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小出 充先生の独自取材記事

小出動物診療所

(世田谷区/自由が丘駅)

最終更新日: 2023/01/22

東急大井町線・尾山台駅から徒歩8分、住宅街の一角に位置する『小出動物診療所』。16年前、2階建ての民家の1階部分を改築して開業、現在も同じ場所で診察を続けている。民家の1階部分ということで雰囲気はとてもアットホームで、じっくりと相談することができる。診察室に入ると、ここで飼っている犬1頭と猫3頭が出迎えてくれた。急患が入って今朝は4時に起きたので、ちょっと寝不足だと言っていた小出先生。しかし、インタビューが始まると、自分の歩んできた人生、診察のスタンスについて、穏やかな口調で熱く語ってくれた。(取材日2010年3月24日)

物心ついた頃から動物に囲まれて暮らしていました

なぜ獣医を目指されたのですか?

高校生のときには獣医になろうと決めていましたね。だから、みんなが進路で悩んでいるとき、私は全く悩みませんでした。小さい頃から、動物に囲まれて暮らしていたことが影響しているのかもしれませんね。常に、家には何か動物がいるのが普通のことでした。犬、猫、鳩、十姉妹、スズメ、紅スズメ、カメ、うさぎ、ハムスター…、父親が動物好きだったので、結構、いろいろな動物を飼っていました。紅スズメはあまり聞かない小鳥かもしれませんが、当時は飼っている家庭が多かったみたいです。

学生時代はどのように過ごされていたのですか?

高校卒業後は、東京農工大学の農学部獣医学科に入学しました。普通は1・2年生で一般教養を学んでから、研究室に入って専門的なことを学びます。そして、5・6年生になると構内にある附属家畜病院で実習をします。でも、私の場合、1年生の頃から附属家畜病院に出入りしていましたね。これは自主的にですが…。早いうちから、そして少しでも長い時間、動物に接していたかったので、暇さえあれば通っていました。普通は実習の一環として行う診察のアシスタントを、特別にやらせてもらえたことはラッキーでしたね。夏休み中も、病院が開いていれば犬や猫の診察を見学していました。だから、アルバイトもしなかったし、コンパや旅行にも行かなかったですね。友人と一緒に遊ぶより、動物たちと過ごす時間の方が長かったんじゃないかな(笑)。6年間の在学期間のほとんどを附属家畜病院で過ごした後は、横浜の動物病院に勤務しました。ここには2 年間いましたね。院長がとても厳しい人で、みっちり鍛えられました。「うちで2年働いて開業できないようなら、一生開業できない」と言われていたので、かなりプレッシャーでしたね。まぁ、私は無事に2年後に開業できたので良かったですが。

少しでも気になることがあれば、気軽に相談に来てほしいですね

なぜ、名称は"病院"ではなく"診療所"なのですか?

患者さんに気軽に来てほしいという気持ちを込めて、あえて"診療所"にしました。「病院に行くほどかどうかはわからないけど、獣医の意見を聞いてみたい」、そんな方も大歓迎です。お話を聞いてアドバイスしたり、診察したりして、当院で処置の難しい場合には、大学病院の紹介もしますよ。

夫婦で診察をされているのですか?

はい。現在は獣医の妻とAHT(アニマル・ヘルス・テクニシャン、動物の看護師さんのこと)の3人で行っています。開業当時は私1人でしたが、開業1年後に結婚してからは妻と一緒に診察を行っていますね。開業すると決めたときに場所がなかったので、とりあえず診療する場所として、住居の1階部分を改築して開業しました。何年かしたら新たな場所に移転しようと思っていましたが、いろいろな事情が重なってずるずるとここで続けていますね(笑)。少々、手狭ですけど、結果的にはここで続けることができて良かったと思っています。もちろん、デメリットもありますけどね。

動物と上手くコミュニケーションをとるコツって何ですか?

