松原淳平 院長の独自取材記事
まつばら動物病院
(江東区/潮見駅)
最終更新日: 2023/01/22
JR京葉線潮見駅から徒歩約12分。目の前の小学校から子どもたちの元気な声が聞こえてくる住宅地の一角に、2014年11月に開業した「まつばら動物病院」。診療対象動物は犬・猫・うさぎ・フェレット・ハムスター。暖色系でまとめられた院内は動物病院特有の冷たさや動物のにおいを感じさせず、不安を抱えた飼い主も心地よく過ごせそうな空間だ。2室の独立した診療室には大きなモニターが設置されており、そこでレントゲンや超音波診断装置の画像、病気に関する資料などを見ながら診療内容の説明を受けることができる。真摯な話しぶりと柔和な笑顔で一つ一つの質問に丁寧に答えてくれる松原淳平院長は、開業以来、昼夜問わずほぼ不休で診療にあたっているのだという。そんな松原院長の、見た目の爽やかさとは裏腹な動物診療にかける熱い思いについて聞いた。 (取材日2015年3月11日)
目次
桜並木の動物病院。救急症例にも対応できるよう勤務医時代から修行の日々
2014年に開業されたばかり。院内はとても温かみのある雰囲気ですね。
来院される飼い主さんは女性が多いですから、男性的な趣味を前面に出さずに、女性が居心地がよく過ごせる空間をつくりたいと思ったんです。特に待合室については清潔感を大切にして、あまり動物病院っぽくないような柔らかい色合いでまとめてほしいとデザイナーさんにリクエストしました。路面に出入口がふたつあるテナントだったので、片方を医院の入口に、もう片方をトリミングルームにして、外からトリミングしているところが見えるようにしてあります。道路を挟んですぐ向かいに小学校があるので、学校帰りのお子さんがよく覗いていきますよ。
ここに開業された理由を教えてください。
この地域は東京オリンピックに向けて開発が進んでおり、これから人口の増加が予想されています。でもその割に動物病院が少なかったということがひとつ。なにより決め手になったのは街の雰囲気でした。私の実家は調布なのですが、この辺りの雰囲気が生まれ育った土地と似ていて、下町人情というか、住んでいる人たちがとても温かい。私はどちらかというとくだけた診療スタイルなので、フレンドリーに接してくれる飼い主さんが多いこの地域とは相性が良いと感じています。また、目の前の道が桜並木なんですよ。開業してからまだ春を迎えていないので、桜が咲くのが今から楽しみです。ロゴマークにも葉桜を眺める犬と猫という図柄を使っているんです。
開業される前の経歴を教えてください。
大学では、大動物の研究室に所属していました。今の診療対象動物を見ていただいてもわかるとおり、本当は小動物を志していたのですが定員の問題もありまして。でも、農家に泊まりこみで研修に行ったり厩舎(きゅうしゃ)で乳牛の世話をしたり、日本を支えてくれる産業動物の大切さを肌で感じられたのは良い経験だったと思います。大学を出たあとはこちらに戻ってきて、昼間と夜間、それぞれ別の病院に勤務しながら、ベーシックな診療と、夜間緊急診療の経験を積んできました。
夜間も勤務されるとなるとかなりハードだったのではないですか?
そうですね。ただ、緊急の症例は通常の診療時間帯にはあまり遭遇しないんです。自分で開業するのであればよほど専門的な治療でない限りなるべく自分のところで完結させたい。当然、緊急症例も想定しないといけませんから、多少無理をしてでも経験を積んでおくことが必要だと考えていました。開業してからも夜間の緊急外来を受け付けています。小動物は容態が急変することも多いですし、飼い主さんの不安を少しでも減らせるようにしたいですからね。
「一生のかかりつけ医」をめざして、予防や飼い主の心のケアまで考えた診療を提供
診療に対する思いをお聞かせください。
最新の知識や技術を身につけるのは当たり前のこととして、皆さんの「一生のかかりつけ医」になることをめざしています。そのためには真摯な対応を続けさせて頂き、飼い主さんに信頼していただくことが大切だと思っています。緊急外来を設けていることもそうですし、例えば当院では、この規模のクリニックでは珍しい新鋭の超音波診断装置や、手術機器を導入しているのですが、いくら良い装置を使ってもその機能を使いこなせなければ意味がありませんから、セミナーに参加して技術もブラッシュアップしています。それから飼い主さんへの説明にも心を砕いていますね。特に慢性的な疾患の場合は、ご自宅でのケアについてや薬の飲み方など、飼い主さんにその病気に関しての知識を身につけていただかないといけません。ですから、なるべくわかりやすい言葉でお伝えすること、画像や資料を示して確実に理解していただけるような工夫をすることを心がけています。
予防やトリミングにも力を入れていらっしゃいますね。
トリミングは信頼できるトリマーさんに対応してもらっています。今は週に3日なのですが、評判が良いので1日増やそうかな、と思っているところです。マイクロバブルという炭酸水を使ったシャンプーも好評ですね。毛がふわふわになったとか毛抜けが良くなったという声をよく聞きます。また、当院ではトリミングの前後に無償で触診、心音の計測、体重測定を行っています。普段から接していればちょっとした変化にも気が付きやすくなりますから、病気でなくても、トリミングや爪切りだけで結構ですので定期的に来院してほしいですね。
老齢動物のケアも積極的に行われているのですか?
