「優しい治療といってもいろいろな意味がありますから、説明が難しいですよね」。一つ一つ言葉を選びながらそう話すのは、2008年に鎌倉市の材木座で開院した「オハナ動物病院」の院長、塚越篤先生。「動物に対する痛みなどの負担を最小限に」といった技術面だけでなく、「飼い主との考えの共有」を大切にしていることは、話し方や手書きのリーフレットでの正しい知識提供などの工夫からも伝わる。「飼い主・ペット・医師の三者が一枚岩になってこそ、効果的な治療ができる」との考え方は、ハワイの言葉で「家族や絆」を意味する院名「オハナ」にも込められている。絆をいかに結ぶのか、診療方針や先生のやさしい人柄を取材した。
(取材日2014年10月30日)
―院名の「オハナ」について教えて下さい。
「ohana」とは、ハワイの言葉で「家族・仲間・絆」などを意味するそうで、開院時に友人が名付けてくれました。ペットも家族ですから、やさしさや思いやりのある「些細な事でも相談できる動物病院」にしていきたいと思っていましたので、大変気に入っています。院内の造りも、飼い主さんが治療の現場に寄り添えるように広くしました。その方がペットも不安になりませんし、家庭で行えるケアのやり方などを直接見てもらえますからね。時間にすると、家庭で過ごす方が医院にいるときより圧倒的に長いわけですから、ヒントのひとつでも持ち帰っていただければうれしい限りです。待合スペース雰囲気は変えています。待合室は木調を主体にしたくつろげる空間、診察室は白をベースにした清潔感をイメージしています。
―飼い主への接し方で、何か工夫などはされていますか?
当院では、疾患ごとに原因やポイントなど記載した「リーフレット」をご用意しています。納得されてから治療に入る方が、その効果も望めると考えています。口頭の説明だけでは、家に帰って忘れてしまうこともありますしね。もちろん、診察時の会話にも力を入れています。動物の疾患を人間に例えると、話がスムーズに正しく理解されやすいようです。このとき、「?」という消化不良感が表情に出ないか、そこは注意して感じ取っています。こちらが行きすぎたら一歩戻って、かといって立ち止まるのは避けつつ、一緒に進んでいくその繰り返しが大切なんだと思います。
―なぜそこまで、情報共有に力を入れているのでしょう?
いわゆる「インフォームドコンセント」とは、ただ情報を与えればいいという医師側の発想ではなく、「患者さんの理解に基づいた合意」だと考えているためです。手術になってから、「そんなことも必要なんですか?」と言われるようでは、全然コンセンサスが取れていないことになりますよね。それに、インターネットが発達したこともあり、さまざまな情報が交錯している傾向が否めません。たとえば飼い主さんから「先生、インターネットには違うことが書いてあります」と言われた場合、知識の軌道修正を行うことが必要です。診療進行中にそうならないよう、飼い主さんと医師のベクトルを納得の上で合わせていくのが大切です。家族のような信頼関係を築き上げていくための、必要不可欠な情報共有だと考えています。
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