下田 誠 院長の独自取材記事
府中の森動物病院
(府中市/東府中駅)
最終更新日: 2023/01/22
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京王線東府中駅から徒歩6分、国道20号線沿いに位置する「府中の森動物病院」は、レンガ造りのマンションの1階にある。木目調の落ち着いた院内は、ゆっくりと診察を待つことができるように多くの椅子が並び、診察室の広さにもこだわったそうだ。現在診察室の隣に予備の部屋があり、下田誠院長は、「将来2診にするための部屋にしようと思っているのですが、入院している動物たちとの面会室にしようかとも考えています」と話す。クリニックが発展していく過程で、この部屋がどのように使われるかはまだ未定だそうだ。「小さい頃は犬や猫を拾ってきては、よく親に叱られました」と笑顔で話す下田院長。得意分野の治療からプライベートに至るまで、多くの話を聞くことができた。 (取材日2014年12月8日)
目次
病気の初期段階を見逃さないこと、それが健康診断の大きな役目
クリニックについて教えていただけますか?
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2014年の4月に開業して8ヵ月経ちました。自分の考えた治療が行えることはとてもうれしく感じています。府中は、僕が勤務医だった頃に引っ越してきた場所で、交通の便も良いので選びました。造りでこだわった部分は、メインとなる診察室を大きくとりたかったので、現在は1診しか使用していませんが、2診体制をとれるように2部屋になっています。その他には検査室や処置室、手術室、入院室、トリミング室やペットホテルも併設しています。院内でできる検査は、血液検査、超音波、レントゲン、麻酔モニターを利用した血圧測定など、治療に必要な一通りの検査ができます。勤務医の頃は小鳥やハムスター、フェレット、うさぎなども診察していたのですが、こういった動物は、かなり専門的な分野の勉強をしなければいけないので、開業してからは犬と猫を診療対象としています。
先生は眼科や循環器疾患の治療も得意とされているそうですね。
大学時代に獣医外科学教室の眼科班に所属して、動物たちの眼病の治療を勉強してきました。通常、眼科の分野は、大学病院などの大きな医療施設を紹介されてしまうことが多く、一般の開業医で診察できる所は限られてしまいます。動物たちも人間と同じように白内障や緑内障、網膜剥離、ドライアイなどの疾患にかかりますし、中には放っておくと失明する危険性のある病気も存在します。当院であれば、大学病院に行かなくても、ある程度の診断をつけることができますので、おかしいなと感じたら、すぐに連れて来てほしいですね。また循環器疾患は、開業する以前に勤務していた病院で、月に1回専門の先生の元で勉強しました。ペットも高齢化し、高血圧や糖尿病などが増えてきていますし、これらの循環器系の病気は、飼い主さんも気付かないうちに進行することがほとんどです。悪化させないためにも、できる限り早期発見できるように努めています。
ペットたちの病気を早期発見するにはどうすればよいのでしょうか。
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私たち人間が健康診断をするのと同じように、ワンちゃん猫ちゃんの健康診断が大切かなと思っています。当院でも行っていますよ。飼い主さんへの問診やペットの身体検査はもちろんのこと、尿検査や糞便検査、血液検査、レントゲン、腹部や心臓の超音波検査を行い、循環器疾患や腎臓病など、さまざまな病気の早期発見に役立てています。ただし、健康診断はタイミングがとても大事で、人間であれば1年に1度でも大丈夫ですが、ペットたちの1年は人間に換算すると4、5年分に相当してしまいます。現時点での評価に問題がなければ、3ヵ月後、半年後も問題がないかというと、そうではありません。ワンちゃんや猫ちゃんたちの疾患は、症状が出たときにはかなり進行していることが多いので、健康診断で病気の初期段階を見逃さないことが重要なのです。ぜひ3ヵ月から半年ごとの定期的な健診を心がけてほしいですね。
獣医師としてどれだけ飼い主に寄り添えるか、それが治療方針にも大きく影響する
診察時に注意されていることはどんなことですか?
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ペットたちは口がきけないため、飼い主さんも「何となく調子が悪そうだ」と言って連れてくることが多く、本当に病気のサインなのか、それとも元気がないだけなのかを、医学的な観点からしっかりと見極めるようにしています。あとは、ペットたちの些細な変化を見過ごさないように、五感をフルに活用することですね。聴診や触診、視診により、飼い主さんが気付かない体の異変はないだろうかと探ったり、薬を出すときも、実際に嗅いでみたり舐めてみたりして、匂いや味にも考慮しています。
飼い主さんと接するときは、具体的にどんなことを心がけているのでしょうか?
