岡 悠生 院長の独自取材記事
サクマ犬猫病院
(大田区/池上駅)
最終更新日: 2023/01/22
東急池上線池上駅からほど近い「サクマ犬猫病院」は開業70年。地域に根差した動物病院として長年診療を続けてきた。ペットのかかりつけ医として信頼し、古くから通い続ける飼い主も多く、中には初代院長の頃から通っている方もいるという。現在院長を務める岡悠生(ゆうき)先生は3代目。穏やかな語り口と笑顔が印象的だ。独りよがりの診療にならないよう、常に学び続ける姿勢を大切にしたいという岡院長に、診療への思いや、歴史ある動物病院でのやりがいなどを聞いた。 (取材日2017年9月13日)
地域に密着した獣医療を続け70年
とても長い歴史のある動物病院なのですね。
当院は1946年の開業です。開業当時、この池上エリアでは動物病院が珍しい存在だったようです。創設者の佐久間義城院長、そして息子である2代目の佐久間祥通(よしみち)院長と、地域に密着した診療を行ってきました。しかし2007年に2代目院長が50代半ばで他界し、その意志を継ぐため、動物看護士でともに病院を切り盛りしてきた奥さまが再開に向け奔走。縁あって私が2011年に、3代目として就任しました。私は大学卒業後、江戸川区の動物病院に勤務していたのですが、その病院と当院が古くからお付き合いがあり、紹介を受けたのです。歴史ある動物病院を任されるという大きな責任とやりがいを感じながら日々診療にあたっています。
病院の特徴について教えてください。
当院は小さな動物病院ですので、飼い主さんとの距離がとても近くアットホームな雰囲気です。その中で、毎日の診療が決して流れ作業にならないよう、飼い主さん一人ひとりのお話によく耳を傾け、単に病気を診るだけでなく、ご希望をしっかりくみ取りながら診療を進めることを心がけています。当院の経営者である2代目院長の奥さまは、20有余年、ずっと先代と一緒にさまざまなケースを見てきたので、飼い主さんの気持ちを理解し、寄り添うという経験がとても豊富です。心のケアまで的確に対応できるので、飼い主さんもとても安心されます。
他のスタッフの方についても教えていただけますか?
動物看護士がもう1名とトリマーが1名います。トリマーは経験豊富な大ベテランで、勉強熱心。飼い主さんのさまざまなご要望にお応えできます。強力なスタッフに囲まれ、私自身もさらなるスキルアップをはかり、診療、治療の質を上げていきたいと思っています。
初代・先代の遺した地域との絆を大切に
長いお付き合いになる飼い主さんも多いとお聞きしています。
先代の頃から通ってくださる飼い主さんも多く、中には初代院長の頃から40年近くのお付き合いという方もいます。大切な家族の一員だった動物が亡くなると、それまでかかっていた病院に通わなくなる場合も多いと思いますが、当院では再度いらっしゃる方がとても多いです。悲しい思いをされても、また信頼して来てくださり、再び当院とのお付き合いが始まる。長年、初代・先代が地域密着型の医療を実践してきた証なのだと感じますね。
動物たちの疾患の傾向について教えてください。
一般的に、春は消化器疾患、まだ暑さが残り湿度も高いこの夏の終わりの時期は、皮膚の疾患や外耳炎が多い印象です。年間を通しては、糖尿病、腎臓病などの慢性疾患で長く通っている動物たちも多いのではないでしょうか。人が高齢化しているのと同じく、老犬や老猫のご相談がかなり増えているのも感じます。ご家庭でのケアやペットの徘徊など、病気が落ち着いた後に出てくる問題も多いです。
ペットの高齢化で配慮しなければならない問題もいろいろあるのですね。
ペットだけでなく飼い主さんもご高齢な場合、ペットのお世話も大変で悩みも増えてきます。動物の病気のケアは飼い主さんが家でやらなければならないことも多いので、よく相談しながら、無理のない範囲で、最大限できることは何かを一緒に考えていきます。また、飼い主さん、あるいは動物たちの高齢化で、来院できなくなった時は往診も行っています。動物の老いは人と比べてとても早いので、その変化に飼い主さんの心がついていくことは大変です。飼い主さんが治療を怖がったり、検査を勧めても病気が見つかるのが怖いと受診をためらう方も見受けられます。治療以外の心のケアも本当に重要で、飼い主さんが状況を受け入れられるよう、時間をかけながら寄り添っていくことを心がけています。
院長先生が日々の診療で大切にしていることは何ですか?
