大塚克彦 院長の独自取材記事
やよい台動物病院
(横浜市泉区/弥生台駅)
最終更新日: 2023/01/22
弥生台駅から徒歩4分という便利なアクセスで、車4台が入れる駐車場を完備する「やよい台動物病院」。1992年の開業以来、地域のホームドクターとして親しまれ、近隣のペット愛好家から厚い信頼を得ているクリニックだ。院長の大塚克彦先生は落ち着いた物腰が印象的。「小さな頃から動物好き。動物と関わり、飼い主さんにも喜んでもらえる獣医師という仕事には、とてもやりがいを感じています」と語る。休診日は木曜日のみで土日祝日の診療も受け付けているので、いざというときにも心強い。「休みはほとんどありませんが、飼っている猫と過ごす時間が唯一の楽しみ」という大塚先生に動物医療への熱い思いを伺った。 (取材日2013年9月7日)
小さい頃からの動物好きが高じて獣医師を志す
先生が獣医師になられたきっかけ、そしてこの地に開業するまでの経緯についてお聞かせください。
小さい頃から動物が好きだったということがまず第一でしょうね。また父が自営の設計士だったので、仕事というものは会社勤めではなく自分でやるものという意識が自然にあったのだと思います。じゃあ、自分で何をやるのかという時に浮かんだのが獣医師という仕事。動物と関わり、さらに人に喜んでもらえる素晴らしい職業だなと思い、この仕事を本格的に志すようになりました。出身は東京ですが、大学時代は青森で過ごしました。卒業後東京に戻り、いくつかの動物病院に勤務しながら経験を積んできました。開業にあたっては都内にこだわらず、どこか良い場所はないかと探した結果、環境の良いこの地を選びました。それが1992年のことですから、もう23年もたってしまったのですね。最初はテナントに入ってやっていたのですが、10年ほど前に自宅を兼ねたこの建物に移転してきました。
クリニックの特徴について教えていただけますか。
主に犬、猫、小鳥、ハムスターを対象に、内科一般と各種の外科手術をメインに行っています。その他、各種検査や避妊・去勢手術や歯科的な処置も行います。犬と猫の割合としては、地域柄でしょうか、7対3で犬のほうが多いですね。
診療だけでなく、トリミングもやっていらっしゃるのですね。
最近はトリミングをやらない動物病院も多いようですが、私は以前勤めていたところがいずれもトリミングをやっていたので、開業時からごく自然にトリミングも引き受けることにしました。シャンプーやトリミングをすることで清潔に保つだけでなく、皮膚の状態をチェックすることができます。とくに毛足の長い動物は、皮膚に何か問題があっても隠れてしまい、意外に気づかないことがあるのです。最近の傾向として、動物にもアレルギーやアトピーの症状が見られるようになってきました。直接命に関わることはほとんどないかもしれませんが、中には腫瘍や免疫など原因がはっきりしないトラブルが隠れている可能性も0ではありません。その点、ある程度定期的にトリミングをしていれば、早期に発見できるので安心だと思います。
最近は、日本でもペットにマイクロチップを装着する飼い主が増えていると聞きました。
マイクロチップは、動物の安全で確実な個体識別(身元証明)の方法として有効です。最近はペットショップで購入する段階ですでに装着されていることも多いようですし、当院でも取り扱っています。直径2mm程度の小さな円筒形を注射器で体内に入れるのですが、痛みは普通の注射と同じ程度しか感じません。万一迷子になった時のためにと、希望される飼い主さんも多いですね。ただ、私が見聞きする範囲では、今のところマイクロチップが迷子探しに役立った例はありません。おそらくチップを入れるくらい意識の高い方は、日常的に手厚くケアをしているので、ペットがいなくなるということ自体がないのだと思います。
飼い主とのコミュニケーションを重視し、望まれる動物医療を模索
先生の大学時代には、どのような研究テーマをされていたのですか?
