藤井 聖久 院長の独自取材記事
くすの木動物病院 世田谷どうぶつ整形外科センター
(世田谷区/尾山台駅)
最終更新日: 2026/06/11

東急大井町線尾山台駅から徒歩約3分。昔ながらの商店街の一角にある「くすの木動物病院 世田谷どうぶつ整形外科センター」は開院から18年を迎えた2026年4月に新築移転したばかり。専門性の高い整形外科診療と手術を得意としつつも、かかりつけ医として地域に根差した医療を提供している存在だ。真新しく清潔感のある院内は、緊張しがちな心を和ませてくれるような木のぬくもりのある空間で、藤井聖久院長を含め4人の獣医師と機敏な動きで支えるスタッフが、生き生きと働いている。穏やかな笑顔と落ち着いた語り口の藤井院長に話を聞いた。(取材日2026年5月20日)
大型犬の手術にも対応する専門的な整形外科診療
今年4月に新築移転されたばかりだそうですね。

全体的にコンパクトな造りではありますが、整形外科の手術の件数も多いので、高度な手術にも対応できるようこだわって設備を整えました。大型犬の手術にも対応しています。限られた空間ですので動線もよく考え、スタッフにも働きやすい環境が整えられたかなと思っています。整形外科を得意としているので、ありがたいことに他の動物病院からのご紹介も多いんです。セカンドオピニオンとして来てくださる方もいらっしゃいますね。今後もこの専門性を生かしながら、地域のかかりつけ医として飼い主さんの気持ちに寄り添った医療を提供し続けたいと思っています。
整形外科系の病気というと足や関節でしょうか?
整形外科疾患は、歩くことや走ることが難しかったり、痛みがあったりするので生活の質に直結するものが多いんです。だからこそ早めの治療が肝心です。犬や猫は言葉が話せませんので、飼い主さんが日常生活の中で、歩き方がおかしいかなとか、足を床につけることを嫌がる様子や、見ていて体の動きに違和感を感じられるようなことがあれば、早めにご相談いただければと思います。やはり早めに発見できれば、治療方法の選択肢が広がりますし、何より痛かったり動きづらかったりする期間は短ければ短いほど良いですからね。整形外科疾患で、手術まで対応されている動物病院は少数派かもしれません。膝などの手術は、いろいろな手術方法がありますが、設備を整える必要がありますし、当然手術のトレーニングも必須ですので、なかなか難しいのかもしれません。何か動きにおかしな点があったら、お早めにご来院ください。
診療の際心がけられていることはありますか?

飼い主さんも犬や猫も、お気持ちをくめるような診療を心がけたいなと思っています。残念ながら力が及ばない結果となったとしても、できる限り最後の瞬間は、入院ではなくご自宅でお過ごしいただいて、一緒にいられるようにして差し上げたいなと思っています。どうしても人間と動物には寿命の差があり、それが動物を飼うことの定めなのかと思います。私たちができることは当然ベストを尽くすのですが、当院のベストが世の中の医療のベストかというと、そうとも言えないこともあるかと思います。より専門性の高い治療が必要な場合には、積極的に専門的な治療ができる機関への紹介をご提案させていただくこともあります。動物たちと飼い主さんたちに一番いい医療を受けていただきたいですからね。包み隠さずご提案することも心がけています。
飼い主の心にも寄り添う獣医師に
獣医師をめざされたきっかけは?

