須藤哲長 院長の独自取材記事
すどう犬ねこ病院
(横浜市旭区/中山駅)
最終更新日: 2023/01/22
横浜市旭区にある「すどう犬ねこ病院」は、須藤哲長院長と気さくなスタッフたちの和気あいあいとした雰囲気がとても魅力的な動物病院だ。かつてコンビニだったというつくりを活かし、道路側は全面ガラス張りでとても明るい。動物や自然が大好きだという院長の方針で、内装はロッジ風の温かい雰囲気になっており、動物も飼い主も落ち着けるようなアットホームな内装だ。動物が入院中の場合でも開院中であればいつでも面会できるなど、内装以外の点でも居心地の良さにこだわっている。中には全く違う地域から院長を慕って通い続けている人もおり、信頼のほどがうかがえる。穏やかな物腰ながら「その子の一生を見守りたいんです」と力強く語る須藤院長に、これまでの経緯や今後の展望などを語っていただいた。 (取材日2014年8月25日)
専門分野だけでなく、全体を診るかかりつけ医でありたい
まず、獣医師になったきっかけやご経歴、開業までの経緯をお聞かせください。
小さい頃から、家族より動物の数が多いという家に育ち、動物を助ける仕事がしたいと思ったのが大きいですね。一番少ないときでも家族4人に対し6頭いましたから(笑)。両親共に動物が好きで、特に母が野良猫の保護活動に取り組んでいたので、その影響は大きいと思います。獣医師歴は今年で24年目になりました。横浜・川崎・座間などの動物病院に計10年ほど勤めた後こちらを開業したのですが、やはり自分に合った町だなと感じますね。
先生の得意分野について教えていただけますか。
得意分野は皮膚科です。動物の皮膚の悩みは多く、入院するほどではなくても、夏はかゆみなどで来院されるケースが多いですね。少し前に認定医の資格を取得したので、さらに精度の高い診療をしていこうと、バンクーバーや香港での国際学会にも参加して勉強しています。英語はあまり得意ではないですが(笑)。私が学生だった頃はそういう学会もあまりなくて、勉強したくても現場で学んでいくしか方法がありませんでした。けれども、自分の得意分野しか診ないというのではなく、ペットの一生を見守る「かかりつけ医」でありたいと思っています。最近は耳科や眼科の診療にも力を入れ、新しい機材の導入や他の動物病院との診療連携、週1回の定期的な研修にも取り組んでいるところです。
設備についてご紹介いただけますでしょうか。
耳や目というのはちょっと特殊な分野で、専門の機材が必要です。当院の耳科では、「オトスコープ」という耳用の内視鏡を導入しています。今はまだ耳鼻科を専門にしている獣医師がいないので、耳鼻科治療のレベルを底上げしていきたいと考えていて、皮膚科に注力している先生たちが立ち上げた「耳研究会」に第一回から参加しています。これまでは「耳鏡(じきょう)」という機材があったんですが、内視鏡のほうがより奥や細かいところまで見られますし、鼓膜付近や中耳の治療もある程度できるようになります。
そのときだけでなく、一生一緒にいたい
こちらの診療理念についてお聞かせください。
動物を家族の一員として連れて来る方が多いので、自分も同じように接したいと思っています。動物を懐かせるコツは特にないですが、やはり診療のときは嫌がられてしまうので、診療以外のときによく遊ぶようにしています。動物にとって、病院に来ること自体がストレスですから、そのストレス以上の効果を与えてあげたいと思います。特に、入院はできるだけ期間を短くするようにしていますが、場合によってはどうしても長引いてしまうこともあります。そんなときは、一度仮退院して、家に戻ってからまた来てもらうようにして、家族との繋がりを絶たないように気をつけています。入院室や面会時間といった制限を設けていないのも、開いている時間帯ならいつでも家族がいらっしゃれるようにするためです。何時間いてくださっても構いません。離れてしまうのは動物も家族も不安ですからね。
離れていると飼い主の方も心配されますし、とても良い方針だと思います。
ありがとうございます。動物の心も、今言われている以上にずっと複雑でいろいろなことを感じていると思うんです。寿命や病気で万が一、ということになるとペットロスやそれに似た状態になってしまう飼い主さんもいらっしゃいますので、もしも……というときのために、心構えをするお手伝いもしたいと考えています。動物病院や獣医師というのは、動物だけじゃなく、飼い主さんを支えることも大切だと思います。
印象に残っているエピソードなどあればお聞かせください。
もう遠くへ引っ越されてしまった方の子なんですが、生まれるときに私が帝王切開で取り上げて、名前も私から一字取ってつけてくれた、ということがありました。もうその子は亡くなってしまったそうなんですが、離れてもそういうお知らせをもらえるのは嬉しいですね。生まれてくる子もいれば亡くなる子もいて、また次の子を迎える……悲しいことももちろんありますが、そんな人と動物とのふれあいを見守るというのは開業前からめざしていた獣医師の姿です。これからも、古い友人や家族みたいに動物や飼い主さんと一生付き合っていきたいですね。
移転後も、より居心地の良い動物病院を目指す
先生の他にも獣医師や看護師の方がいらっしゃいますが、スタッフに求めるものや普段の雰囲気など教えていただけますか。
うちは採用のときも面接ということはしないで、半日から一日くらい見学に来ていただいて「ここで働きたいです」という希望があれば条件を提示するようにしています。求めるものとしては、優秀であることはもちろんなんですが、献身的に愛情を注げる方であることがまず大切です。おそらく動物病院に就職を希望される方は、動物が好きだからこの仕事を選んだ方がほとんどだと思いますが、ただ単に好きなだけじゃなく、それ以上に動物を愛せる方ですね。そういう面も含めて、今はとてもいいスタッフが揃っています。何か言うとしてもケガに関する注意をするくらいで、指導というようなことも特にしていません。自分で何か動物を飼っている人も多いですし、自宅の子と同じように世話をしてくれているので、信頼しています。
先生個人、そして病院としての今後の展望をお聞かせください。
ちょっと残念なお知らせなのですが、来年この建物を壊すことが決まってしまいまして。当院もすぐ近くに移転する予定なので、心新たにより居心地の良い空間を作りたいと思っています。また、担当が変わったり複数の医師が診てもすぐに診察の経緯がわかるようにしたいですね。個人的には、皮膚科以外にも得意分野をもっともっと増やしていきたいです。専門の科目や体のパーツに偏ることなく、その子の一生を見守ることが獣医師としての役目だと思うので。あとは、若い獣医師が私と同じようにやりがいを持って長く働ける環境を整えていきたいと考えています。
最後に、かかりつけの動物病院を探している方へメッセージをお願いします。
月並みですが、何でも話せる・話を聞いてくれる先生を見つけることに尽きると思います。いろいろな病院へ行ったり、なかなか治らないというなら転院してみるのもひとつの方法ですが、その子の一生をずっと診てもらう先生を決めることは大切です。ときにはより得意な先生を紹介してくれることもありますし、急病のときも対応してもらいやすくなりますから。動物を飼い始めたら、早い段階でいろいろな獣医さんに会い、一番話を聞いてくれると思った先生にかかると良いのではないでしょうか。