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- 濱田美保子 院長
濱田美保子 院長の独自取材記事
みなみ成城動物病院
(世田谷区/成城学園前駅)
最終更新日: 2023/01/22
成城の閑静な住宅街に佇む、みなみ成城動物病院を訪れた。「先生はどうして動物の気持ちが分かるのですか?」と、よく質問されるという院長の濱田先生は、明るい笑顔を見せながら「動物たちの気持ちの一番近いところにいつもいるからかしら」と答えてくれた。人と動物が楽しく幸せに暮らせることを願い、動物の体だけでなく気持ちにも触れ、心のこもった診察をしてきた濱田先生。動物たちとの思い出を話す時に見せた本当に嬉しそうな表情が、とても印象的だった。(取材日2009年10月7日)
経験を積めば積むほど自分に自信が持てるようになりました
医師を目指したきっかけは?
小さい頃からコリー犬を飼っていたのですが、高校生の時に不甲斐なく亡くしてしまい、ちゃんと予防していれば助かったのに、という後悔の気持ちから獣医師を目指そうと思いました。高校卒業後は麻布大学の獣医師科へ進みましたが、獣医師になるための勉強とはこんなに大変なんだと思ったのが正直な感想ですね。大学に入るよりも入ってからの方が大変で、遊ぶ時間もないほど勉強に集中した6年間でした。
卒業後はどのように進まれたのですか?
卒業後は、動物病院で勤務しました。最初は見習いのようなことからやらせてもらったのですが、大学での6年間一生懸命勉強してきたつもりが、実際の臨床が教科書の上の勉強とはぜんぜん違うことを思い知らされ、自分がまったく分かっていないということを痛感しました。飼い主さんの方がよっぽど詳しいんじゃないかと思うほどで、今だから話せるのですが、診療の時は「お願い、私に何も質問しないで!」と祈っていました。自信がない時こそ、「分からない、出来ない」という言葉は、言えないんですね。 経験を積むと「詳しいことは専門の先生に...」とか、「私にはそれは出来ないです」と自分の技量が分かり、はっきり言えるのですが。そこでは2年ほど勤めましたが、先生だけでなく飼い主さんから教わることも多く、緊張が取れていくにつれて自信も付き、「病気を治してあげたい」と獣医師らしく思うようになりました。
成城で獣医師をされることになったきっかけは?
その後、実家の近くにある静岡の動物病院で勤務医として勤めました。 地方の病院だったので診療は譲り受けたイヌや拾ってきたネコが大半で、今のようにペットショップで購入したイヌ、ネコは少なかったような気がします。 そこで15年ほど勤務し、経験を積んだ後、成城のこの場所で診療することになりました。 ここは始めは、三重県にある南動物病院グループの分院として開院しました。 南先生の御夫婦と私が同級生と言うことから、ここを任されることになり勤務医として6年間勤めさせていただきました。 平成17年、横浜への移転に伴い、この場所から撤退することが決まり、一時は私も一緒に横浜で働かせて頂く事も考えました。 しかし、その頃にはかかりつけとして来られている患者さんも増えていましたし、この町にも愛着が沸いていたので、この病院を引き継ぎ 続けて行くことを選びました。 そこから、自分のクリニックとして、気持ちを新たに再スタートさせました。
ペットと飼い主さんを幸せにするメッセージを伝えていきたい
現在の診療の様子をお聞かせください。
ダックス、プードル、チワワ、柴犬を飼ってらっしゃる方が多いですね。このエリアの方は、皆さん愛情を注いでとても大事にペットを飼われており、そのためペットのちょっとした傷や体調不良でも物凄く心配されて診療に来られる方が多いですね。私としては、できるだけ飼い主さんが納得できるような説明をし、安心して帰っていただけるような対応をすることを心掛けています。うちではむしろ、重症な病気の子を診ることはあまりなく、健康管理のために相談に来られる方や、私が女性医師ということもあって話がしやすく立ち寄っていかれる方が多いです。サロン的な病院としても、利用していただいているようですね。2階に診察室があり、1階の自由的なスペースではトリミングやホテルサービスのほかに、歯みがき教室を行い、歯石をためないためのケアや指導をしています。最近ではワンちゃんでも歯槽膿漏になる子が多いですからね。また、自然療法も行っており、病気にならないための食事をアドバイスしたり、ハーブやホメオパシーを取り入れた健康法をお話ししています。また、アニマルコミュニケーションもこちらで行っています。
アニマルコミュニケーションとはどのようなものですか?
