金重淳子 院長の独自取材記事
金重動物病院
(横浜市戸塚区/戸塚駅)
最終更新日: 2021/10/12
JR戸塚駅から車で10分。住宅と緑の多い場所にある「金重動物病院 戸塚分院」は、開業約30年という、この地域に深く根付いた動物病院だ。金重淳子院長のご主人が開業した金沢区にある本院と、この戸塚分院のほかに、千葉県には長男が勤務している分院があり、親子3人とも、日々動物の健康を支えている。金重院長に、「どのような気持ちで患者に接しているか、今後力を入れたい分野は」と伺うと、「飼い主さんの気持ちに寄り添える獣医師でありたい」という言葉が返ってきた。開業から今まで、近隣に住む患者だけでなく、遠方からも金重院長の診察と治療を求めて来院している人たちは、金重院長のこの気持ちを信じて、大事な家族を任せているのではないだろうか。 (取材日2012年3月26日)
飼い主の気持ちを理解し、寄り添える獣医師でありたい
この場所に開業した理由は何ですか?
金沢区に主人が開業した金重動物病院の本院があるのですが、主人の実家がこの近くということもあり、分院をここに開業し、私が当初から診察を行ってきました。開業したばかりの時は子どもを育てながらでしたので、仕事とプライベートの境目なく頑張っていましたね。診療時間外に急患が来た時、「赤ちゃんは私が抱っこしますので、うちの犬を診てください」と患者さんに言ってもらったこともありました(笑)。
患者は近くにお住まいの方が多いですか?
この辺りは長年住んでいる方が多いので、付き合いの長い患者さんがたくさんいますね。開業した時に出会ったわんちゃんや猫ちゃんは残念ながらもういませんが、飼い主さんが2匹目、3匹目の子を連れてきてくれます。そうやってご自身が飼ってらっしゃる大切な家族をまた任せていただける、ということが獣医師にとっての勲章じゃないかなと思っています。本当に嬉しいことですね。神奈川県以外から来てくださっている方も多いんですよ。住んでいる地域でどこの病院に行ったらいいかわからなくて困っている人が、お散歩仲間からの紹介でここに来る、ということが増えています。また、近所の病院で診察してもらったけれど、ちょっと不安があるので、セカンドオピニオンをお願いしたい、というケースも増えています。往診も大切ですので、リクエストがあれば、基本どこにでも伺いますよ。最近では埼玉の方まで車で行ってきました。
飼い主さんと接する際に気を付けていることはありますか?
相手の立場、気持ちを理解することが大切だと思いますね。獣医師が飼い主さんと接する時は、飼っている動物の具合が悪い時がほとんどです。飼い主さんがつらくて大変な思いをしている時期を一緒に過ごすわけです。わんちゃんや猫ちゃんを心配する気持ち、不安な思い、心の痛みを理解して、それに寄り添える獣医師でありたいと思っています。獣医師として治療にはとてもエネルギーを使いますが、飼い主さんもまた別のエネルギーを相当使うと思うんですよね。それから診察の時は、こちらから細かく質問をする前に、まずは「気になっていることは何ですか。困っていることは何ですか。」と聞きます。飼い主さんに遠慮なく、どんどん聞きたいことを聞いてほしいですし、話したいことを話してほしいんです。私はプロとして診るポイントがありますが、飼い主さんは獣医師とは別の視点でご自分のペットを良く見ています。ですから、毎日接している人の情報はとても重要なんです。
高齢のペットの介護は力を入れていきたい大きな分野
獣医師を目指したきっかけはどんなことですか?