獣医師は私一人なので、独りよがりの診療にならないよう気を付けています。他の先生の話を聞き、違った見方も学びながら柔軟な思考でいることが大切だと思っています。幸い、太田区内に先代が親しくしていた方が大きな動物病院を経営していらして、いろいろ気にかけてくださり、良きアドバイザーとなってくださるので、とても心強いです。先代は、地域の防災訓練やペットの避難訓練に早くから取り組むなど、地域との関わりを大切に活動してきたので知り合いも多く、そのつながりは当院にとってかけがえのない財産です。
小さな心配、相談ごとでも気軽に来院を
ところで、先生はなぜ獣医師になろうと思ったのですか?
一番の理由は、やはり動物が好きという思いですね。小さい頃からインコやカメ、ハムスターなどを飼っていました。中学の時は、家の前で動けなくなっていた猫を保護して病院に連れて行き、そのまま家族の一員として迎えました。その後、馬も好きになり、獣医師の資格を取って調教師など馬に関わる仕事がしたいと憧れるようになりました。その思いは大学入学後も持っていたのですが、もともと小動物も好きでしたから、学ぶうちにだんだん身近な動物たちを診る獣医師をめざす方向に落ち着きました。今の住まいは当院から近いのですが規則で動物を飼えないので、実家に帰った時に2匹の猫と会うのが楽しみです。ちょっと変わった子たちで、私が玄関を入ると、まず1匹がやってきてにおいを嗅いでチェックされ(笑)、次にもう1匹が様子を見にやってくる。他人には近づくとシャーッと怒るらしいので、一応、家族と認めてくれてはいるようです(笑)。
先生はこの沿線のご出身ですか?
私は川崎の出身です。川崎市は大田区の隣ですが、実家はちょっと離れたところです。池上線も当院に来るまで乗ったことがありませんでした。3両しかない車両が珍しくて、東京にもこんな風情のある乗り物があるのかと印象的でした。この辺りは下町っぽさがありますが、街並みが整備され、治安もよいので暮らしやすいですね。お店もいろいろそろっていて便利ですし、定食屋さんも入りやすくて居心地がいいです。普段は病院を閉めている昼休みも、手術や入院中の子のケア、往診などがあり忙しいですが、時間にゆとりのある時は、近くにあるお寺をふらりと散歩することもあります。毎年10月中旬に行われる「お会式(おえしき)」という寺の行事は、大通りに数えきれないほどの屋台も並び、すごい賑わいです。中日の、万灯という灯りの行列が深夜まで夜道を練り歩く「万灯練り」も、初めて見た時はとてもびっくりしましたし、毎年楽しみにしています。
お忙しい日々と思いますが、オフの時間の過ごし方を教えてください。
サッカー観戦が好きで、ここから30分ほどで行ける競技場に足を運ぶことが多いですね。仕事柄、入院中の動物たちがいない時など機会は限られますが。以前は自分でもフットサルを楽しんでいましたが、今は観る方専門で、出身地のチームを応援しています。音楽を聴くのも好きで、はやりのものより学生時代から好きだったバンドの曲をよく聴いています。推理小説は子どもの頃から好きですし、学生時代は海外のアクション映画をよく観ましたが、どちらも最近はご無沙汰です。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
動物病院というと、ペットの具合が悪くなければ行きにくいと思う方もいるかもしれませんが、アットホームな病院で小さな相談ごとでも丁寧に対応していますので、気軽に来ていただきたいですね。