畑 岳史 院長の独自取材記事
かたせ江の島どうぶつ病院
(藤沢市/江ノ島駅)
最終更新日: 2023/01/22
江ノ島電鉄の江ノ島駅と湘南海岸公園駅、湘南モノレールの湘南江の島駅からそれぞれ徒歩約5分という位置にある「かたせ江の島どうぶつ病院」。院長を務める畑岳史先生は、幼少時代からさまざまな動物と親しみ、自然と獣医師をめざすようになった根っからの動物好き。そのため同院では、犬、猫のほか、うさぎ、フェレット、ハムスターなどのエキゾチックアニマルも幅広く診ている。獣医師であると同時に、この片瀬地区の住民でもある畑院長に開業の理由を尋ねると「いつもお世話になっている地域の皆さんに、僕が貢献できるのはこれ(医療技術)しかないものですから」と謙虚に答えてくれた。全範囲を完璧に診る獣医師をめざし、日々勉強にいそしむ畑院長に、さまざまな話を聞いた。 (取材日2017年7月24日)
飼い主に必要性を感じてもらってから治療を開始
広々したすてきな院内ですね。こだわって造られている印象です。
飼い主さまや動物たちが自宅にいるようにリラックスできればいいなと期待して、全体的に一般住宅の内装をイメージして造りました。多くのご家庭でそうなっているように、当院の壁は白壁、床はフローリング……と言いたいところですが動物病院では清掃の関係で板張りが難しいため「フローリング風」の床にしています。僕がこだわったのは、待合室とトイレ、手術室です。来院された方に窮屈な思いをさせないためにも、待合室とトイレはできるだけ広い面積を取りました。その分、裏は狭くなってしまいますが、そこは飼い主さまたちを優先しています。それから、基本的に飼い主さまには診療室内に入っていただき、治療を一緒に見てもらうのが僕の方針で、手術にしても、立ち合いをご希望の方は見られるようにガラス張りにしました。
来院するペットの特色、偏りなどはありますか?
前職の勤務先が地域猫の保護活動をしていて猫ちゃんがすごく多かったので、今はわんちゃんの方が多いなというのが第一印象。でも、客観的に見れば、猫ちゃんよりわんちゃんのほうが多い、一般的な動物病院の比率だと思います。わんちゃんでは、プードルや柴犬の飼い始めの若い子が多いですが、大型犬も増えてきました。持ち家の方、それも広い一戸建てのご家庭が多いからなのでしょう。症状としては、循環器科や腫瘍科の診療が比較的多いと思います。それから、エキゾチックアニマルの飼い主さまも多いですね。今のところフェレットはまだ来ていないんですが、うさぎ、ハムスター、ラットはよく来ますよ。特に最近は、ファンシーラットがホテルで来てとても可愛かったです。
診療の際に心がけていることを教えてください。
一方的にしゃべるのではなく、料金も含めてきちんと説明し、必要性を感じていただいてから治療を開始するようにしています。まず、飼い主さまに納得いただくのが重要で、とにかく治せばいいというものではないと思っています。前の子の治療でのつらい経験や、症状が末期まで進んでしまっている子など、様々な状況がありますので、動物たちにとってはもちろん、飼い主さまにとってもつらい治療とならないように、しっかりと説明し、飼い主さまに寄り添いながら治療を決めていきます。「絶対に治療する」よりも、無理せずその子に合わせてケアしていくことが満足につながるのではないかと思います。僕はそこでその子に合った治療ができるように、学会にできる限り参加して勉強を続けています。
恩師の影響を受け全範囲を完璧に診るドクターをめざす
院としての理念があるそうですね。
開業の際に、「ホームドクターとして地域に根差した獣医療」「最新のエビデンスを含めた治療のご提案」「高度医療との連携」の3つをあげました。1つ目については、自分自身もこの地域の住民であり、地域の皆さまにとって近い存在でありたいということがあります。通院が難しい方には往診も行っていますので気軽にご相談いただければと思います。2つ目については、スタッフ全員がセミナーや学会に参加したり、院内セミナーを行ったりして新しい情報を取り入れ、来院された方へ還元できるよう努めています。広く知ることで、標準的な治療が可能になりますから、日々勉強することを大切にしています。3つ目に関しては、それほど多いケースではありませんが、MRIなど当院で難しい検査や高度な治療が必要になった場合、大学病院だけでなく、僕の信頼する専門家をご紹介しています。
先生が獣医師として影響を受けたような出会いはありましたか?
