三浦民基 院長の独自取材記事
タムどうぶつ病院
(横浜市中区/山手駅)
最終更新日: 2023/01/22
山手駅から車で5分。海から寄せる風がどこか心地よく感じる本牧通り沿いに「タムどうぶつ病院」がある。2009年開業。動物をかたどったかわいらしい「TAM」のロゴマークに心和ませて足を踏み入れた院内は、とてもアットホームな雰囲気。「飼い主さんの気持ちに寄り添った診療を心掛けているんですよ」と、にっこり微笑む三浦民基院長の温かな人柄がいっぱいに感じられるようだ。押し付けにならず、飼い主にも動物にもなるべく負担のかからない診療をするのが三浦院長のモットー。開業とともに移り住んだこの町に長く根付き、少しでも役立てるような診療がしたいと、日々、努力を重ねている。「飼い主さんに満足していただくのが、自分にとっての最大の喜びでもあるんです」と言う三浦院長に、日々の診療で感じる思いや、獣医師を目指した理由、今後のクリニックの展望まで、たっぷりと語っていただいた。(取材日2011年8月30日)
目次
大事なのは普段のペットたちの様子をよく観察すること。見えない症状も見落とすことのない診療を心掛けたい
こちらを開業されたのはいつですか
2009年です。もともと川崎で勤務医をしていましたから、最初はその近くでの開業を考えていたのですが、なかなかいい場所が見つからず、探しているなかで、こちらとご縁があったんです。院内はプライバシーに配慮した個室の診療室と、動線に工夫した清潔感のある手術室がこだわったところ。理想のクリニックというにはまだまだ難しいですが、落ち着いて診療できる空間は、今、自分の提供しうる最良のものになったのではないかと思っています。クリニック名は、私のイニシアルT・Mと妻のイニシアルA・Mを組み合わせて作ったんですよ。響きもいいですし、実はクリニックを作る時にお世話になった方のイニシアルも、たまたま重なっているんです。まさに、「みんなで作ったクリニック」という思いも込められた、これしかないというクリニック名だと思っています。
どのような動物が多く診療にいらっしゃるのでしょうか
やはりワンちゃん、ネコちゃんが中心。なかでも小型犬が圧倒的に多いですね。ウサギやハムスター、モルモットなどの診療をすることもありますよ。飼い主さんは徒歩圏内にお住まいの方や、車でも5分、10分程度でいらっしゃる方がほとんどです。このあたりにお住まいの方は予防注射などをきちんとされていたり、ちょっとしたことでお電話くださったり気にされて来院される方も多く、とても動物たちを可愛がる、意識の高い方が多いと思いますね。何か病気が見つかった場合には、以前にも増して定期的に通院されたり、「早めにできるだけのことをしてください」とおっしゃる方ばかりです。診療していて気になることと言えば、動物たちも高齢化が進んでいますから、人間でいう成人病、心臓病や腎臓病などにかかる子が増えているという点でしょうか。意識の高い飼い主さんが多いですから、ちょっとした変化も気にしてよく見ていてくださったりするのですが、ただ、飼い主さんが変化に気付くということは、もうその時点でかなり病状が進行している場合がほとんど。気付かないうちに悪化しているので、常に、ワンちゃん、ネコちゃんの代表的な病気や、年齢ごとに気をつけたほうがいい病気というのを念頭に置きながら診療するようにしているんですよ。
飼い主さんは普段、どのようなことに気をつけたらいいのでしょう
そうですね。当たり前のことかもしれませんが、一番大事なのは、とにかくよく観察するということだと思います。普段の様子と何かちょっと違うということがあったら、それを知らせていただきたい。例えば、食べる量は同じでもスピードが遅くなったとか、元気はあるけれど痩せてきたというような場合、飼い主さんに聞くと「2、3日前までは普通に食べていた」とおっしゃる方もいますが、そんな期間で痩せることはまずないですからね。普段から日々の小さな変化に敏感になって、何かあったら病院に行く、という習慣をつけていただくといいかなと思います。また、そういうところに気配りするのが私たちホームドクターの役割だとも思っていますね。
飼い主さんの満足が自分自身にとっても一番の喜び。地元に根付き、役立てるクリニックでありたい
先生はずっと獣医師を目指していらしたのですか
いや。真剣に考えるようになったのは、高校生になって自分の進路のことを初めてしっかり見つめ出した時です。ただ小さい頃からいろいろな小動物を飼っていましたから、根底にはそういった経験があるんだと思いますね。実際に獣医学科に入学し、私は繁殖を専門に学びました。大学病院では高度なことを正しくやるべきという教えを受けてきましたが、勤務医になり実際の現場に出てみて感じたのは、できることをその場できちんとしてあげることが一番大事なんだ、ということ。決して難しい処置ばかりではなく、なかにはひょっとしたら飼い主さんでもできることを専門家の立場として行うことが多いですから、わかりやすく説明したり、少しでも医療行為と一般の方ができることの距離を縮められたらと思っています。私は子どもの頃に犬や猫を飼っていて動物病院にかかったという経験もなく、ずっと獣医だけを夢見てきたわけでもありませんでしたから、そういう人間が町のクリニックの獣医師として診療していていいんだろうかと、ふと思うこともあったんですよ。でも、日々の診療でやりがいも感じていますし、大変なことやいろいろな問題にもストレスなく取り組んでいかれていますから、この道を選んだことは間違いではなかったなと、今、心から思っていますね。
