栗原正樹 院長の独自取材記事
クリハラペットクリニック
(横浜市戸塚区/東戸塚駅)
最終更新日: 2023/01/22
JR東戸塚駅からバスに乗り「公園前」の停留所を降りてすぐ大通りの開けた場所に「クリハラペットクリニック」はある。扉を入ると雑誌やレコードが置かれ、まるでカフェのような空間が広がる。栗原正樹院長は、ペットとの散歩途中にふらっと立ち寄れる休憩所として利用してほしいという思いから、この待合室を作ったそうだ。広々とした院内には診察室・処置室・手術室の他に、14頭まで受け入れ可能な犬・猫の入院施設も完備されている。“気軽に話せるアットホームな動物病院”をコンセプトに掲げる栗原院長は、患者の目線で行う診療を続け、ペットを飼っている近隣住民の強い味方となっている。開院以来10年間東戸塚でペットの健康を守り続けてきた栗原院長にお話を伺った。 (取材日2012年3月22日)
休診日や夜中も、急患に対応可能な動物病院
では、まず獣医師を目指したきっかけから教えてください。
小さい頃に家で飼っていたリスが病気になって治らなかったことがありまして、そのとき自分で治してあげられたらどんなにいいかと思ったのがきっかけです。犬や猫も大好きだったんですが、環境的に飼えなかったので余計に動物が好きになっていったのかもしれません。野生動物の保護に携わりたいと麻布大学の獣医学部に入りましたが、勉強していくうちに保護した動物にも治療が必要だと思うようになり、病気を治せる獣医師になろうと決めたんです。大学で一番忙しい外科研究室に入りまして、大学病院で先生たちの雑用に明け暮れていました。当番で早朝や深夜になることもありましたし、手術を受けた動物がいれば泊まり込みで面倒を見ないといけないので、大学の近くに部屋を借りていました。無我夢中の毎日でしたが、命に関わる仕事ですので、家に帰れないことも夜中に呼ばれることも、当たり前なんです。そんな生活を4年以上続けましたので、忍耐力はつきましたね。
子どもの頃はどんなお子さんでしたか?
僕は中学生まで父の転勤で、岡山県や鹿児島県に住んでいたんです。いろいろなことに興味がある好奇心旺盛な子どもでした。小さい頃から水泳をやっていて、選手コースに入っていたので、中学生まで朝・昼・晩と水泳ばかりしていましたね。神奈川に引っ越して来たのは高校生になってからで、渋谷や原宿という、昔の僕にとっては夢の世界だった場所が身近にあることがうれしくて、毎日楽しかったですね。その頃からバンドをやったり、バイクにハマッたんです。中学生までは優等生で通っていたので、両親は突然の変貌にびっくりしていたと思います(笑)。遊んでばかりだったかというとそうでもなく、僕の通っていた高校は優秀な生徒がたくさんいたので、友人たちに引っ張られながら勉強した結果、希望の大学に合格することができたんです。
東戸塚に開院した理由をお聞かせください。
実家が横浜なので、この辺りはほとんど地元みたいな感覚で開業しました。前の道はわんちゃんの散歩道だし、広くて診療スペースも十分にとれそうだったので、自分の理想のクリニックを開けると思いました。僕はこのクリニックを敷居の低い、病院らしくない病院にしたかったんです。同世代のデザイナーさんにお願いしたらいろいろなアイデアが出てきて、海をイメージしたおしゃれなカフェっぽい院内に仕上がりました。病院に来ていることを忘れていただくためにも、置いてある雑誌や貼ってあるポスターも病院関連のものはありません。カフェに置いてありそうな雑誌や、好きなレコードを集めて置いてあるんですよ。それに、このビルの上に自宅がありますので、休診日や夜に電話がかかってきてもすぐに対応できてとても便利ですね。
本音で話し合うことで、飼い主との信頼関係を築いていく
こちらではどんな種類の動物を受け入れているのでしょうか?