体調不良が続くが、検査してもどこも悪いところがない。そんな時はストレスが原因となっていることが多いのです。ですが、動物は言葉を話しませんから、どんなストレスを感じているのか飼い主さんにはなかなか分かりにくいもの。アニマルコミュニケーションとは、動物の気持ちに耳を傾け、それを飼い主さんに伝えることで生活環境を変えていくペットカウンセリングです。聞きなれない言葉かもしれませんが、今では専門に行っているところも多く、これまでにも原因不明の不調で苦しんでいた多くのペットたちが健康を取り戻してきました。アニマルコミュニケーションはそれ自体が病気を治すものではありません。今まで気付いてあげられなかったペットの気持ちを理解することで、飼い主さんの姿勢が変わり、ペットとの絆が強まるのです。
ネコの里親探しのお手伝いをされているとか?
患者さんが拾ってきたネコを、飼い主が見つからない時は自分で必ず1匹は飼っていただくことを条件に里親探しのお手伝いをしています。今年は8匹のネコを保護して、皆里親さんが見つかりました。しかも、どの子も今ではとても幸せな生活を送っています。先日里親先から「元気です。みんなで仲良くしています」と写真が送られてきて、とても嬉しい気分になりました。なんだかキューピットのような気持ちがして(笑)。もらわれていったネコたちの様子は、HPのブログや、毎月発行している「みなみ通信」でご紹介しています。
動物と人が笑って楽しくつながっていける、素敵な関係を築くのが獣医師の仕事
診療で心掛けていることは?
検査しても異常はなく、これといった症状も特にない。ただ「なんとなく元気がない」ということがありますが、そういう時は飼い主さんが話す会話の中に、原因となるヒントが隠れていることが多いんです。例えば、飼い主さんが良かれと思って与えていたガムが吐く原因となっていたり、家族構成を伺うと小さなお子さんがいて、その子のオモチャを飲み込んでしまっていたのが元気のない原因だったり。診療では飼い主さんとの会話を大切にして、お家でのペットの様子や癖、家族構成などを伺い、よく観察するようにしています。特に初めてのワンちゃん、ネコちゃんは分からないことが多いので、できるだけ時間を取ってゆっくり診察するようにしています。獣医師として新米だった頃は、なるべく飼い主さんと話したくないと思った時期もありましたが、今はその逆。「話の長い先生」になってしまいました(笑)。
印象に残っている動物はいますか?
いろんな性格のワンちゃん、ネコちゃんがいますよ。飼い主さんにいつも「可愛い、可愛い」と言われていて、「可愛い」という言葉に敏感に反応するダックスがいたのですが、食欲もあって元気な子だったのに、ある日お父さんから「たくさん食べるから太ったんじゃないの?可愛くないよ。ガツガツして野良犬みたい」と言われたことがショックで、元気がなくなりお父さんには寄り付かなくなってしまったり。ネコちゃんのケースでは、飼い主さんと恋人同士の気持ちでいて、ストーカーみたいな子も。独身の男性が飼っていたネコちゃんで、彼女が遊びに来ると嫉妬のあまり必ず吐いてしまう子だとか、仕事が忙しくて構ってあげられない日が続くと、仕事の連絡が入らないように携帯電話にオシッコをかける子だとか。動物たちは私たちが考えている以上にしっかり感情を持っていて、私たちが可愛がっている以上に飼い主のことを思ってくれているもの。ペットはただの生き物ではなく、心のある生き物です。なので、愛情をきちんと注いで、責任をもって育ててあげてください。
先生が獣医師になって良かったと思うことは?
動物の気持ちや病気のことがよく分かるようになったことですね。今後は総合的な健康管理や高齢化したワンちゃんの往診など、町医者として望まれていることをやりながら、ペットと飼い主さんが笑って楽しく暮らせるお手伝いをしていけたらと思います。思うに獣医師の仕事は、人と動物をつなげること。これからも飼い主さんとペットをつなぐ幸せのキューピットとして、ここで獣医師を続けていきたいと思っています。