木佐貫敬 院長の独自取材記事
Racoon Animal Clinic
(横浜市港北区/新横浜駅)
最終更新日: 2023/01/22
オーストラリア、シンガポール、アメリカで10年以上、獣医学の研究と臨床に携わってきた「ラクーンアニマルクリニック」木佐貫敬院長。海外でのは虫類や鳥類などエキゾチック動物を含む豊富な診療経験を生かし、幅広い動物の診療を行う獣医師だ。動物にも飼い主にも幸せなベストな治療方法を提供することをモットーに、日々真摯に診療に携わる。そして、よりよい治療法、より幅広い動物への対応を求めて、海外の専門医とのネットワークを通じて症例のアドバイスを受けたり、国内外の文献をリサーチするなど研鑽を惜しまない。院名の“ラクーン”は、木佐貫(きさぬき)という名前から子ども時代のあだ名がタヌキ(ラクーンドッグ)であったことに由来する。そんなウィットに富んだ一面も持つ木佐貫院長。診察する動物が可愛くなり、自分でも飼いたくなって困るという根っからの動物好きな、心優しいドクターだ。 (取材日2013年11月6日)
海外での経験を生かして幅広い動物を診療する国際派ドクター
獣医師を志したきっかけや開業までの経緯を教えてください。
子どもの頃から動物が好きで、小学校の時は飼育係、その延長で自然に獣医学部に進みました。しかし大学に入ってから進路に悩み、獣医になる決心がつかないままに商社に入社しました。しかし働き始めてみると、やはり臨床に携わりたいという気持ちが強まったので退職してオーストラリアに留学し、インターンを含めて3年間滞在しました。次にアジアでも働きたかったのでシンガポールの動物病院に勤務し、ここでは、は虫類の診療も経験しました。そして、偶然グリーンカードに当たったので渡米し、動物病院に勤務しました。アメリカでの診療経験はとても有意義でしたが、拳銃のないところで暮らしたいと思うようになったのと、私は長男で両親も高齢になってきたこともあり、2011年に帰国し当院を開業しました。院名は、ラクーンドッグ(タヌキ)に因みます。名字が木佐貫(きさぬき)で、あだ名がタヌキだったのです(笑)。
新横浜はどんな土地柄ですか。
マンションなどが増え、住んでいる人もバラエティ豊かですね。私の子どもの頃の記憶では、新横浜は原っぱのイメージだったので、こんなふうに開発されているとは思いませんでした。新幹線の駅がありますから、人の出入りも激しく関西方面などから転居してきた方も多いですね。この場所はたまたま巡り合ったのですが、いいところだと思っています。近くに日産スタジアムもあり芝生の広がっている地域が多いので、飼い主さん同士の集まりもよくあるようです。マンションもペット可の所が比較的多いのも特徴ですね。動物を飼いやすい環境が整っている土地だと思います。
クリニックの特徴を教えてください。
まず海外生活が長かったので英語で対応できること。徐々に外国人の飼い主さんも増えてきました。また犬、猫、小動物、鳥類、は虫類などのエキゾチックと呼ばれる動物など、基本的にはどんな動物でも診ます。エキゾチック類は情報が少ないので、海外の専門医とのネットワークやインターネットなどで最新情報を集めています。は虫類で最近目立つのは、フトアゴヒゲトカゲやヒョウモントカゲモドキ。カメやにしきヘビも診ます。飼い主さんは横浜市内の方が多いですが、エキゾチック類を扱うクリニックは少ないので、遠方の方からお電話などでアドバイスを求められることもあります。また高齢の動物にも適応があれば麻酔をかけて外科治療を行いますので、複雑な症例の相談や、セカンドオピニオンの依頼が多いのも特徴です。
常に動物と飼い主の、生活の質の向上を心がける
診療される上で大切にされていることは。
患者である動物、飼い主さん、そして医療者である我々の3つの視点から考えて、何がいちばんベストかを考えて治療を選択します。たとえば、動物にとって第一選択と考えられる治療であっても、飼い主さんがご自分の健康を犠牲にして看病する必要がある治療は、ベストだとは言えません。飼い主さんの負担も考え、バランスをとってよりよい方向を考えています。獣医師は、その動物の病気に関わる人間全体をうまくまとめる役割も必要だと考えているのです。また、鳥インフルエンザなど動物から人間に感染する病気もあるので、動物に関わる人間の健康も含めてトータルで考えることが求められます。例えば道で倒れている動物を可哀想だからと安易に助けてはいけないこともあり、センチメンタリティでなく、常に客観的に考えるべきだと肝に銘じています。