僕が尊敬する獣医師は2人いて、その方たちがいなかったら獣医師を辞めていた、それほど影響を受けた方たちです。今回の開業にあたって、当院の院名に入っている「どうぶつ」をひらがなにしたのは、その先生のクリニック名を少し取り入れたかったからです。その先生方は普段無口ですが、ある時「よく勉強しているね」と褒めてくださったことがあって。ちょうど、僕がこの仕事で迷っていた時期に言われたものですから、改めて、仕事として自分は動物たちを治療していくんだという目標ができたように思います。心理面だけでなく、もちろん技術面でも尊敬していました。全範囲を完璧にできる先生たちを見て、獣医師はすべてできないとだめなんだなと思い知らされ、それが今も僕のめざす指標になっています。
ペットを飼われている方にアドバイスをいただけますか?
例えば、腫瘍は場所によって飼い主さまのほうが見つけるのが早いものです。普段から、よく触ってあげているからですね。しこりを見つけた場合は、大きさや見つけた日付を覚えておいていただくと、獣医師の診断の助けになりますので記録していただくと良いと思います。猫ちゃんでは腎臓の病気が比較的多いので、僕はよく、おしっこの量と水を飲む量について飼い主さまに質問します。病気があれば、腎臓病用の食事に切り替えるなどのケアが必要になるので、おしっこと飲む量のどちらかに偏りがあれば、早めに受診を。エキゾチックアニマルは、トラブルの原因のほとんどが、誤った飼い方から始まっています。病気予防のためにも、定期的な健康診断や飼育指導を受けるのがお勧めです。
将来的には獣医療だけでなく地域交流の場を提供したい
今後の展望はありますか?
もっともっと機材を充実させていきたい、というのが目の前の展望です。将来的には、スタッフがもっと働きやすい環境を調えて、トリマーさんを含めスタッフの数を増やし、みんなでわいわいやっていけたらいいなと思っています。分院だと僕の目が行き届かなくなるので、できたらこのクリニックで人を増やしていければいいですね。そして最終的には、獣医療という事業だけでなく、地域貢献をしていきたい。例えば、待合室にカプセルトイの機械を置いて、子どもたちが集まる場所にしたり、ペットを連れた飼い主さまたちが、別に診察を受けに来るわけでもなくいらっしゃるような、地域交流の場にできならなと思います。
プライベートの過ごし方についてお伺いします。
診察のための勉強、というのは冗談ですが、1日1回はきちんと獣医療に関する本を読むようにしています。日々情報を取り入れないと、すぐに取り残されてしまいますから。先ほど申し上げたように、町の動物病院はすべてについて対応できないといけないと思っているので、僕が勉強する対象はすべてのジャンル。購読していない雑誌は、図書館まで行って網羅しています。あとはだいたい、子どもたちと一緒に過ごしています。今はまだ、上が小学生で下2人が幼稚園と小さいですが、うかうかしているとすぐ大きくなってしまいますから、今のうちにしっかり遊んでいます(笑)。うちの子はよく病院にも来てくれて、ケージに預かっている猫ちゃんへご飯を一緒にあげたり、とても励みになります。
最後に、メッセージをお願いします。
開業してまだ間もないですが、もっともっと地域で親しまれる動物病院になり、皆さんから「えのどう」と呼ばれるようになりたいと思っています。今、ネットの検索エンジンで「えのどう」と打ち込むと、当院のホームページが1番に出てくるようになりました。今後は、「えのすい」や「えのでん」と張り合い、その一角に食い込むことが目標です(笑)。この地域は、一部は観光地ですが、視野を広げると人のつながりがまだ残る、下町だと思います。いろいろな方が声をかけ合う温かい土地柄ですから、どうぞ気軽にいらしてください。僕は、獣医師であるとともに、ここの住民です。できることは獣医療の提供しかありませんから、それで地域の皆さんに貢献できればうれしいですね。