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矢野貴之 院長の独自取材記事

とよす動物病院

(江東区/新豊洲駅)

最終更新日: 2023/01/22

新しいマンションや商業施設が立ち並び、開発が進む豊洲。住み移る人も日々増え続けているこの場所に、2015年3月に開業した「とよす動物病院」。まるでカフェのような清潔感溢れるスタイリッシュな院内が印象的だ。病気を未然に防ぐことに力を入れる矢野貴之院長。ワクチンやフィラリアの予防はもちろん、病気の早期発見や早期治療の大切さについて、しっかりと飼い主の理解を得ることから徹底する。また、ペットの歯科治療を専門的に学んできた経験を生かし、すでに悪化している歯周病治療はもちろん、歯周病にならないための予防にも尽力している。「飼い主さんと心の距離が近い医院をめざしたい」と話す矢野院長に、開業間もないこの医院がめざす医院像や、飼い主への思い、治療理念など、じっくりと伺った。 (取材日2015年4月28日)

ペットの病気予防のためにも、気軽に遊びに来られる医院でありたい

予防治療に力を入れているそうですね。

定期的な健康診断の受診を啓発したり、お散歩のついでに遊びに立ち寄ったり、爪切りや体重を測りに来てくださいねとお話しています。それは、単純に体の調子を診るだけでなく、普段からペットたちに病院という場所に慣れてもらうことが目的でもあります。そうすることで、ペットは病院を、「痛みなく過ごせる安全な場所」を認識します。飼い主さんにとってもペットたちにとっても動物病院が身近な存在となり、必然的に病気の予防や早期発見につながるのです。狂犬病やフィラリア、ノミ・ダニなどの病気はワクチンや投薬で予防をしていきます。しかし、予防できる病気は少ないのが現実。そういった病気は、定期的に来院いただき、早期発見・早期治療に努めることが何より重要なのです。当院では、ペットそれぞれの年齢や種類、性別、体質などに応じて、今後起きる可能性の高い症状をお伝えしています。そうして、未然に防げるよう、生活習慣や食生活のご指導なども行っています。

先生が考えられる予防の大切さは何ですか?

人間の医学では、予防の大切さを皆さんご理解していますよね。それは、ペットにも当てはまることです。特に、ペットは言葉が話せない分、人間よりもペットの方が圧倒的に病気の早期発見が難しいのです。最近は、予防に関して高い意識を持つ飼い主さんも多く、皮膚が赤い、涙が出る、歩き方がおかしいなど、目で見てわかるものならばすぐに病院にお連れいただけます。しかし、目に見えない症状は病院でしかわからないことも多いのです。体重の変化だって、毎日ペットを見ている飼い主さんにはなかなか気付けないものですよね。そんな小さな変化でも、見落としてしまうと手遅れになることも。人間よりも病気の進行が早いペットたちですから、飼い主さんが普段から気遣ってあげることが予防の鍵となるのです。

医院では、歯科治療も行っているのですね。

開業前に2年ほど、ペットの歯科専門医院で勤務していました。その経験から、他院で治療ができないと言われてしまったお口のトラブルであっても、ご相談いただければ何かお力になれるかもしれません。暴れてしまうペットたちの歯科治療は、一般的に全身麻酔が必要不可欠。そのため、麻酔をする段階まで悪化していない歯周病の場合は、「問題なし」と診断されてしまうことが多いのです。しかしそのまま放置してしまえば、自然治癒することはなく、悪化していくばかり。最終的には、抜歯を余儀なくされることも多いのです。ペットたちも毎日食事をするのですから、お口の中は少しずつでも汚れていきます。3歳以上の犬猫の80パーセント以上が歯周病といわれており、歯周病が腎臓、心臓、肝臓など他の臓器まで悪くするとの報告もあるのです。麻酔をしなくても予防的な治療方法はたくさんあります。ペットたちが一生自分の歯で美味しくご飯が食べられるように、まずは飼い主さんに、ペットたちのお口の健康にご興味をお持ちいただきたいですね。

どんなことでも話せる。どんな時でも頼れる。そんな獣医師をめざして

先生が獣医師をめざされたきっかけは何ですか?

幼少期から動物が好きで、生き物に関わる仕事をしたいと思っていました。それは高校生の進路決定の時期まで変わることなく、担任の先生に相談したのです。すると、「動物の何でも屋さんになりたいならば、体のことを知るのが一番だ」と言われて。そこで、獣医師を志すようになりました。私は、中学生の頃から水泳をしていて、長年コーチも務めており、下は3歳から上は高校生まで、幅広い年齢層の生徒に水泳を教えてきました。そのため、人に何かを教えることも好きでした。子どもたちに水泳を教えることは、言葉の話せないペットの気持ちを理解すること、飼い主さんにわかりやすい言葉で説明することと似ていると感じる時があります。獣医師になった今、動物が好きなこと。そして、何かを指導したり説明することが得意なこと。その両方が生かせる天職だったのだと実感しています。

これまでの獣医師人生で影響を受けた方はいますか?

