアウトドア派かというとそうではなく、どちらかというとインドア派ですね。子どもは中学3年生の男の子が1人いて、今は学校でハンドボール部に所属しています。時々試合の応援に行くこともあります。球技は僕も小さい頃から好きで、草野球は仲間たちとやったりしました。開業してからも少し体を動かさなきゃと思って、テニスをやったりもしたのですが、今はバッティングセンターに行っても、ボールが小さく見えてバットに当たりません(笑)。野球は阪神が好きなので、年に何回か球場に観戦に行きます。以前は甲子園まで見に行ったこともありました。スポーツは基本的に好きなので、休日になると家では、テレビで朝からスポーツ番組を付けっ放しにしていたりするくらいです。
自宅でもペットを飼っていらっしゃるのですか?
5匹の犬がいます。シーズーの親子とチワワ、あとペキニーズとワイマラナーがいます。いつの間にかいろいろと集まったのですが、中でもワイマラナーは以前から欲しかった犬でした。相当にぎやかなのではと思われるでしょうが、今はみんな人間だとシニアの年代になっていますので、基本的にいつも丸くなって寝ています。ワイマラナーだけはみんなと一緒にはできないので、普段は病院の中にいます。外へ出してあげたりして遊んでやると喜んではしゃぎますが、それ以外はやっぱり同じように丸くなって寝ていますよ(笑)。
読者に向けてメッセージがあればお願いします。
飼っている犬や猫の具合が悪いなと思ったら、何日も様子を見ずにすぐに連れて来てください。治療が遅れてしまうと、それだけ治りも遅くなってしまいます。あと、少しでもわからないことがあったら、恥ずかしがらずに遠慮なく聞いてください。僕たちが普段から当たり前のように話している言葉が、ひょっとしたら飼い主さんにはわからない言葉だったりする可能性もあります。どんな些細なことでも構わないので、疑問に思ったことはどんどん質問してください。飼い主さんに納得してもらって満足してもらえる診療こそが、僕が一番に行いたい治療の第一歩と考えています。ワクチン接種については、犬であれば狂犬病、混合ワクチン、フィラリア、ノミ、ダニの予防、猫であれば混合ワクチン、ノミ、ダニの予防はおすすめします。特に多頭飼育の場合、感染しやすい環境ですので「うちの子は外に行かないから大丈夫」と思わず、積極的に行っていただきたいですね。