現在来ていただいている患者さんは犬や猫が多いですが、他にもフェレットやウサギ、ハムスターなどのエキゾチック系の動物も診療しています。エキゾチック系の中ではフェレットが得意ですね。当院には、手術や入院ができる設備があり、最大で犬が8頭、猫が6頭入院できるようになってます。患者さんはこの地域にお住まいの方が多いですね。お友達同士で来ていただいたり、この病院で仲良くなられたという方もいるみたいなんですよ。開業してから10年近く経ちますので、通っていただいていているペットの特徴はだいたい覚えていますし、今では顔を見ればその子の名前がわかるようになりました。外でお散歩している子を見ても誰だかわかりますよ。
先生の治療方針をお聞かせください。
患者さんと僕の立ち場を対等にし、壁を作らないということです。良いことも悪いことも本音で話し、包み隠さずお互い言いづらいことも話し合った上で、当院での治療を選ぶか選ばないか、選択は患者さんに委ねようという方針です。もう一つは、来ていただいた患者さんを自分だけで囲わないことです。もちろん、治すために100%の努力しますが、動物医療も日々進歩していますので、僕には難しい症例ならそのことを黙ってないでお話しして、大学病院を紹介したり、信頼する先輩にお願いしたり、同期の専門分野の先生に当院まで来ていただくこともあります。僕は、最終的にその子の病気が治るなら、どこの病院でもいいと思っているんですよ。治るための手段なら何でもやっていきましょう、という考えなんです。
動物を診療するとき気をつけていることはありますか?
動物を診るというのは、かわいいと思うだけじゃできません。気を抜くと噛まれてケガをしかねませんし、僕が噛まれるのは仕方ないとしても、ナース達が噛まれたりしたら困るので、一歩、診療室に入るとピリピリしますよ。普段、皆さんが見ているペットと、僕が相手にしているペットは同じ子であってもまったく別なんです。家にいるときとは不安や緊張度が全然違うので、その不安を取り除いてからその子に必要な治療を全力でやりたいです。彼らには、僕が治療する人だということはわかりませんから、痛いことや嫌なことをされたら全力で抵抗してきますので、覚悟の闘いなんですよ。でも、すごく苦しんでいた子が元気になった姿を見ると、その苦労は吹っ飛びますね。病気の大小に関わらず、治療した子のことは全部覚えています。僕は神様ではないので、全ての病気を治すことはできませんが、最後に飼い主さんが納得して「ありがとう」と言っていただけると、この仕事に就いてよかったと思いますね。
ペットが集う憩いの場で気軽に健康チェックを
休日の過ごし方や趣味についてお聞かせください。
去年まで、終日休みという日はほとんどなかったんですよ。最近は、他の先生が非常勤で来てくれていますので、少し自分の時間が作れるようになりました。休診日もよく勉強会があるので、そこに参加していますが、先日は休みが取れたので、箱根の温泉に行って息抜きしてきました。ダイビングも好きで、昔、獣医師仲間と集まって海に行ったこともありました。いつかまとまった休みが取れたら、海外のきれいな海でダイビングをしたいですね。バイクやギターも趣味だったんですが、今は、なかなか時間がないので、もっぱらコレクションしたギターを眺めて満足してます。
今後の展望をお聞かせください。
病気ではなくても気軽に入ってきていただいて、相談しやすい病院にしたいですね。普段から病院に来ることが習慣になってくれたらいいなと思って、最近、シャンプーを始めました。シャンプーの後、耳掃除や全身のチェックをしますので、ついでに健康のチェックができるという感覚で来ていただきたいです。カフェみたいにペットが集う憩いの場所だと思って、話しに来ていただくだけでもかまいません。このクリニックを通してわんちゃん友達を増やしてもらえればうれしいですね。時間があるときは患者さんに話しかけていただけるように、外でタバコを吸っているんですよ。すると、散歩途中の方が声をかけてくれるんです。そんなふうに、気軽に立ち寄れる病院になっていけばいいですね。
では、最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
僕は、患者さんに早期発見・早期治療へのご協力をお願いしています。早く見つけてすぐに治療すれば投薬だけで済み、動物の負担も少ないのですが、悪化してからの治療ですと入院が必要になる場合もありますので、飼い主さんも動物もかわいそうなんです。ちょっとでもおかしいと思ったら、ためらわずに聞いてください。病院に来るのはちょっと気が引けるという方は電話でもかまいません。人間と違って動物は話せないので、様子見はしないほうがいいです。一般の方が大丈夫だと判断して、大丈夫じゃないことは多いですし、以前は大丈夫だったから今回も大丈夫という判断は、手遅れを招く可能性がありますので気をつけていただきたいです。そして、見た目が健康だからといって内臓も健康だとは限りませんので、1年に1回必ず検査を受けるようにしてください。