特にこれっていうものはないのですが、いろいろな動物と出会い経験を積み重ねるうちに、動物の性格を見極めることができるようになりました。私の場合、まず、動物の顔を見ますね。動物は知らない人に自分の体を触られる訳ですから、かなり警戒しています。顔つきとボディーランゲージで、その子がどういう性格か判りますね。この子は急に手を出したら危ないとか、この子は勢いで処置したほうがいいとか…。極端に暴れる子には鎮静剤を使います。そのほうが、動物にとって親切なこともありますからね。最近は、皮膚病や外耳炎にかかった犬・猫を連れていらっしゃる患者さんが圧倒的に多いです。

この町で、自分の納得のいく診療を続けていきたいです

先生は獣医師会の会員だと伺いましたが…

東京都獣医師会には開業医をはじめ、公務員、大学の先生、公務員、製薬会社の人など、さまざまな業種の方が所属しています。この獣医師会のなかにはいろいろな委員会があるのですが、昔、私は野生動物対策委員会に所属していました。決して野生動物に詳しいわけではありませんが、この委員会に在籍中は、小笠原諸島に生息する希少動物の保護活動に携わりました。これは10年以上前から行っている活動です。島で野生化した家猫たちが希少動物を食べちゃうんですよ。なので、その猫たちをこれ以上繁殖させないようにするために、東京都獣医師会で野生化した猫を順化しているんです。今、ここにいる猫3頭のうち1頭は、小笠原にいた猫です。何人かの会員は、私のように自分の医院で飼っていますね。

開業当時に比べて変わったことはありますか?

ここ10年くらいで、室内犬が増えましたね。昔は犬といえば屋外で飼っている雑種が多かったですが、今は血統書付きの洋犬が人気ですね。ペットに対する飼い主の考え方も、随分と変わった気がします。私の小さい頃の夢は室内で犬を飼うことだったのですが、今の子供たちにとっては夢ではなく普通のことですからね(笑)。医療と食生活の進化により動物の寿命はかなり延びましたが、昔はなかった腫瘍や循環器系の疾患が増えています。健康維持のためにも、8・9歳くらいになったら定期的な検査をしたほうがいいですね。人間もある程度の年齢を超えたら、人間ドッグを受けますよね。それと同じです。検査では血液採取やレントゲンなどを行い、費用はだいたい10,000〜15,000円くらいです。

今朝も急患で起こされたとのことでしたが、深夜や早朝に呼び出しがかかることが多いのですか?

数年前、目黒区の碑文谷に、年中無休の夜間救急動物病院ができてからは減りましたね。この病院は、目黒区の獣医師会の有志の先生方が出資して作られたんです。世田谷でも作ろうという話は出ているみたいですね。患者さんは碑文谷で夜間の診察を行っていることをご存じなので、ほとんどの方はこちらへ行かれます。でも、昔から当院にいらっしゃっている近所の患者さんは、私のところに連絡してこられますね。まぁ、年に数回ですが。

自宅と病院が同じ建物であることのメリットとデメリットは何ですか?

入院している子をちょこちょこ診に行けることは、一番のメリットですね。テナントの病院だと、泊まりこみになってしまうこともありますからね。私のところでは極度に具合の悪い子にはモニターを付けて、2階にある自宅から観察しています。だから、様子がおかしかったらすぐ診に行くことができます。そういう意味では、とてもやりやすい環境ですね。仕事とプライベートの区別がなくなることは、ある意味デメリットかもしれません。でも、先ほどもお話しましたが、結果的には仕事しやすいし、現状に満足しています。

休日はあってないようなものですね

そうですね。あまり遠出はできないですね。入院している子がいたら面倒を見なきゃいけないし。それから、まだ私の子供も小さいですし。一応、診療時間は決まっていますけど、急患が入れば可能な限り対応します。これはどの分野の医師も一緒ですがね。今後も、今のスタイルを崩すことなく、自分の納得のいく診療を続けていきたいです。

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