奥田一士 院長の独自取材記事
ゆめ動物病院
(大田区/馬込駅)
最終更新日: 2023/01/22
東京都大田区は、都心でありながら比較的静かなエリアが多い。その一角にある「ゆめ動物病院」は、都営地下鉄浅草線・馬込駅と、東急大井町線・荏原町駅の二つを最寄り駅とする交通至便な動物病院だ。付近に提携駐車場もあるため、電車が苦手な動物でも安心して連れてくることができる。白と青を基調とした院内は、道路に面する壁がガラス張りになっており、日当たりの良い作りで、病院によく見られる閉鎖的な印象はほとんどない。院長である奥田一士先生は、そうした院内で太陽の光を感じながら、日々診察をしているそうだ。「できるだけ動物や飼い主さんの負担が少ない治療をして行きたいですね」と語る奥田先生に、獣医師としての歩みや治療方針をお伺いした。 (取材日2015年4月22日)
より喜んでいただける治療を目指して
まず、先生が獣医師を志したきっかけについて教えていただけますか。
最初は馬を専門とする獣医師になりたいと思っていました。小さい頃競走馬が好きでしたので、怪我をした馬を何とか治して、また走れるようにしてあげたいと思ったんです。しかし、いろいろなご縁があって、当時同じ職場に勤めていた先輩に「小動物のほうも勉強してみたら? ちょうど人を探している動物病院があるから紹介するよ」と勧められたんです。そちらで働き、動物を治療して喜んでくださる飼い主さん達の顔を見て「こっちの方が自分にはあっているのでは」と思い、こういった一般的なペットを診る獣医師に路線を変えました。
こちらに来る動物の種類や症状などに傾向はありますか?
時期にもよりますが、猫を連れてこられる方が半分くらいですね。これは当院だけではなくて、全国的な傾向でもあるんですが、犬の登録数よりも猫の飼育数のほうが増えているんです。犬は登録が必要ですが、猫には必要ないというのもありますね。我が家もそうなんですが、犬と猫の両方を飼っていたり、何頭か飼っている方もいらっしゃいますし。また、春先には狂犬病の予防注射などで犬の来院数が増える時期もあります。症状のほうについては特に傾向というものはなく、さまざまだと思います。
こちらの病院は、とても清潔感と明るさのあるつくりですが、これは先生がお決めになったのですか?
はい。以前別の病院に勤めていた頃、「白一色だと閉鎖的な雰囲気が強いな」と思ったことがあるので、何か他の色を入れたくて。妻に相談したり、いろいろ他の病院を見た結果、白と青を使おうと思いました。それから、せっかく日当たりのいい場所なので、一面ガラス張りにして明るい雰囲気にしようと。仕事をしていても日の光を浴びられることと、一日の時間の経過がわかるというのが気に入っています。症状が重い子がいる場合はここに何日も泊り込むこともあるのですが、そういったときでも良い気分転換になっていますね。
動物にも飼い主さんにも負担が少ないように
こちらの病院ではペットドックを3コース用意されていますが、これはどういったお考えでしょうか?