一般的すぎるかもしれませんが、小さい頃から動物が好きで、犬や鳥や亀やヤモリ、虫などいろんなものを飼っていました。語学も好きだったのですが、文系の成績が悪くて、先生に文系に進みたいとは言えない状況だったんです(笑)。文系と比べると理系の成績の方がはるかによかったので、理系に進むのが自然な流れでしたね。理系ならば獣医師になりたい、と決めていたので、東京農工大学を受験しました。大学での勉強は好きな分野だけでしたし、獣医師になりたいと気持ちがしっかりありましたので、楽しく学べました。
金重院長は超音波検査を早い時期に取り入れたそうですね。
初めて導入したのは20年以上前ですね。超音波検査を導入する前は、体内の状態がどうなっているかを診るために試験開腹する必要がありましたが、今は超音波検査で体内の動きや血流などがリアルタイムにわかります。超音波検査をする時は、飼い主さんにモニターを見てもらい、どこがどうなっているかを説明します。現在の状態が目に見えてわかるわけですから、飼い主さんにとっても理解しやすいようですよ。超音波検査の導入により、試験開腹の必要性が格段に減ったので、以前と比べて安心、安全です。さらに効果の高い治療法を選択することができるようになりました。機械を使った検査も必要ですが、基本は獣医師の五感と経験による診察です。内科的な細やかな診療と検査をうまく組み合わせて、治療を進めることが一番大事ですね。
今後力を入れていきたい分野はありますか?
高齢化したペットのための医療提供と介護の手助けですね。特に犬は寝たきりになってしまうケースが多いので、相談を受けることが増えました。現在は介護に必要な用具から食事まで、いろいろなものがありますので、介護環境が数年前より格段によくなっています。それによって、飼い主さんが介護をしながら、寄り添える時間が増えたということもありますし、逆に介護による疲れという問題も生じています。どんなに介護をがんばっても、いずれ最期の時がやってきます。長く一緒にいたからこそ、かけがえのない存在となり、お別れすることはつらいですね。高齢となったペットへの医療、そして介護の中で、私たちができることをどんどんしていきたいと思っています。中には「話を聞いてもらって、気持ちが楽になった」とおっしゃる方もいます。大変な思いをされている飼い主さんにもっともっと関わっていきたいですね。
ペットの変化をカレンダーにメモすることも簡単にできる健康管理の一つ
ご自身の健康のために行っていることはありますか?
時間が空いた時に、公営プールに行って1時間ぐらい泳いでいます。距離にしたら1.5kmぐらいですね。初めは子どもに泳ぎを教えるためだったのですが、泳ぐと持病の腰痛が楽になりますし、痛くなりにくくなるので、もう30年近く通っています。週に1回ぐらいのペースで通っているのですが、休みがなくてプールに行けないと、腰から悲鳴が聞こえてきます(笑)。水中での全身運動は筋肉がほぐれて体がリラックスしますので、お勧めですよ。プールには私より年上の方々がたくさんいますので、長く続ける励みになります。
時間ができたらやってみたいことは何ですか?
学生時代から興味のあった語学をまた勉強したいですし、絵を描くことも始めたいですね。リタイア後にできればいいなと思っているのですが、獣医師の中には、仕事を一生涯続ける人が多いんです。若い先生から今の大学で行っている授業の内容を聞いたり、感じている疑問や質問を受けたり、千葉の分院で働いている長男からの相談を聞いたりしているととても勉強になります。若い人たちが入ってがんばってくれていることが、私にとって大きなプラスになっています。こうして刺激を受けながら、充実した毎日を送っているので、リタイアを考えず、できる限り続けていきたいと思うんでしょうね。
最後に、ペットを飼っている方にアドバイスをお願いします。
いつもと違うことをいち早く気付くために、アンテナを張っておくことが大切です。ペットを1日1回抱っこしてあげてください。大型犬の場合はさすってあげてください。そうやって体に変化がないかをチェックしてもらいたいですね。変化というと、「調子が悪くないか」と考えがちですが、「いつもよりとっても元気でご飯を良く食べる」といった、調子が良すぎるように見える変化も一つのシグナルなんですよ。何かの病気の初期段階ということが考えられます。飼い主さんの中には「こんなことで来てもよかったんでしょうか。ちょっと相談するには恥ずかしいのですが」とおっしゃる方がいますが、どんなことでもいいので、相談してくださいね。ペットを一番見ているのは飼い主さんですので、毎日の生活の中で飼い主さんが気付く内容はとても重要なんです。それが病気の初期症状を的確にとらえていることが多いんです。気が付いたことをカレンダーの端に書き込むことを習慣にすることもいいですね。病院で聞きたいことを思いついたらメモに残しておく方もいらっしゃいます。気になることをすべて病院で質問して、疑問や不安を解決して帰ってほしいですね。