老衰や腎不全の末期のような状態だったとしてもできることがある、というのが当院の考え方です。突き詰めれば、延命のための高額な治療から寝返りを手伝ってあげるといった心づかいまで、さまざまな選択肢が想定できます。その中で飼い主さんと話し合いながら方針を立てていくというスタンスを大切にしています。ペットのケアは飼い主さんの心のケアでもありますからね。
動物との触れ合いを大切に、いつまでも気軽に立ち寄れる動物病院でありたい
獣医師をめざしたきっかけを教えてください。
幼いころに父を亡くし、母ひとり子ひとりの家庭で育ちました。そんな私にとって、母の帰りを待つ時間の寂しさを埋めてくれたのが生き物たちでした。いつも昆虫や動物に囲まれていましたね。私が子どものころには調布の辺りもまだ自然がたくさんあったので、昆虫採集やザリガニ捕りをして過ごしていました。ゴキブリをカブトムシだと言い張り飼おうとしたときにはさすがに母に止められてしまいましたが(笑)。獣医師を意識するようになったのは小学生の頃です。ハムスターを飼っていたのですが、その子が体調を崩したときに初めて動物病院に行って、こんな職業があるのか、と。ただ、数学が苦手だったので高校では文系だったんです。そのまま文系の学部に進学することも考えたのですが、サラリーマンは性に合わないし、弁護士になれるほど優秀ではない。じゃあどうしよう、となったときに子どもの頃の思いが再燃してきて、母に頼み込んで浪人させてもらい、獣医学部に進学したんです。
今でも動物は飼われているのですか?
はい。犬と、ミズガメを60匹ほど飼っています。水槽の水を交換するのもひと苦労ですよ(笑)。お昼休みにカメの世話のためだけに家に帰ったり。理解のある家族で助かっています。ちなみに日常的に動物と接することの効果が科学的に検証されているのをご存知ですか? 例えば犬は、人に褒められることでとても大きな喜びを感じるんです。犬が喜んでいる姿を見て飼い主さんも癒やされますよね。逆に飼い主さんが落ち込んでいたら犬も悲しさを感受して、近くに寄り添ってくれたりする。そういう相互作用があるんです。これからも、そんな人と動物とのよい関係を築くお手伝いができたらいいなと思っています。
獣医師になって良かったと感じられるのはどんな点でしょう。
獣医師はどこまでも突き詰めて勉強できる職業だというところでしょうか。人間の医療と同様、動物の医療も日々進化していますから、自分がその気になりさえすれば新しい情報を仕入れて次々と飼い主さんや動物たちに還元することができる。つまり、自分次第で提供できるサービスの質が変わってくるわけです。サボっていたらすぐ取り残されてしまうから、常に勉強し続けないといけない。そういう意味で、仕事以外はズボラな自分のキャラクターに向いているのかな、と思いますね。こんなこと言うと妻にまた怒られてしまいますが(笑)。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
先ほど申し上げたとおり夜間の診療も受け付けておりますし、今年はお正月も休まず営業しました。体力的にはしんどいですが、飼い主さんから「今時ここまで熱い人も珍しいよね」と応援していただけるのがとても嬉しいです。これからもおごることなく、診療させていただいているという気持ちを忘れずに、皆さんに気軽に来院していただけるアットホームなクリニックであり続けたいと思っています。