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林原 亮 院長の独自取材記事

はやしばら動物病院

(川崎市多摩区/生田駅)

最終更新日: 2023/01/22

川崎市多摩区の住宅地にある「はやしばら動物病院」。開院以来6年目を迎える地元に愛される動物病院だ。木の温もりと観葉植物の緑に包まれた待合室の壁には、ドクターとクリニックの愛らしいイラストが飾られている。「この絵はお客さんが開院祝いにプレゼントしてくれたんですよ」と笑顔をこぼすのは林原亮院長。若々しく優しい瞳、温かい笑顔が素敵なドクターだ。「動物に触れているだけで幸せ」という動物好きな林原院長の診療はインフォームド・コンセントを重視し、動物と家族みんなが幸せで楽しく生活できることを目標としている。「どんな症例でも診られる町医者になりたい」という林原院長に獣医師になったきっかけや診療のモットー、大好きな自然についてなど、幅広いテーマで話を聞いた。 (取材日2016年7月26日)

アットホームで動物に好かれる病院でありたい

どうして獣医師をめざそうと思われたのですか?

小さい頃から動物が好きだったんですよ。幼稚園の頃から犬を飼っていて、いつも一緒でとてもかわいがっていました。獣医師になりたいと思ったのは小学生の時で、当時の文集にも将来の夢は獣医師と書いていました。きっと両親に「動物に関われる仕事って何があるの?」と聞いたときに「獣医さんだよ」と教えてもらって「じゃあ、なりたいな」というくらいの単純な気持ちだったんでしょうね。でも中学、高校時代にはその夢をすっかり忘れてしまっていたんです。大学受験でも、獣医学とはまったく関係のない学部を受験していました。しかし一浪した秋に、子どもの頃から飼っていた犬が死んでしまって。そのときにやっと思い出したんですよ。「自分は獣医さんになりたかったんだ」ってね。それでそこから進路を変更して、獣医学部を受験することにしたんです。飼っていた犬が、獣医師になりたかった夢を僕に思い出させてくれたのかもしれませんね。

そして長年慣れ親しんだ地元で開業されたのですね。

生まれてすぐにこの地域に引っ越してきてから、大学で青森県に行くまで、ずっとこの町に住んでいました。学校の友人や自分の両親の知り合いもたくさんいるので、ふらりと立ち寄ってくれる飼い主さんが多いですよ。ご近所の主婦仲間の皆さんがここのクリニックを待ち合わせ場所にして、ペットを連れて集まっていることも多いんです(笑)。そんなふうにアットホームで気軽に立ち寄れる雰囲気が理想なので、僕としてもたいへんうれしいですね。待合室に飾ってある絵は、飼い主さんでプロのイラストレーターの方が開院のときに描いてくださったんです。真ん中のドクターが僕で、僕が飼っている犬とその方が飼っている猫と一緒にいる風景なんですよ。この絵をいただいたときは感激しましたね。

診療におけるモットーはありますか?

僕は動物たちに嫌な思いをしてほしくないのですが、残念なことに動物病院が動物に好かれることはありません。動物たちがここに来ると痛いことをされる、嫌なことをされると思うようになると、来ただけで震えたり、避けて通るようになるんです。それは動物たちも僕もお互いにハッピーではないですよね。だから僕の目標は「動物たちに好かれるクリニックになること」です。診察台の上に乗っても尻尾を振ってくれるような、そんな親しい関係が理想ですね。クリニックの玄関ドアの下の部分が白くなっていますが、実は犬たちが鼻をすり付けた跡なんです。休診日に通りかかって中をのぞいてくれているのでしょうね。治療が終わった後も動物たちが帰りたくないそぶりを見せてくれるので、「このクリニックが気に入ってくれたのかな」と、とってもうれしいんですよ。

動物たちの生涯を診られる究極の「町医者」をめざして

先生のお話から動物への深い愛情が伝わってきます

基本的に僕はただの動物好きなんですよ。だから獣医師になりたての頃は、動物の死がすごくつらくて、自分は獣医師に向いていないのではないかと悩んだ時期もありました。単に動物と触れ合うのが好きだったら、ほかの道もあるのではないかと迷いましたね。でも、6年間勉強してきたことを無駄にしたくはない。だったら、生まれたところから死ぬところまですべてを診られる獣医師になろうと思いました。得意な専門分野を作るのではなく、どんな症状でも診てあげられるホームドクターになりたい。そして、もうひとつの家のように思ってもらえるクリニックでありたいと思っています。だから僕の理想は「究極の町医者」なんですよ。できる限り一人ひとりの患者さんを大切にして診ていきたいと思っています。

診療に際して心がけていることはありますか?

