高尾幸司 院長の独自取材記事
野毛坂どうぶつ病院
(横浜市中区/日ノ出町駅)
最終更新日: 2023/01/22
横浜は「坂の町」。桜木町方面から野毛山動物園へと向かう坂道、野毛坂の途中、大きな十字路の角にある西洋風の建物の1階にあるのが「野毛坂どうぶつ病院」。白壁に、ネイビーブルーの看板が映えた、スタイリッシュな外観が印象的だ。出迎えてくれた高尾幸司院長は、地域密着型のクリニックで「できること」を広げるために、日夜努力を重ねる意欲的な人物だ。他2人の女性医師と若手動物看護師との息もぴったり合った院内は、常になごやかな雰囲気。そんなやわらかな空気の中で、開業10年目の節目を迎えた今、動物診療について、また当院で大事にされていることやその想いについて院長に語っていただいた。 (取材日2015年10月2日)
どんな動物も、どんな症状も診ることができる「スペシャルなジェネラリスト」をめざして
都会の動物病院だと思いますが、どんなペットが訪れますか?
近隣に住んでいるペットたちがほとんどです。昨今はいわゆる「ペット可」のマンションも増えて、都会でペットと暮らす方も増えてきています。また、この辺りは大きな公園もあり、どこか下町っぽい人情に溢れた場所。ペットを飼うのにもよい環境だと思っています。来院はやはり犬や猫が中心ですが、当院では診療する動物を限定していません。ウサギやリス、ハムスターなどの小動物から、ご要望があれば爬虫類なども診察します。エギゾチックアニマルに関しては最終的には専門の先生をご紹介することも多いですが、病院について情報をお持ちでない方や、「ちょっとしたことだから近くで相談したい」という方にご利用いただいていますね。
こちらのクリニックの特徴をお聞かせください。
当院では専門性を追求するというよりは、ジェネラリストとして広く一般診療を追求していきたいと考えています。めざすのは「スペシャルなジェネラリスト」。ご相談があった場合、飼い主さんの経済的なご状況にも配慮しながら、最適な方法を導くことを心がけております。専門機関への紹介が必要であればそのように、当院での対応をご希望であればそのようにと、しかるべき対応をとらせていただいています。もちろん、設備的な問題や人的問題で難しいこともありますが、あらゆる病気のスタンダードな治療を提供できるようになることを目標に、開業以来スタッフ一同努めてまいりました。
お話を伺っていると、ここに来れば何とかしてもらえるという安心感が湧きました。
できないことを「やります」とは言えませんが、「やって欲しい」と言っていただける限り、最大限のことをやりたいと思っています。そのために、常に新しい情報を求めることももちろんですが、幅広い分野に興味を向けて、技術的にも知識的にも、また設備的にも充実させて、引き出しをたくさん用意しておきたいと考えているのです。難しい症状を抱えながらも、金銭的、時間的な面から大学病院や二次医療機関にかかることが難しいペットも多くいます。また、それらの高度医療機関ではなく、慣れ親しんだ当院で、私どもに診て欲しいというご要望も多いのです。そんなご要望に応えられるだけのキャパシティを持っていたい、そしてできる限り多くの選択肢をご提案できる獣医師でありたいと思っています。100頭の動物がいれば、100通りの治療方法があり、それぞれの動物たちのおかれた環境や飼い主さんの考えなどで、ベストの治療は異なってくるのです。それぞれの子にベストの診療を模索しつつ、その実現が難しいとしても、さらにベターを探るというのが、当院の診療スタンスです。
価値観の合う獣医師を見つけるのが、飼い主にとって一番の仕事
診療において大事にされていることを教えてください。
動物を観察すること、実際に触ることです。動物にも顔色や表情がありますから、よく見て、触れて、感じることでわかることがたくさんあります。健康状態は表情や毛ヅヤに現れますので、治療方針を立てる上で何よりも信用しています。診察室に入ってきているときから、その様子を見て観察することを大事にしています。もちろん、ペットを診療する上で、飼い主さんと獣医師とのコミュニケーションはとても大切です。飼い主さんにしか分からないことを根気よく聞き出す作業なしには解決しない症状がたくさんありますので、コミュニケーションはとても重要なことだと考えています。加えて、ペットの表情や毛ヅヤをよく見て健康状態を把握することも大事にしながら、診療にあたっています。
こちらでは院長の他に2人の獣医師さんがいらっしゃいますね。
はい。当院では獣医師の完全指名制を採用しています。先ほどとも被りますが、動物を診療する上では、飼い主さんと獣医師とのコミュニケーションがとても大切ですし、それは獣医師と飼い主さんの信頼関係にも関わります。価値観や感覚、対人の相性などは本当に人それぞれ。獣医師と飼い主さんの間にしっかりとした信頼関係が築けないと、飼い主さんや動物を笑顔にできる本当の意味での良い診療というものは成り立ちません。そのような意味で、当院では飼い主さんの方からも、ご自身に合う獣医師をもっと積極的に選んでいただきたいと思っています。
特に力を入れている治療はありますか?