牛を対象として、尿細管といって腎臓のある特定の部位が壊れる指標のマーカーを調べる研究をしていました。獣医学のなかでもかなりニッチな分野ですが、青森という酪農が盛んな地域ですから、私の指導教授の先生が牛や馬などの大動物を主に診ていたのです。私も卒業後はその経験を生かして牛や馬の獣医師になるという道もありましたが、もともと小動物を扱いたいという夢があったので、今の道に進みました。
動物医療に関する先生のモットーをお聞かせください。
いろいろな方がいろいろな思いでペットを飼っています。動物に対する思い、ペットの病気に対する考え方は本当にさまざまなので、そこを正確に読み取ることが大事だと思います。みんながみんな人間と同じような治療を望むわけではないので、獣医師としての考えにこだわりすぎると話がこじれてしまうこともあるんです。飼い主さんが希望する治療内容は本当にさまざまで、かといってここはやはり動物病院ですから、少しでもその動物に対して役に立つことをやってあげないといけない。そのバランスをとることには、とても気を使っています。
先生の得意な分野は何でしょう?
力を入れて勉強しているのは皮膚科、腫瘍科、眼科、外科です。定期的に専門の先生たちと一緒に勉強会をしています。私自身は日本獣医皮膚科学会に所属しています。悪性の腫瘍、つまりがんに関しては最近とくに増えていて、これはある意味で現代病といえます。その背景にはふたつの理由があって、ひとつはペットの寿命が延びたこと。以前はがんにかかるほどの年齢まで長生きしていなかったのが、寿命が延びたことによって発症する例が増えたわけです。もうひとつは獣医側の診断技術があがったことです。以前ならば発見できなかったがんを正確に診断できるようになったことも、症例が増えた原因だと言えるでしょう。ですからある程度の年齢になったら、人間同様定期的な検査を受けることをお勧めしています。
寿命が長くなったというお話ですが、どの程度変化していますか?
動物の種類によってももちろん違いますが、実感としては、一昔前に比べて犬や猫で5年くらい延びたのではないでしょうか。最大の要因はペットフードの進化でしょうね。犬や猫の栄養学も確立されつつあって、今の時点ではこれがベストだろうというものが市販されているキャットフードやドッグフードです。栄養バランスの面からも保存性の面からも、あるいはコストの面からもこれを食べさせるのが一番良いと思います。もちろん、それ以外の食べ物を絶対にあげてはいけないということではありません。たとえば、自分の食べているものを少し分けてあげるのがすごく楽しみとされている人もいるでしょう。それを否定はしませんし、そのことによってペットとの関係を築いているのであれば、それもいいと思います。ただ量のことは考えてあげないといけません。小型犬なら体重は人間の約10分の1。つまり人間が食べる量の10分の1をあげても、人間の食事量に匹敵してしまうわけです。その辺のことは考える必要があるでしょうね。
動物たちと過ごすかけがえのない時間をより豊かに
お休みの日はどのような過ごし方をされていますか?
猫を一匹飼っているので、一緒に遊ぶのがささやかな楽しみです。猫独特の仕草が可愛くて、見ているだけで癒されます。当院は木曜日が休診日ですが、入院している子もいるので、休みといってもやることがないわけではありません。以前はほかの獣医師の先生に手伝ってもらっていましたが、今はひとりでやっています。ですから、まとまった休暇をとることはほぼ不可能ですが、仕事とはそういうものだと思っています。
ペットにとってのホームドクターを持つ意味は、どんなところにあるとお考えですか?
人間も同様ですけれど、体の状態の変化を把握することは、健康を保つうえでとても重要です。たとえば「いつもと比べると、元気がない」とか、逆に「ここがちょっと弱いけれど、いつもだいたいこんな調子なので気にするほどではない」ということが継続して診ることによってわかる。ちょっとの変化でも早く気がついてあげられるというメリットがあるわけですね。それは飼い主さんにとっても、大きな安心につながるのではないでしょうか。
最後にペットを飼っている方へのメッセージをお願いします。
動物たちと一緒にいる時間を大切にしてあげてほしい、ということですね。ペットといる時間というのは、人間にとってもとても大事なのですが、永久に続くわけではありません。最初はちょっとしたきっかけでペットを飼い始め、やがて家族同様の存在になる。ところが時間がたつにしたがって、たとえば犬の散歩をさぼったり、猫と遊んであげなくなったりしがちです。彼らは人間と遊ぶことが大好きで、そしてそれは動物の年齢とは関係ないことですから、いつまでたってもスキンシップや声掛けを忘れないであげてください。そして当院では、飼い主さんがいつまでも動物たちと一緒に楽しく過ごせるよう、お手伝いをさせていただければと思います。