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橋本隆志 院長の独自取材記事

橋本どうぶつ病院

(世田谷区/成城学園前駅)

最終更新日: 2023/01/22

成城の閑静な住宅街の途中にある、壁に描かれたポップなイラストが印象的な「橋本どうぶつ病院」にお邪魔した。青と白のオシャレな椅子が印象的な待合室での取材中、ペットの薬を処方してもらうために一人のご婦人が来院された。「治療に関することは、なるべく細かく丁寧にご説明さしあげたいのです」というお話通り、ご婦人との会話の中で橋本院長先生が発する言葉は患者さんやペットに対する優しさにあふれていた。物静かではあるが、その言葉の1つひとつから真剣な想いを感じ取れる橋本院長に、診療方針などをお伺いしてきた。(取材日2009年11月30日)

プログラマから獣医師へ。将来の夢を180度変えたペットとの出会い

先生ご自身は、どんなペットを飼われていた経験がおありですか?

私は父の仕事の関係で東京と神奈川を数年ごとに行ったり来たりする生活を送っていたので、子どもの頃は、なかなかペットを飼う機会がありませんでした。なので、初めてペットを飼ったのは高校生の頃なのです。妹の同級生の家で子どもが飼っていたジャーマンポインターという猟犬の子どもを譲ってもらい、「ボビー」という名前をつけて可愛がっていました。本当に大好きだったので、学校から帰ると毎日のように一緒に散歩に行って空き地を走り回っていましたし、衛生的によくないとは思うのですが、庭にある犬小屋で一緒に横になることもありましたね(笑)。

獣医師さんを志されたきっかけを教えてください。

コンピュータをいじるのが好きな子どもで、自分でプログラムを組んで遊んだりもしていたので、なんとなくそれを仕事にするのだろうなと思っていました。しかし、プログラミングに夢中になり徹夜を繰り返すうちに「もう少し温かみのある仕事に就きたいな」と感じるようになっていったのです。そんなとき、ボビーを飼ったことをきっかけに動物病院に行く機会が多くなり、獣医師さんのお仕事を身近でみることも増えていきまして。動物の怪我や病気を治してあげられる、この仕事に徐々に憧れていったのです。それまで考えていた路線とはまったく違う方向性だったもので悩んだのですが、17歳のときに「獣医師になるぞ」と、その道を本格的に目指すことを決めました。ボビーを飼っていなかったら、そのままプログラマになっていたかも知れませんね。

もともと理系のお勉強が好きなお子さんだったのですか?

そうですね。中でも、物事の本質を捉え、「なんでこうなるのだろう」という"なぜ"を探求していくという点で物理学が大好きでした。公式を解くというよりも、理系なのに「宇宙の起源」など哲学的な要素もある学問だというところに魅かれていましたね。しかし、勉強ばかりやっていたわけではなく、中学・高校時代はテニスもすこしかじっていまして。麻布大学の獣医学部に入ったのと同時にテニス部の活動も始め、試合に出たりもしていたのですよ。

テニス以外で、大学時代の印象的な想い出はありますか?

テニス部のほかには、教授の指導のもと動物たちの手術をするサークルにも入っていました。毎日、手術をするわけではなく基礎となる勉強をしてから実践にはいるのですが、活動は基本的に授業が終わってからになります。なので、必然的に毎日のように深夜まで活動することになり、大学の近くに住んでいる友だちの家に泊まることも少なくありませんでした。学生なので、そこで話し込んだりしてもよさそうなものなのですが、遅くまで活動しているので疲れもピークな状態。そのようなことをする余裕もなく、眠り込んでいましたね。しかし、そのサークルでの経験はいち早く実践を経験できたということもあり、今でも非常に役に立っているなと感じているんです。