小学校の卒業文集に「将来の夢は獣医師」と書きました。当時は家で猫を飼っていて、動物病院に連れて行った時、動物を診察する仕事があるんだ、自分で猫の病気を治してあげたい、と思ったのでしょうね。小学校の時の夢が実現できて幸運ですね。基本的に動物たちは病院なんて来たくないと思うんですよ。つらい治療なんかしたくないでしょう。毎日、飼い主さんと仲良く、おいしいものを食べて、家で伸び伸びするのが一番幸せだと思っているはず。その楽しい時間を犠牲にして行うことが医療なので、果たしてそれが正しいのか考えなくてはなりません。治療する対象である動物たちと、決定権を持つ飼い主さんが違うのも難しいところです。そういった難しさも踏まえて、獣医師になって良かったと心から思います。こんなに人に感謝していただける仕事も素晴らしいと思いますし、動物たちとふれあいわくわくできる仕事に就けて幸せです。
獣医師となるための勉強はいかがでしたか?
大学進学時は小動物の臨床医が希望でした。子どもの頃は犬猫を治療して一緒に暮らせる職業だと想像していましたが、実際の獣医学は牛や豚や鶏などの人間の食用となる動物たちの健康管理や治療に重きを置いた学問であることに気がつきました。子どもの頃のイメージとは違いましたが、獣医学は社会のためになる大切な学問でありますし、獣医師を志したことは後悔しませんでした。大学では解剖学を学び、今の知識の礎になっています。卒業後には、横浜の動物病院で小動物の臨床の研鑽を7年間積みました。その時に「獣医師は飼い主さんのためにある仕事だ」と感じたんです。もちろん動物の病気を治すことは大切ですが、それ以上に飼い主さんの心を救うような度量のある獣医師になりたいと思いましたね。
東京医科歯科大学で博士号を取得されていますね。

東京医科歯科大学では生体材料の研究をしていました。骨折した際に骨をつなぐステンレス表面の感染制御に対する研究や、金属疲労試験などを行っていました。学位論文は「MPCポリマーによるバイオフィルム形成抑制」です。当時、整形外科症例を多く扱う動物病院に勤務していましたし、現在も外科・整形外科は得意分野ですから、感染制御の研究は今の動物医療にも役立っています。
医療の窓口として幅広い相談に適切に対応
診療で大切にされていることは何でしょうか?

獣医師の仕事は生き物を相手にするため、その子の性格や様子をくみ取った治療が欠かせません。マニュアルどおり画一的に進めれば良いわけではありませんし、飼い主さんの思いも本当にさまざまです。同じ病気でも「できる限り治したい」と願う方もいらっしゃれば、「余命が短いなら負担をかけたくない」と考える方もいるでしょう。そうしたお気持ちを確かめずに治療を進めず、まずは丁寧にお話を伺うようにしています。診療での対応も一つの形に決めず、理論的な説明で安心される方、優しい声かけが響く方など、その方に合う接し方を探しながら向き合っています。ただ、どんな場合でも礼節を大切にして、飼い主さんとスタッフは対等でありながら、人としての敬意を持って誠実に接することを心がけています。
獣医師の先生もスタッフも充実している体制ですね。
獣医師は私を含めて現在4人です。ホスピタリティーも高く、診療をサポートしてくれる優しいスタッフさんもいてくれて、本当にありがたいなと思っています。入院している動物がいる時は、必ず夜勤の職員がいます。私自身たくさん教えてもらってここまで育ててもらったという意識がありますので、若い先生方を育てたいという気持ちは強いです。私の知識や経験、技術を全部教えたい。そしてまた次の世代へ受け継いでもらって、動物医療をより良くしていってほしいですね。これからは、より近隣の整形外科疾患をもっとお任せいただけるようにしたいですね。必要に応じて、今後も施設を拡充していきたいとも考えています。
読者へのメッセージをお願いします。

どんな症例でも、責任を持って診療いたします。特に整形外科疾患でお悩みのある方は、一度当院にお越しいただければと思います。こちらで治療できれば担当させていただきますし、難しいようであれば専門の動物病院を適切にご紹介します。アドバイスとしては、お住まいの近場など通いやすいところにかかりつけの獣医さんを持つといいと思います。おそらく初めの一歩は予防接種だと思いますが、行ってみてどんな感じか確かめてみられるといいでしょう。犬種などによってなりやすい病気や日常生活で気をつけたい点が異なりますので、聞いてみるのもお勧めです。何か不安や困り事があれば、お気軽にご相談くださいね。