飼い主さんへのインフォームド・コンセントを徹底しています。動物たちだって年を取れば、複数の病気に同時にかかっていることも珍しくありません。それを30分や1時間で説明されて、その場ですべて理解することは難しいと思うんですよ。そういう時には一度ご自宅に戻っていただいて、じっくりと考え直したり、インターネットなどで調べた後でもう一度聞きに来ていただいたり、お電話をいただくなど、時間をかけてしっかりと理解していただくように努めています。今後の治療方針や費用などにも大きく関わってくるので、お話ししたことをきちんと理解していただくことは非常に重要ですね。また専門的な用語で説明されてもわかりづらいと思うので噛み砕いて説明したり、イラストやメモに書いてお渡しするなどの工夫をしています。わからないことがあったら遠慮せずにどんどん聞いていただきたいですね。

ご家族とのコミュニケーションも大事にしているそうですね。

動物たちが、どんな環境でどのような生活を送っているのかを知ることは治療のヒントを得るための大切な情報です。診療中にそのようなお話をじっくりと伺うことは難しいので、診療時間以外にも飼い主さんとよくお話をして、できるだけ多くの情報を引き出しておくことを心がけています。そのような情報は動物たちを診療しているだけではなかなか気がつかないことです。ですから、動物たちの体のことだけでなく、ご家族や周りの環境を把握しておくことはとても重要なことなんですよ。たまに飼い主さんから、「先生の話は長過ぎる」なんてことを言われてしまうこともありますけれどね(笑)。

より良い獣医療を提供するため常に学ぶ姿勢を忘れない

獣医師になっていちばん良かったと感じるのはどんなときですか?

好きなことを仕事にできたことが幸せですね。診療のたび、動物に触っていられるだけで「ああ、幸せだなあ」と思うんですよ。僕は動物のために治療をしていますが、動物たちから貰っているものもたくさんあります。病気になった動物たちはとてもつらそうで、その姿に胸が痛みます。だからこそ、病気から回復し、みんなが元気で楽しく過ごすことができるよう一生懸命に治療に取り組みたいと思っています。そのためには常に勉強が欠かせません。町医者はどんな病気でも診られなければならないし、専門医に引き継ぐにしても知識がなければ診断ができませんからね。

先生は自然がたいへんお好きだそうですね。

父の田舎が鳥取県で自然豊かなところだったので、小さい頃から海に潜ったり、自然のなかで遊ぶことが多かったんですよ。父は脚本家の倉本聰氏と共に、北海道の「富良野自然塾」を立ち上げたメンバーで、根っからの自然愛好者。僕の自然好きも父の血を受け継いでいるんでしょうね。6年前には小笠原諸島の海に潜ってイルカやザトウクジラを間近に見る体験をしました。あるとき、友人の誘いでイルカやクジラをテーマに制作している彫刻家の作品展を見に行ったのですが、とても気に入ってしまってその場で作品を購入したんです。その後、友人の紹介でその彫刻家の方と知り合いになって、一緒に小笠原諸島に潜りに行ったんですよ。本物の大自然の中で、野生のイルカやクジラに触れ合うということはすごい体験で、人生観が変わりました。小笠原に住めるものなら住みたいとすら思いますね。

今後の展望を聞かせてください。

これまでのスタイルを大切にしながら、身近なホームドクターでありたいと考えています。動物たちとご家族みんながハッピーであることが僕の一番の目標。そんなご家族がこれからもどんどん増えていってくれるとうれしいですね。最近は人間も動物も「看取り」がとても重要視されていますが、そこは僕も昔から考えていたところでだったので、そういったさまざまな側面から動物たちの生涯を見守るお手伝いができるよう、これからも精一杯の努力で診療に取り組んでいきたいと思っています。

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