専門という訳ではないのですが、以前勤務していた動物病院で学ぶ経験があり、歯科診療については飼い主さんにお勧めしています。動物の場合、虫歯ではなく、歯周病がほとんどなのですが、全身のいろいろなところへ弊害が出てきます。歯科治療をした後に、全身状態がぐっと良くなることはよく実感しています。実際に、飼い主さんからも歯を治療してから「びっくりするくらい食欲が出て元気になった」という感想をいただくことが多いです。「歯さえ良ければもっと元気でいられたのに」と感じるケースが本当に多いので、ぜひ見直して欲しいですね。
夫婦二人三脚で始めた動物病院を、もっと頼れる場所に
開業10年、そもそもこちらでの開業を決められたきっかけは?
開院前は埼玉の動物病院に勤務していたのですが、横浜は妻の勤務地ということもあり、ちょくちょく訪れていました。当時から独特の街の雰囲気に憧れを持っていて、「開業するなら横浜で」という流れになったのです。物件をいくつもあたりましたが、前勤務先の院長にお墨付きをいただいたのがこの場所だったのです。洗練された街というイメージの強い横浜でも、このあたりは下町の色を濃く残す古い街。人とのつながりを大切にする下町気質も強く残っていて、開業当初から飼い主さんにお散歩ついでに差し入れをいただいたり、ランチを届けていただいたこともあったりと、良いおつきあいをさせていただいております。
そもそも院長が獣医師を目指されたきっかけは何でしょうか?
実は、私はもともと犬嫌いでした(笑)。怖くてとても触れなかったんです。それが、小学生の頃、友達の家で飼っていた犬がとても人懐っこくて、突然可愛くて仕方がないと思えるようになったのです。それがきっかけで、すっかり犬好きになった私は、両親の許しを得て、小学4年生の頃から犬を飼い始めました。その後、中学、高校と進学する上で、ブレることなく夢を追うことができたのは、他でもないこの犬のおかげです。この犬は私がちょうど大学在学中、3、4年生の頃に亡くなりました。体調を崩した犬のために何ができるかと、当時学生ながら教授に相談したり、資料にあたったりして手を尽くしたものです。その他にも、僕をこの道へ導いてくれたたくさんの動物たちには、今でもとても感謝しています。
休日にはどのように過ごしていらっしゃいますか?
2歳半になる息子と遊んだりして過ごすことがほとんどです。私はずっとサッカーをやっていたのですが、今後は息子と一緒にサッカーもできるといいなと思います。他にもスキーやスノーボードなど、体を動かしてアクティブに遊ぶことが大好きです。昔は友人たちとモーグルなども楽しんでいましたから。今は雪山もあまり行けていませんが、また行きたいですね。今度は息子も一緒に!
今後いらっしゃるペットと飼い主さんに向けて、メッセージをお願いします。
自分で言葉を話せない動物は、自分自身で通う病院を選ぶこともできません。ペットのことをもっともよく知っていらっしゃる飼い主さんが、ご自身の目で価値観や感性の合う病院を見極めることがとても大切です。病院との信頼関係が築けなければ、どんなに良い治療をしたとしても、ペットも飼い主さんも本当の意味で笑顔にすることはできません。ぜひ、積極的にご自身の価値観に合う獣医師を見つけてもらいたいですね。