ベテラン獣医師のもとで学んだ「信頼関係」を築くことの大切さ

大学をご卒業されてからの経歴を教えてください。

世田谷の豪徳寺にある、吉池先生というベテランの獣医師さんがやられている動物病院に勤務していました。吉池先生は、40年近く世田谷で開業されている地元の動物たちを診続けていらっしゃる先生で、そのご経験からか対人関係というか患者さんとのコミュニケーションに非常に長けいらっしゃる方なのです。吉池先生のもとで働くことで、患者さんの立場にたって細かく丁寧にご説明さしあげることの大切さを肌で感じることができました。それと、若いころというのは勉強の中から様々なことを学ぶことにより、実際はそうでもないのに、すごくできるような気になってしまっていたりするものですよね。しかし、実際に働くことにより「臨床というのは教科書通りにはいかないものなのだな」ということも思い知らされました。私は大学時代に放射線科の研究室で学んでいたこともあり、レントゲンの診断や超音波の診断に関して多少自信はあったのですが、吉池先生の診療を間近で見て学ぶことにより、治療でもいろいろな方法があるし、その方法や伝え方も患者さんによっても変えなければいけないということを、ひしひしと感じたのです。医師がすべきことと、患者さんの要望をすり合わせる上での匙加減は、吉池先生の特に素晴らしいところだと今でも思っています。

吉池先生のもとで働かれている頃の出来事で一番心に残っていることを教えてください。

とある患者さんが飼われているペットの治療をしたときの話なのですが、同じ症状でも吉池先生が担当されたときには「治った」と患者さんはおっしゃってくださるのですが、私が担当したときにはそう言ってくださらないことがありました。先生と同じように治せているのに、なぜそう感じていただけないのかと考えたときに、私とその患者さんの間で信頼関係を築けていなかったということに気づいたのです。同じ結果でも、信頼関係が築けていれば良く見えることもあれば、その逆もあるのだと。この出来事は、「獣医師だからといって動物だけを診ればよいわけではなく、患者さんときちんとお話をして求めていらっしゃることを理解した上で進めなければならない」という、私が診療をする上で今、一番大切にしていることを教えてくれました。

数値ではなく体を診て判断すること…それが基本中の基本であり、一番大切なこと

先生がこちらに開業された理由は?

妻がこのエリアの出身ということもあるのですが、勤務医として働いていた頃から世田谷に住んでいましたし、自分が通っていた小学校が近くにあったこともあり、個人的に何かと馴染みが深い街だったというのが一番の理由ですね。しかし、最初からこの場所に開業していたわけではなく、1996年に初めて開院したときは世田谷通り沿いに病院を構えていました。そして、その5年後にこの場所に移転してきたのです。世田谷通り沿いにあったクリニックとこちらの距離は700〜800メートルしか離れていないので、以前の場所のときに来てくださっていた方も、こちらに通ってくださっています。一番長い患者さんですと、開業から13年のお付き合いになりますね。

先生はこちらのエリアで、どのような役割の医師になりたいとお考えですか?

幅広く、体全体のいろいろな症例を診てあげられるホームドクターとして活動したいと考えています。そのために獣医師仲間や信頼できる先生と情報を交換し、ときには勉強会に出席をして新しい知識や最新の治療方法を柔軟に取り入れていくようにしているのですよ。しかし、すべてを自分で抱えて治療を行うべきだと思っているわけではなく、自分ができることとできないことを客観的に判断して、私でないほうが動物たちにベストな治療を提供してあげられると感じれば、それぞれの専門医をご紹介させていただくこともあります。実のところを言うと、私は病気というのは動物たちが自分で治していくものであって、私たち獣医師は治すための手助けをしているのだと考えています。なので、私は手助けの一環として治療を行い、それをわかりやすく飼い主さんにご説明をし、ご理解いただいた上でさまざまなケアをするように心がけているのです。ちなみに医療機器は私の手助けをしてくれるものであり、機械で出てきた数値だけを見て判断はしたくないと考えています。私が診ているのは生き物であってロボットではありませんからね。動物の体を診て判断すること…それが基本中の基本であり、一番大切なことなのではないでしょうか。

ところで、このワンちゃんは非常に人懐っこいですね〜。

この子は"たまちゃん"というのですが、実は多摩川沿いで生活していたのを保護されて来た子なのです。しかし、もともと捨て犬で人に慣れていなかったからか、もらい手が現れてもそこのおうちで飼い主さんをガブッと噛んでしまったりして、何度、もらわれていってもここに戻ってきてしまうのです。根気強くそれがダメだということを教え込んできたからか私に対してはそんなことはしない、大人しくいい子だったこともあり「ここにいたいのかな」と思い、最終的に私が飼うことにしました。今では、たまちゃんはうちで飼っている動物たちのリーダー的役割を担うまで成長しましたね(笑)。動物を飼われている飼い主さんの中にも、しつけで悩まれている方もいらっしゃると思いますので、お話いただければご相談にのりたいと考えているんですよ。

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