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専門医療機関での早期治療が鍵を握る 犬と猫の脳炎

アルフペットクリニック

(川崎市川崎区/川崎新町駅)

最終更新日: 2021/10/12

犬や猫が体をうまく動かせない症状が現れた時、疑われる病気として脳炎がある。脳に炎症が起きるこの疾患は、生命に関わる重い病気でありながら、高度化する動物医療においても未だに原因が解明されておらず、治療法も確立されていない。大切なペットがこの病気に侵されてしまった時、飼い主が感じる不安は簡単に推し量れるものではない。「アルフペットクリニック」の松葉洋宗院長によると、脳炎は難しい病気ではあるが適切な治療によってこれまで通りの生活が送ることができるという。高度医療施設で長年診療し、脳疾患について臨床経験豊富な松葉院長に、脳炎を悪化させない秘訣や治療法など飼い主が知っておくべきことについて教えていただいた。(取材日2012年12月14日)

原因不明で予防も困難な脳炎。MRI検査で正確な診断が可能に。

  • Q.まずは、この病気の特徴から教えてください。

    A.

    ▲高度医療施設で脳炎をはじめとする重症症例を多数診療してきた松葉院長

    脳炎は細菌やウィルス・真菌・原虫などが感染して生じる脳炎と、特発性(原因不明だが免疫異常が原因と推測されている)脳炎の2つに大きく分けられます。感染性の脳炎の例としては犬で起こる感染性の脳炎で犬ジステンバーウィルス性脳炎がありますが、現在はワクチンの普及や室内飼いになった事により、ほとんど見られなくなりました。また、猫では猫伝染性腹膜炎(FIP)ウィルス感染の脳炎が有名です。現在、脳炎の多くは特発性(免疫関連性と推測されている)のもので、壊死性脳炎(NME)・壊死性灰白質性脳炎(NLE)・肉芽腫性髄膜脳炎(GME)などが挙げられます。いずれも原因が解明されていないため、予防や根治治療が難しいのが実情です。また症状は障害を受けた脳の箇所によって異なり、発作や行動異常、記憶障害や視覚の衰え、四肢のふらつきや歩様異常などが生じます。
  • Q.発見が難しい病気なのでしょうか?

    A.

    ▲松葉院長の診療は原則予約制。待ち時間による動物へのストレスにも配慮

    脳炎になると、脳実質が炎症を起こしてさらに脳が腫れて周囲を圧迫する、脳脊髄液の循環が悪くなり水頭症を起こすなど複数の障害を出すことが多いですね。そのため多くの場合、症状は1つだけでなく、同時に2〜3つの症状が出ます。また障害された脳の箇所によって眼の動きがおかしい、歩き方がおかしいなど特有の症状があります。脳の中で起こっていることは、レントゲン検査や血液検査では異常を見つけることは出来ません。実際にMRI検査や神経学的検査などを行い、脳神経疾患を治療してきた獣医師でなければ的確な診断や治療は困難でしょう。そのため脳神経専門の獣医師であればすぐに脳に疾患があるとわかる症例でも、一般的には見逃されてしまうことが少なくありません。動物医療も細分化・専門化が進んでいます。納得のいく説明を受けられなかった場合や、治療を受けていても症状が続く時には、専門病院や専門医を探して相談することをおすすめします。
  • Q.どのような治療法がありますか?

    A.

    ▲アルフペットクリニックでは最新機器を導入、ICUも完備

    細菌感染性の脳炎については治癒の可能性があるのですが、特発性脳炎は一度発症すると完治させることが難しいと言えます。外から脳を圧迫することで障害を及ぼしているタイプの脳腫瘍は手術によって病変部位を除去すると脳の機能を回復することが可能ですが、特発性脳炎のように脳自体に生じた炎症は複数個所で起こる事も多く、手術で病変部を取り除くと脳の機能に障害を及ぼし、最悪の場合は植物状態になることもあります。よって、通常は手術によるリスクの高さを避けて、脳を切らずに内科的な対症療法を行って症状をコントロールします。具体的には、放射線治療法、抗ガン剤による免疫抑制、臓器移植などにも使用されるサイクロスポリンという免疫抑制剤、免疫抑制と炎症を抑える効果があるステロイド投与などが主だった治療法です。サイクロスポリンは主に肉芽腫髄膜脳炎(GME)には効果を発揮するという研究報告も近年多くされており、臨床現場でも使用することが多くなっています。症状やMRI検査の所見によってはこれらの治療を組み合わせ、内科治療を行います。
  • Q.脳炎は増加傾向にあるのでしょうか。

    A.

    ▲隣接のコインパーキング代を医院が負担するサービスも。遠方からの来院でも安心

    この疾患は頻繁にみられる病気ではありません。一般のクリニックでは1年に1匹いるかいないかという珍しい病気です。個人的な見解としては、脳炎そのものが増加しているのではなく、MRIなどにより詳しい検査ができるようになり、脳炎が発見されるケースが増加していると考えます。また一方で、増えているとすると理由は不明ですが、脳炎を発症しやすい小型犬種がよく飼われるようになったことも影響があるかもしれません。この病気は、猫は種差がほとんどないのですが、犬はパグ・チワワ・トイプードル・ミニチュアダックス・フレンチブルドッグなど小型犬に多い病気です。性差はなく、すべての年齢で発症します。
  • Q.飼い主にできることがあれば教えてください。

    A.

    ▲気がかりなことがあれば、あたたかい人柄の松葉院長に相談してみよう

    飼い主さんに気を付けていただきたいことは、発作が起きる、歩くと左右どちらかに寄ってしまう、目が見えていない、口が麻痺してうまくごはんが食べられないなど、いつもと違う様子を見逃さないことです。すぐにかかりつけ医に相談しても、様子をみましょうと抗生剤を処方されて経過観察だったり、発作が起きるからてんかんだと診断されて、てんかん発作を抑える薬による治療だけを行って病気が進行してしまった子を何匹もみてきました。かかりつけの動物病院で診察を受けて、視診や触診・聴診・血液検査やレントゲン検査をした上でも原因不明、脳の病気かもしれないということであれば、早めに脳神経に特化している獣医師を探す、あるいは大学病院などの高度医療施設を受診することが大切です。

動物病院からのメッセージ

脳炎は難しい病気ですから、そうとわかった時の飼い主さんの不安や悲しみは言葉にできないものがあります。一方で特発性脳炎は完治しない病気ではありますが、対症療法を続けることで普通に生活している子もたくさんいます。様子を見ましょうと言われても、そばにいて一番よく様子を見ている飼い主さんがおかしいと思うのであれば、早めに専門の医療機関を探してください。脳神経疾患の臨床経験豊富な獣医師のクリニックは、まだまだ数は少ないですが、間違いなく動物医療は進化しています。納得のいく治療を受けられるまで、あきらめないでください。

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