吉村 彰 院長の独自取材記事
石川台どうぶつ病院
(大田区/石川台駅)
最終更新日: 2023/01/22
山田洋次監督作品の「おとうと」の舞台となった、石川台希望ヶ丘商店街に開院した「石川台どうぶつ病院」。何にでも前向きに取り組む吉村彰院長は、飼い主さんだけでなく、商店街の方々にも頼りにされている。掃除が徹底されていて、動物の匂いを感じない清潔な院内では、暖かい雰囲気に包まれた中、スタッフが明るい笑顔で出迎えてくれる。「話すことができないペットの気持ちを一番に考え、ペットの代わりに飼い主様に伝える。そのためにも、気軽に動物病院に遊びに来ていただき、コミュニケーションを取りたい。」と語る吉村院長は、動物と自然を愛する優しい先生だ。(取材日2010年11月11日)
自分にあった職業として臨床獣医師の道に進みました
石川台どうぶつ病院のマスコット達をご紹介ください。
うさぎのユキちゃん、犬のナイル、猫のコロンがいます。うさぎのユキちゃんは育児放棄された子で引き取りました。猫のコロンは、私が横浜で畑をやっている、そこの畑仲間の方が猫の赤ちゃんを拾って来られて、私が引き取ることにしました。小さい頃から犬や他の動物を見て育っているので、来院された動物たちを気にせず、待合室でのんびり過ごしています。犬のナイルは、一才過ぎてからここに来ました。しっかり大人になって、性格の分かる中〜大型犬が欲しくて、東京都動物愛護相談センターに行き、譲渡事前講習会を受け、譲渡してもらいました。他には、保護した鳥たち、すずめなどもいますが、鳥たちは春になって暖かくなったら空に帰してあげようと思います。 うさぎが好きなので、病院の看板の上にはうさぎのオブジェがあります。都内ではマンションなどの集合住宅が多いためか、鳴かず散歩もかならずしも必要がないうさぎを飼う方が増えています。来年は兎年なので、ますます人気が出て飼う方が増えると思いますよ。
獣医を選ばれたのはなぜですか?
いつも家には動物がいました。父は小鳥が好きで、カナリヤや十姉妹やセキセイインコを飼っていました。犬・猫・うさぎ・ハムスターなどを飼ったり、昆虫類やザリガニを取ってきては育てていました。進路を決める時、動物に携わる仕事がしたく、獣医学科に進みました。そして獣医になりました。小さいころから身近に動物と生活していたので、自分にあった職業として臨床獣医師の道に進みました。
飼い主様とのコミュニケーションの大切さを学びました
大学生活はいかがでしたか?
山口大学農学部獣医学科では、大学の敷地内に牧場があったため、牛と触れ合う機会が多かったです。牧場でよく遊んでいました。牧場の先生に牛の飼い方、育て方などいろいろなことを教えてもらいました。天候に左右されやすく、寒さや暑さに耐えながらの力仕事は大変ですが、楽しかったです。教授や大学院生や海外から来た留学生達からもたくさん影響を受けました。教授や大学院生からは論理的な考え方を教えてもらいました。留学生は、インド・タイ・中国など、東南アジアの方々が研修で来ていました。それぞれの国々で文化、考え方などが違うことが身近に感じられたので勉強になりました。内科学教室にいましたので、犬や猫などの臨床も学んできました。
卒業後はどのような経験をされましたか?
獣医師免許を取得して山口大学を卒業した後、東京大学付属動物医療センターの外科診療部門に進みました。学生時代は内科学教室にいましたので、外科学を学びたく選びました。麻酔管理、手術のアシスト、術後管理など学びました。たくさん動物を診てきて、飼い主様とのコミュニケーションの大切さや、治療をする上での素早い判断力を学びました。その後、山口県下関市、横浜市で勤務医として従事しました。開業動物病院では、ご近所のペットがほとんどで、犬・猫・うさぎなどの治療にあたっていました。そして、現在の動物病院を開院しました。大田区に開院したのは、小学校の時過ごしていた土地で、楽しい思い出がたくさんあったため、こちらに開院しました。
客観的な科学的データを判断材料に、素早い判断が大切
動物と向き合うことの難しさは何ですか?
動物と向き合って大変なことは、動物は言葉が話せないことです。言葉が通じれば、と思うことはたくさんあります。動物が異物を誤飲したときは特に思います。誤飲したときは吐き戻しがあるとのことで来院されることが多いのですが、それが何かを誤飲したと飼い主様が見ていたらいいのですが、見てないところで誤飲してしまっていたときは、言葉が話せない動物から聞き出すことができないため、大変なことが多いです。吐き戻しの原因は誤飲以外にも多くあるからです。その原因を吐き戻しの仕方や頻度や性情で考えていきます。たとえば、スーパーボール。スーパーボールは日常検査のレントゲンに写りません。大型犬で超音波検査をしたら十二指腸に丸いスーパーボールが確認できて、摘出手術をしたこともあります。そんな時、犬が「スーパーボールを飲んじゃった!」と、言ってくれればいいのですが、言ってくれないので苦慮します。言葉が通じれば、と思うことは他方では、動物医療は人の医療における健康保険のような制度がないため、自由診療料金制となっているため、飼い主様にも言葉が話せない動物を診察するには検査が多くなり、経済的な負担が増えてしまいます。なるべく最小の検査で原因を突き止めようと、自分の今までの経験や五感を生かして診ていくのですが、客観的な科学的なデータを判断材料にせざるを得ないことが多いです。私が診て重症だと思っても、飼い主様にその重症度を示すには、やはり客観的な科学的なデータを判断材料にせざるを得ないことが多いです。特に草食動物のうさぎなどは、弱さ、体力のなさをなるべく隠します。なぜなら、そのようなことを察知されたら自然界では捕食されてしまうからです。飼い主様も気づかないほど重症になっていることもあります。そのようなときもやはり客観的な科学的なデータを判断材料にせざるを得ないことが多いです。
診療はたいへんだと思いますが、病院以外の楽しみは何ですか。
5年くらい前から、横浜市で農地を借りて、畑をしています。今の時期は、大根、白菜・かぶ・にんにくなどを育てています。畑には週に一度は行きます。土を耕し、季節ごとの野菜を植えたりしながら、周りの風景の移り変わりを感じることができて楽しく、晴れた日には富士山も望めるのでリフレッシュもできます。
ペットを飼われている方に、メッセージをお願いします。
ペットの元気な時の姿を知っていれば、一刻も早い判断を迫られた時も、違いが分かり早く治療に入れます。そのためにも、ふだんから健康診断や予防接種などを通じて、飼い主様とペットの日常生活を知り、しっかりコミュニケーションを取り、治療に役立てていきたいと思いますので、気軽に遊びに来て下さい。