開業に合わせて引越されたそうですね
そうなんです。病院と住宅も一緒ですから、しっかり腰を落ち着けて診療しています。いらしてくださる飼い主さんたちと病院以外の場所でバッタリお会いすることもあるでしょうし、一層、この町に馴染み、頑張っていきたいと思いますね。少しでも地域のお役に立てればと、野良猫ちゃんの去勢不妊手術のお手伝いも、ずっとさせていただいているんですよ。やはり、猫好きな人もいれば、どうしてもそうでない人もいらっしゃいます。地域で人間とネコちゃんが共存していくには、例えばえさは出しっぱなしにしないとか繁殖をしないように手術するとか、そういうルールを守ってきちんと世話をしていかなければ理解も得られないと思うんですよ。微力ながら、少しでもそのお手伝いができればうれしいですね。
ご自身の自由な時間はどのように過ごされているのでしょう
今はまだ開業してそれほど経っていませんから、正直、病院のことが一番大事なんです。最終的には飼い主さんが満足していただけるのが最大の喜びですから、休みの日でも夜でもなるべく電話に出たり、対応できるものには対応するようにしているんですよ。それが私にとっても一番の喜びになっていますね。実は妻も獣医師で、時々、手術の助手をしたり、忙しい時には病院を手伝ってくれたりもしているんです。獣医同士ですから、同じ目線でものを見て話ができるので、とても心強く感じていますね。もしゆっくり時間ができるようなことがあったら、もう少しいろいろな勉強がしたい。それに、これまで病院中心できましたから、そろそろどこか旅行にでもいかれたらいいなあとも思っています。
飼い主の気持ちに寄り添った診療をすることが、一番大事なホームドクターの役目だと実感
診療するうえで一番心掛けていらっしゃるのはどのようなことでしょう
私は最初からなんでもすべてやれるだけの検査や治療をするというより、まずは飼い主さんにいろいろとご提案をし、納得いただいたうえで診療することをモットーにしていますから、とにかく飼い主さんとしっかりコミュニケーションをとり、そのなかで気持ちをよく汲み取ることを心掛けていますね。飼い主さんそれぞれでペットたちとの接し方はずいぶん違い、例えば何か重い病気が見つかった時「できるだけのことをこの子にしてやりたい」と最先端医療を求める方もいれば、「もう高齢だから無理はさせたくない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。それは、どちらがいい悪いという問題ではありません。その気持ちを尊重することが大切だと思うんです。このクリニックは大学病院のように最新医療機器がずらっと並ぶ最先端医療を提供する病院でもなく、まだ開業からも日の浅い病院なので、ここでできる最大の治療といえば、少しでも飼い主さんの気持ちに寄り添い、経済的負担をかけず、もちろん動物たちにもなるべく苦痛がない診療をすることです。それが私の目指すホームドクターとしての役目であり、一番大事にしなければいけないところだとも思いますね。
動物たちの健康を守りつつ快適な生活を送っていくために、読者にメッセージをお願いします
ワンちゃんはワクチンなどで定期的な来院の機会があると思いますが、ネコちゃんも含め、たとえ健康であっても毎年の健康診断には欠かさず連れてきてあげてほしいですね。とくに高齢の子になれば、それとは別に年2回くらいは通っていただいたほうがいいと思います。何かあれば、その時できる治療を早めにしてあげることで、いい結果に結びつくでしょうしね。人間も同じですが、やはり予防に勝る処置はありません。予防にずっと気を使ってきた子は比較的高齢になってもそれほど悪い状態にならず、残念ながらそうでない子は、結構あちこち何か症状が出てきてしまうんです。健康な時は面倒だと思ったり、本当に必要かと疑ったりして、あまり予防の大切さがわからないかもしれませんが、できることを健康なうちにやっておくのが、何より大切だと思いますね。最近は口腔内のケアもとても大事になっていますから、ぜひ注意していただきたいです。開業から2年。今は、ごく一般的な動物病院ですが、いずれは最先端医療やここでしかできない治療が提供できるような病院を目指していきたい。それが私の今後の目標でもあります。そのために、より一層努力を重ね、ホームドクターとして日々の出会いを大切にしながら、いろいろなニーズに対応できる診療をしていけるよう頑張っていくつもりです。それぞれの子に一番合ったベストの治療をご提案したいと思いますので、まずは気軽にいらしていただけるとうれしいですね。心からお待ちしています。