朝原大輔 院長の独自取材記事
ソルナ動物病院
(横浜市都筑区/センター南駅)
最終更新日: 2023/01/22
2010年6月に開院したソルナ動物病院。病院名には、ラテン語で太陽を表す「ソル」と月を表す「ルナ」が由来で、朝から夜まで動物たちの健康を見守りたいという思いが込められている。動物や飼い主の役に立つ動物病院になりたいと話す院長の朝原先生。言葉の端々から「とにかく動物が好き!」という純粋な思いが伝わってきた。 (取材日2009年10月24日)
動物たちは家族同然の存在です
開院にあたってセンター南を選んだ理由を教えてください。
勤務医時代からセミナーで定期的に通っていたので馴染みがありました。街並みの良さだけでなく、この地域に暮らす方は動物を家族のように大事にしているという印象が強かったのが大きな決め手ですね。私自身も動物は家族同然の存在ですので、 同じ想いを持っている方が多い場所で自分の病院を持ちたいと思っていましたから。実際に開院してみて、動物のことを自分の「子ども」のように大切にしている方ばかりです。その思いに応えられる診療をしていきたいですね。
まるで「街角のカフェ」のような雰囲気ですよね。
動物病院らしくない動物病院がコンセプトです。ご家族の不安や緊張感が伝わってしまい、病院嫌いになってしまう動物って少なくありません。ですから、ご家族がリラックスできるように、さまざまな工夫を施しています。待合室は扉を開放するとオープンカフェのようになるので、穏やかな気候の春先や初秋は扉を開放して、街角のカフェのように、散歩がてら気軽に立ち寄れるようにしたいですね。病院の工事中はカフェができると思っていた方もいたそうですよ。それくらいに病院らしくない外観の動物病院なんです。オープンな雰囲気でありながらも、安心して診療を受けていただけるようにプライバシーにもしっかりと配慮しています。
エキゾチックアニマルの診療もされるそうですね。
犬や猫だけでなく、どんな動物でもできる限り診療していきたいと思っています。私自身もウサギやフクロウの飼育経験がありますし、大学卒業後に勤務していた静岡県伊東市の動物病院では、バナナワニ園などの施設でワニ、 レッサーパンダ、マナティー、陸ガメ、トンビ、カワセミなどバラエティに富んだ動物たちを診療してきました。残念ですが、診療室に収まりきらないゾウやキリンは診療できませんが(笑)。私のスタンスとしては、診療室に入るサイズの動物なら診療すると決めています。もちろん、初めて診療する動物の場合は、飼い主の方に正直に初めての診療だとお伝えしますし、あくまで私のわかる範囲で診療を行います。それ以上の診療は、専門的に診療できる獣医師の先生を紹介させていただいたり、連携を取りながら診療に当たります。まずは、診療できるのかどうかだけでも、お問い合わせいただければと思いますね。
本音を言い合える関係が治療のカギ
診療の際に心がけていることはありますか。
動物に痛みを与えずに治すことを大切にしています。人間は治療の痛みを乗り越えれば楽になると考えられますよね。 しかし、動物には痛みを与えられる理由が理解できません。ですから、出来るだけ痛みのない治療を選択しています。さらに言えば、病気のリスクそのものを軽減することも、動物に痛みを与えずに済むことにつながります。例えば、エコーを積極的に活用し病気を早期発見したり、健康診断にも力を注いでいます。手術では無菌性脂肪織炎を防ぐために、エンシールシステムという糸を体内に残さない機器を採用しています。どなたでも、可愛い家族が苦しむのを見るのは辛いですよね。そのような動物とご家族の想いを大切に受け止めた治療を心がけています。
力を注いでいる治療分野についてお聞かせください。
ひとつは動物理学療法です。椎間板や股関節、膝などの整形外科手術後に行われるトレーニングのことで、いわゆるリハビリのことです。半導体レーザーを用いた理学療法、マッサージや温熱療法や運動療法などを用いて、痛みを取り除いたり、機能の回復を目指します。もうひとつは、アトピー性皮膚炎の治療です。症状や原因に合わせて、さまざまな治療法を組み合わせますが、大きな特徴としては、新しく開発された免疫抑制剤を用いた治療を行っていることです。ステロイド製剤と比較して副作用が少なく、高い治療効果が期待できます。