日本人と外国人の違いを感じますか。
ペットを大切にされる気持ちには違いはないと思いますが、日本では小型犬が多いことや、人気の種類に集中する傾向がありますね。文化が違うなと感じるのは、重症の場合、外国では比較的フランクに安楽死のことも話ができましたが、日本では話すことさえ拒否される方が多いことですね。外国人は何もかも擬人化せず「動物には動物の世界がある」とどこかで一線を画す傾向があります。ですから動物が重篤になったときも「悲しいが我々にできるのはここまで」とリアリティを持って考える人が多いのです。どちらがよいか一概には言えませんが、私としては、動物も飼い主さんもできるだけ幸せであることを大切に、治療をご提案することを心がけています。
忘れられないエピソードがありますか。
アメリカのフロリダで、かなり重篤な犬の手術を手がけたことがありました。私は途中で帰国しましたが、その後抗がん剤治療も受け半年ぐらい元気に過ごしたとのことで、飼い主さんから、共にビーチを歩いたりアイスクリームを食べたり、充実した6か月間を与えてくれたと感謝されました。その方とは今でも連絡を取り合っていますが、本当の意味の“生活の質”という考え方に触れた気がしましたね。その経験から、期間や量の問題でなく、動物と飼い主さんにとっての、真の生活の質というものを考えなければならないと思っています。
地域に貢献する便利な動物病院をめざして
お忙しい毎日ですが、プライベートな時間の過ごし方は?
開業してからは休日がない状態ですから、少し時間ができればジムに行ったり、壁を登るボルダリングなどで体を動かすようにしています。私自身のペットは、今は世話をする時間がとれないのでいないのですが、飼ってみたい動物はたくさんいるんです。犬も猫も、は虫類も飼いたいし、最近ハムスターを診療することが多いので可愛くて飼いたくなります。海外では大型犬を診療することが多かったので、開業当初は小型犬が少し苦手でしたが、最近はチワワも可愛いなあと思うようになりました(笑)。可愛くなって自分も飼いたくなってしまうので、きりがないんです。決められないのも飼えない理由かも知れませんね。
今後、めざすところは?
まず、この地域にいかに貢献できるかを考えていきたいですね。今は募金活動や近隣の小学校の飼育動物の診療ぐらいしかできませんが、もっと地域に貢献できることがあると思いますので、模索していきたいと考えています。また時代と共に求められるものも変わってきますので、ニーズに対応できる便利な病院にしたいですね。例えば飼い主さんへのメンタル的なケアも行うことや、シングルや共働き家庭などさまざまなライフスタイルに応えることも必要になってくると思うのです。24時間体制でなくても、診療時間を少し延ばして早朝や夜にも診療するなど体制を充実させていきたいですね。また高齢化社会で、ペットも飼い主も高齢になりケアが行き届かないケースも増えていくと考えられますので、そんなサポートにも取り組みたいと考えています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
飼い主さんには、まめに動物の体重を測ることをお願いしたいですね。体重は重さだけでなく、健康状態を教えてくれる貴重な情報でもあるのです。体重の増減を飼い主さんが意識することで、犬や猫に増えている肥満や代謝疾患、メタボ予防にもなると思います。は虫類も体重変化に気を配り、何ヶ月も食べ物を口にしない場合は病気が原因なのか、習性なのかを見極める必要があります。は虫類は、その動物のもともといる環境や温度変化などを知った上で飼育環境を作り上げる必要がありますから、飼育はかなり難しいものだと考えてください。吠えないとか手がかからないからと安易に飼うことはお勧めできません。ミドリカメもちゃんと飼うにはそれなりに費用と設備が必要になりますので、お祭りなどで安易に買わないようにしていただきたいですね。ご自分の生活スタイルや家庭環境に適した動物と、共に幸せに暮らしてくださることを願っています。