飼い主さんの話をきちんと聞き、必ず飼い主さんの目を見て話すようにしています。目を見て話さないと飼い主さんも不安ですし、信頼も得られませんよね。飼い主さんたちのペットへの思いはさまざまで、何もしないでほしいと言う方から、どんな治療をしてでも治してほしいと言う方、助かる見込みがないなら安楽死を選ぶと言われる方までいろいろです。基本的に飼い主さんの意見を尊重した治療を行っていきますが、獣医師としては、何とか治療の方法を見出すお手伝いをしたいと思っていますので、飼い主さんが満足できる治療方針を話し合うことも重要だと考えています。また最近の飼い主さんを見ていて感じるのは、ワンちゃんや猫ちゃんたちを溺愛している飼い主さんが多いので、ペットが亡くなった後、深刻なペットロスになる方が増えるのではないかと心配です。今後はそういった飼い主さんへの心のケアも行う必要があると感じていますね。
先生は開業まで、どちらで臨床経験を積まれたのですか?
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日本獣医生命科学大学を卒業後、吉祥寺にある「おおむら動物病院」に、知人の紹介で3年間勤務し、一般診察の基礎やさまざまな検査の仕方などを幅広く勉強しました。その後、中野にある工藤動物病院で診療を行いながら、院長の側で眼科の臨床経験を積みました。循環器の勉強をしたのもこのクリニックです。大学卒業当時から、いずれは開業しようと考えていたのと、次第に自分で考える治療を行いたいという思いが湧いてきて開業を決心しました。
人間を診察する医師から動物を診察する医師へ、友人のひと言で大きく変わった進路
実際に獣医師として臨床の場に立ったときに感じたことはありますか?
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大学の勉強は机上の知識がメインですが、動物病院は間に飼い主さんが入るので、どちらかと言うとサービス業だと感じましたね。いかに飼い主さんが気持ち良く来院してくれて、ペットの診察をさせてもらえるかが一番治療に影響する部分だと思いました。僕も勤務し出した頃は、飼い主さんとうまくコミュニケーションがとれず、最初の1年間は苦しみました。声のトーンが低すぎると、飼い主さんは不安になりますし、かと言って、病気の重い子については、それなりの声のトーンで話さなければならず、大学では教わらない部分でずいぶん苦労しました(笑)。最初に勤務した「おおむら動物病院」では、飼い主さんとのやり取りなど、教科書に載っていないことを、ずいぶん勉強させてもらいましたね。
先生が獣医師になろうと思われたきっかけを教えてください。
最初は違う職業に就きたいと思っていたのですが、高校生のとき、動物好きの僕を見た同級生が「そんなに動物が好きなら、獣医師になれば? 」とすすめてくれたのがきっかけで、獣医師という職業を意識するようになりました。最終的に獣医師になる道に進んだわけですが、小さい頃から犬や猫を拾ってきてはよく叱られていた僕を知っていたからでしょうか、父はそのことについて特に何も言いませんでしたね。
お忙しいでしょうが、休日はどのように過ごされているのですか?
6歳と1歳9ヵ月の息子がいるので、なるべく一緒に遊びに行くようにしています。家では今、熱帯魚を飼っているので、そのうちクリニックにも水槽を置きたいと考えています。水の中の生物は癒やされますし、子どもたちも水槽を眺めるのが大好きでしょっちゅう見入っていますね。そのせいか、お店で熱帯魚を見るたびに買ってくれとせがまれます(笑)。
今後の展望や読者へのメッセージをお聞かせください。
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現在は一次診療の形をとっていますが、今後は得意としている眼科や循環器、その他一般診療の知識を深めて他とは違う、一歩前を行く1.5次診療をめざしていきたいですね。そのために、できるだけセミナーに参加して、他の先生方とも積極的に情報交換をしています。モチベーションも上がりますし、やる気が湧いてきて良い刺激になりますね。また、飼い主さんたちには、予防の話やしつけ、食事のことなど、どんなことでも構わないので、気軽に相談してほしいです。ワンちゃんとのお散歩の途中でも構いません。普段から来てもらって、動物病院に慣れてくれれば、ペットたちも病気で連れてこられたときに、不安にならずに済みますから。ぜひ、“病気のときだけ来る場所”と考えずに“気兼ねなく何でも相談できる場所”としてとらえてほしいですね。