どちらも長期間におよぶ治療ですよね。
症状の程度にもよりますが、アトピー性皮膚炎は治療効果が高い薬剤を使用したとしても、数か月、数年単位の長い治療期間を必要とします。リハビリに関しても同じです。このような長期間の治療では、ご家族と獣医師が良好な関係を築くことが大切だと考え、治療を開始する際には、どんな小さなことでも聞いてくださいと何度もご家族にお話するようにしています。小さな不安や不満をその場で解決しないと、後々の信頼関係に大きな溝を作ってしまいます。精神的な負担だけでなく、治療を中断したり、転院先でまた一から治療を始める事になり、時間も費用も余計にかかってしまいます。となると、一番つらい思いをするのは人間ではなく動物なんです。ですから、診療室では遠慮せずにどんなことでも率直に話していただきたいと思っています。本音を言い合える関係を築き、ご家族とともに治療を乗り越えて、動物たちを幸せにすることが理想ですね。
ご家族とのコミュニケーションを大事にされているのですね。
はい。何よりもインフォームド・コンセントを大事にしています。しかし、私が きちんと説明したつもりでいても、相手の心に残っていなければ、それは言っていないのと同じです。治療の説明を受けた方が自宅に帰られて、獣医師からどんな説明を受けて、これからどんな治療をするのかを他のご家族にお話できるよう、難しい医療用語は使わずに、分かりやすくお話することを心がけています。ご家族の方も、分からない事や些細な疑問もそのままにせずに何でも聞いていただければと思います。
目標は「君に診てもらいたい」といわれる獣医師
子どもの頃から動物好きだったそうですね。
子どもの頃からハムスター、うさぎなど、いろいろな動物を飼っていましたね。小学生の頃は休日のたびに動物園やペットショップに連れて行ってもらうのが楽しみで仕方なかった、そんな子どもでした。高校生なって初めてキャバリア・キング・チャールズスパニエルという犬を飼いました。捨てられていたところを保護して、エルと名付けました。つい最近まで14年間生きてくれました。エルのことを忘れないために、病院のロゴに入れているんですよ。特に印象的だった動物はフクロウです。大学生の頃、都内でフクロウ専門店を見つけて通い詰めていたんです。大学生の私にとって、高価なフクロウは手が届かない存在でした。フクロウに会いたくて足繁くお店に通ううちに、「勉強に役立ててくれたらいい。」と譲ってくださり、嬉しくて大事に育てましたね。
今後の目標をお聞かせください。
診療の内容を充実させていくことが今後の課題であり目標ですね。低周波電気治療器などの理学療法の治療機器や、リハビリ専門スタッフの導入を検討しています。以前、専門学校で動物理学療法の講師を務めていた時の教え子とともに診療するのが私の理想なんですよ。私個人としては、「君でいいよ」でなく、「君に診てもらいたい」と言われる獣医師になることが目標ですね。国家試験に合格した時は、嬉しさと同時に「やっとスタート地点に立てた!」と気が引き締まる思いだったのを覚えています。これで診察台の前に立つことができるという喜びでいっぱいでした。その頃から変わらず、獣医師として必要とされる人間になりたいという思いで日々の診療と向き合っています。
読者のみなさんにメッセージをお願いします。
私たち獣医師は、動物に会うのは病気の時ばかりです。動物好きな私としては、元気な姿の時に会いたいといつも思っています。病院は病気の時に来る場所だと思わずに、普段から街角のカフェのつもりで気軽に寄っていただき、ぜひ元気な姿を見せていただきたいですね。健康診断で健康な時のデータを取っておくことを強くおすすめしますが、検査までしなくとも普段の状態を知っているだけでも診療に大変に役に立つんですよ。もともと大人しい子なのか、どこかに不調があって大人しいのか、普段の姿を知っていれば一目瞭然ですよね。それに普段から接していれば、私もみなさんの家族である動物たちにさらに愛着がわきますし、ご家族が気づかないような小さな異変にも獣医師として気づくことができると思うんです。