大学を卒業後に勤務した医院で出会った先生は、技術力や経験、豊富な知識がそろっていることはもちろんですが、「この先生に任せれば何とかしてくれそうだ」と思わせるような不思議な魅力のある方でした。私も、その先生に憧れ、こんな獣医師になりたいと思いながら勉強してきました。私のめざす獣医師像は、飼い主さんにとって、どんなことでも話せる、どんな時でも頼れる、そんな存在です。病気が治って喜んでいただけることはすごくうれしいこと。しかし、当然ですが、病気が治らずに亡くなってしまうこともあります。私が獣医師をしていてよかったと感じる瞬間は、それでも「ありがとう」、「先生に頼んでよかった」、「またペットを飼ったら先生に診てもらいたい」と仰っていただけた時ですね。助けられなかった悔しさはありますが、そんな飼い主さんたちからの温かいお言葉が励みになり、またそう言っていただけるように尽くしていこうと日々の活力が生まれます。私は、ペットの診療以外でも飼い主さんとの交流が続くことが多いです。実は、当院のロゴマークも、長くお付き合いのある飼い主さんが作ってくれたもの。ペットたちを通して多くの人々と出会い、その後もつながっていける。それも、この仕事が好きな一つの理由です。

楽しくお仕事をされている印象です。

ペットたちと触れ合うことも、人とお話することも大好きですから、仕事はすごく楽しいですよ。ついつい、休診日を作るのを忘れてしまうほど(笑)。特にここ最近は、開業準備で休みなく働いていました。それでも、リフレッシュ時間も大切にしていますよ。私は食べることが大好きなので、午前診療の日には、ランチは何を食べようかな、とわくわくしています。診療が混み合って体力的に疲れている時ほど、何かおいしいものを食べるようにしています。自宅では、料理を作ることも。最近の得意料理はナポリタン。趣味程度なので、妻には負けてしまいますが(笑)。おいしい物を食べて、家族で過ごす時間が何よりのリフレッシュ方法ですね。

飼い主と心の距離が近い動物病院をめざして

飼い主と接する際に気をつけていることはありますか?

私は診療前に、飼い主さんとたくさんお話するようにしています。「名前はどうやって決めたの?」、「どうしてこの子を選んだの?」など、簡単なお話からはじめることで、飼い主さんとの距離を縮めていきたいのです。その間は、ペットたちは診療台には乗せずに飼い主さんに抱っこしていてもらっています。そうすると、だんだんペットたちの緊張感も解れて場所にも私にも慣れてくれます。また、飼い主さんが私と仲良く楽しく話している姿を見ることで、ペットたちも私を信頼して心を開いてくれるのですよ。ペットたちは飼い主さんの表情や行動を見てその気持ちを読み取ってしまうもの。そのため、例えば注射をする時でも、針が刺さる瞬間に飼い主さんの顔が強張ってしまうと、ペットたちも恐怖心が強まってしまうのです。そのため当院では、飼い主さんにも気付かれないように会話の途中で注射をしたりしています。そうして、いかにペットたちに「怖い」という感情を与えないように診療していきたいと思っています。

先生の治療方針をお聞かせください。

私は、必要以上の診療はしたくないと思っています。経過観察で済む可能性があるにも関わらず、とりあえずの検査をしたり、副作用の強いお薬を処方したり、症状がほとんど出ていないのに念のため注射をしたり。そういった必要以上の診療は、ペットたちの体や、飼い主さんの金銭面や時間面など、余分な負担をかけてしまいます。私が大切にしたいのは、何より毎日を元気で過ごしているかどうか。起きて、ご飯を食べて、遊んで。トイレも問題なく行っている。もちろん、この先悪化する可能性がある場合にはしっかりと治療していきますが、経過を見ていても問題ない場合は過剰な診療はしたくないのです。治療や検査の優先順位をはっきり提示することで、必要最低限の診療だけを行っています。

最後に、今後の展望をお願いします。

どんな病気であっても、どんなペットであっても、気軽に来院できる医院でありたいと思っています。来ていただければ、それがどんな病気なのかを診断し、ペットそれぞれに合わせた治療を行っていく。専門外であるならば、よりよい治療が受けられる医療機関をご紹介しています。飼い主さんにとって何が最善なのか? それを提供していくことこそ、開業医の役目なのだと思うのです。私はこれまで、どんなペットでも症状でも、診断だけはしっかりと付けられる獣医師になりたいと考えて勉強してきました。そのため、開業する際には診断に必要な超音波やレントゲンなどの機器もそろえました。そうして、「何かあればとよす動物病院に来れば大丈夫」と思っていただけるよう貢献していければうれしいですね。めざすのは、飼い主さんと心の距離が近い動物病院。体重を測りに、爪を切りに、お顔を見せに来てくれるだけでも構いません。そんな、気軽に立ち寄れる身近な存在になれるよう精一杯尽力していきたいと考えています。

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