人間の健康診断と同じように、病気を未然に防ぐ、あるいは軽いうちに対処をするというのが大きいですね。Aコースが一般的な健康診断で、Bコースはもう少し詳しい検査、Cコースは何か持病がある子とか、「うちの子は高齢で心配だ」という方向けに設定しています。血液検査だけでもいろいろなことがわかりますので、飼い主さんが「簡易なほうがいい」という場合や、検査が苦手な子の場合は血液検査のみというのもやっています。犬や猫は人間の4倍早く年を取るといわれていますので、若いうちは1年に1回、シニアとされる年齢になったら1年に2回いずれかの検査を受けるようにおすすめしています。そうすると人間ドックとほぼ同じペースで検査を受けることになりますので。ただし、心配しすぎて「毎月検査を受ける」というのはあまり良くないと思いますね。動物にとっても飼い主さんにとっても負担がかかりますし、それによってまた別の悪影響があるといけませんから。
定期的な検査によって、病気を早く、適切に治療しようというお考えなのですね。
そうですね。犬だと狂犬病ワクチンのためなどで定期的にいらっしゃる方が多いんですけども、特に猫を完全室内飼いにしていて「うちの子は外に出ないから大丈夫」という方もいらっしゃいます。しかし、体質や品種、加齢によって調子が悪くなることもありますので、それを見逃さないことが一番だと思います。本当に病院が必要ない状態ならいいのですが、飼い主さんが知らない間に病状が進行していって、気付いたときにはもう手遅れ……ということになっては悲しいですから、定期的な検査をおすすめしています。
通常のシャワーではなく、マイクロバブルという機材を使っているとお伺いしました。
普通のシャワーなどより負担が少ないので、肌を優しく洗うことができます。最近は随分改善されてきたのですが、昔のペット用のシャンプーはかなり刺激が強いものが多く、必要な皮脂まで全て洗い流してしまうことがままあったんです。皮膚の症状を予防したり改善するためにシャンプーをするのに、皮脂を落としすぎてしまうんですね。人間でもよく「汚れを落とさないと」と思って、必要な分の皮脂までどんどん落としてしまう方がいますが、それをやると逆に肌が傷んでしまいますよね。動物も同じです。刺激が強すぎて、トリマーなど洗う側の手がボロボロになってしまうということは、動物の肌にもそれほど刺激を与えているということです。少しずつ刺激の弱いシャンプーが広まってきたので、最近は良くなってきましたが、「より優しく、負担のない機材があれば」と思ってマイクロバブルを導入しました。うちが導入した頃はまだ少なかったですけれども、少しずついろいろなメーカーがこういった機材を作るようになって、動物病院でも広まってきていますね。
日頃からスキンシップを取っておくことが大切
特に暑い時期には皮膚の病気が増えやすいそうですね。予防のために飼い主さんがご自宅でできることはあるでしょうか?
猫は自分で毛づくろいをするのであまり心配ないのですが、犬の場合はやはりシャンプーをしてあげたほうがいいですね。犬と猫を「近い動物だ」と考えている飼い主さんが多いんですが、獣医学的に見ると毛や皮膚のつくりが結構違うんです。犬のほうが、皮膚の感染症になりやすく、かゆみが起こりやすいです。ですから、「よく体をひっかいている」とか、「最近特定の場所をかきむしっている」ということがあったら、早めに動物病院へ相談してほしいなと思います。人間と同じように、犬もかゆいのを何とかしたくてそういうことをするんですけども、放っておくと傷ができてどんどん悪くなっていってしまいますから。
日頃の生活や病院に来る際、飼い主さんが気をつけるべきことはありますでしょうか?
誰が触っても大丈夫なように、普段の生活でスキンシップを取っておくといいかなと思います。以前、息も絶え絶えといった状態で来院した猫がいたんですが、飼い主さんに話を聞いてみたら「この子は私でも触ったことがない」という子で。来たときも普通のキャリーではなくて、捕獲器でというほどでした。その子はそのまま亡くなってしまったんですが、もし普段から触られることに慣れていれば、もう少し処置ができたかもしれないと思うと悔しくて。検査のときも同様で、ほんの数分だけでもじっとしていられる子だとスムーズにいきますし、動物にとっても飼い主さんにとってもストレスが少なくなります。どうしてもダメなときは鎮静剤も使いますが、使わないことが一番ですからね。
それでは最後に、先生の今後の展望をお聞かせください。
まずは、小さな病気の兆候や初期症状を見逃さない診療を今後も続けていくこと。施設や機材の関係でここでは対応しきれない場合もあるのですが、そういったときでも、ここでできるだけ詳しく調べて、それからよりその症状が得意な病院や先生のところへご紹介するようにしていますので、その精度をより高めたいなと考えています。大学病院に勤めていた頃、あまり前後事情がわからないまま来て、大学病院でいろいろ検査をしてやっとどこが悪いかわかる……というケースをいくつか見たのですが、それだと動物にも飼い主さんにも負担が大きいですから。ストレスや時間、お金などいろいろな面で負担を減らすために、一次診療の精度を高めていきたいと考えています。