東逗子駅から徒歩10分。ユニークな名前の動物病院である「あなたのまちの獣医さん」は、石井史晃院長が地域密着型の診療を続け、住人の信頼を築きあげてきている。犬と猫を診療しているが、石井院長としては「散歩の途中でも、あるいは、時には動物と一緒ではなくても、気になっている心配事を相談しに来ていただけたら」と言うほど、飼い主のサポートをしたいという気持ちが前に出ているのだ。犬や猫を飼うということは、特定の地域で暮らしを続けるということ、と捉え、共に健やかにあり続けたいと願っているという。昨今ではやや珍しい、動物病院と院長の家とが一体化しているスタイルを取るのも、責任感の一端を表現していると言えよう。優しい思いを聞いた。
(取材日2016年12月5日)
―獣医になり、当院を開くきっかけは何でしたか?
予備校に通っていた時に、獣医学部をめざしている同世代から影響を受けて、でしたね。牧場の近くで育ったり、犬を飼っていたりという経験があったので、後から考えてみたら、動物に接する仕事に就くことは合っていたと思います。後に出身大学となる麻布大学の獣医学部に受験に行った時に、案内してくれた学生さんや先生の雰囲気が良かったから、と決めた進路でしたが、後悔はありませんね。開院したのは、やはり、最初から独立して自前の動物病院を率いていきたいという気持ちがあったからです。
―馬への関心も深かったそうですね。
はい。具体的に言えば、大学を卒業してから動物病院で勤務し始めるまでの間に、佐賀県にある競馬場で馬の健康を診ていたんです。そこで馬にも魅力を感じていました。澄んだ、優しい目に惹かれましたね。きっと、馬に引き寄せられている人は多くがそのように言うと思います。交通安全のお守りで蹄鉄を象るものが多い理由が「馬がどんな時にでも人間を踏まないから」なのをご存じですか? そういう優しい習性があるのです。犬に惹かれている多くの人が「絶対に裏切らず、相性が良いままでい続けられる点」を好きなように、動物との間にお互いに築くことのできる信頼関係って、良いものですよね。
―新逗子という地域での診療を、どのように捉えていますか?
出身が葉山なので、逗子のことは親しみがありました。両親の体調が崩れた時などのためにも、近くで医院を開きたいと思って、葉山よりもやや大きめの隣町である逗子での開院を決めました。2003年にオープンして、軌道に乗ったのは2008年や2009年ぐらいですね。だんだんとペットの健康にまつわる普通の相談事が増えていきました。診療を続けるほど相性の良い飼い主さんとの関係が深まり、院内の雰囲気も良くなり、患者さんの笑顔を見られるようになってきているのはうれしいことですね。クリニックの名前については、信用してもらいたい、という気持ちもあって、「まちの獣医さん」という言葉を思いついたのですが、さらに、電話帳などに掲載される際に「あいうえお順」だった時には冒頭に掲載されるかもしれない、と「あなたの」もつけました(笑)。
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