熊谷 肇 院長の独自取材記事
くまの犬猫病院
(座間市/さがみ野駅)
最終更新日: 2023/01/22
「黄色は私の大好きな色なんです」と、ヒマワリのような明るい笑顔で出迎えてくれたのは、2015年3月に開院したばかりの「くまの犬猫病院」の院長、熊谷肇先生。子どもの頃に愛猫を亡くした自身のほろ苦い経験から、飼い主の心に悔いの残らない納得のいく治療をモットーとしている。「隠し事はしたくない」と、いいことも悪いこともすべてをきちんと説明した上で、どうするのがよりよい選択となるかを飼い主と一緒に考える姿勢を慕う患者も多い。ペットとの関係と同じくらい、飼い主とのコミュニケ―ションも重視する熊谷先生に、開院に対する思いや診療方針について熱く語っていただいた。 (取材日2015年6月8日)
「飼い主」「動物」「獣医師」「地域」の絆を大切にしながら、みんなの幸せのために頑張る犬猫病院
3月に開院されたばかりとのことですが、明るくてとても気持ちのいいクリニックですね。
ありがとうございます。内装はみんなが元気になれるように黄色を前面に出しました。実は黄色は私の大好きな色。楽観的な私のイメージカラーでもあるのでとても気に入っています。外から中の様子がよく見えるようにガラス張りにしてあるのですが、カラフルすぎて「なんだろう?」と皆さん不思議に思われるのでしょうか、当院の看板を見て納得されているようです。四葉のクローバーをあしらった当院のロゴには、「飼い主」「動物」「獣医師」「地域」という4つの意味を込めました。地域に密着しながら、大切な家族の一員である犬や猫のために飼い主さんの気持ちに寄り添い、家族みんなが幸せになれるような診療を心がけていきたいという思いから生まれたデザインです。
院内の設備について教えていただけますか?
レントゲンや超音波、血液検査など基本的な検査や診療には一通り対応できるようにしてあります。前に勤めていた「すどう犬ねこ病院」の須藤院長に言われた「三流は言われて仕事をする、二流は仕事ができる、一流は仕事を見せる」という言葉が印象深くて、自分が開業したらやったことをきちんと人に見せられる仕事をしようという思いがあったので、電子カルテを導入して写真などすべてを記録に残せるようにしました。診療についてはメリットやデメリットだけでなく、費用のことも事前に納得していただけるよう、飼い主さんと一緒にモニターや資料を見ながらわかりやすい説明をするよう心がけています。特に費用については不安な方も多いと思うので、ホームページにも目安を載せました。ご参考にしていただければと思います。
ペットホテルやトリミングにも対応していらっしゃるそうですね。
2階がトリミングとペットホテルのスペースになっています。実は昨夜も「先生ちょっとお願いします」と飼い主さんがワンちゃんを連れてこられたところなんですよ。動物病院にペットホテルやトリミングを併設するメリットは、高齢だったり持病があったりして普通では断られてしまうことの多いペットにも対応できるという点ではないでしょうか。例えば、お預かり中に万一体調を崩すことがあっても飼い主さんと連絡を取り合いながら迅速に対応することが可能ですし、お預かりの際には獣医師による健康チェックも行うので病気などの早期発見につながります。日頃の元気な時からお付き合いがあれば、具合が悪くなった時でも恐怖心やストレスをあまり感じることなく診療を受けられるので、言葉を話せない犬猫たちのためのよりよい診療につなげていけるのではと考えています。
飼い主がきちんと納得のできる方法こそ最善の治療
獣医師をめざすことになったきっかけについて教えてください。
小学校4年生の時に飼っていた猫が交通事故に遭いました。頭に致命傷を負ったらしく、手の施しようがないことは誰の目にも明らかで、愛猫が息を引き取るのを見守ることしかできませんでした。家族のように接してきた愛猫に何もしてやれなかったという、ただただ悔しい思いが残りました。父が技術者だったので一度は技術職の道に進もうとしたのですが、どうしてもこの時の思いが忘れられず、進路変更して獣医師の道をめざすことにしました。親はかなり驚いたようですが、小さい頃から一度やると決めたことは誰に何と言われようとやる子どもだったのでわりとすんなりと認めてもらえました。どちらかというと説得が大変だったのは学校の先生。それでも最後には先生方も推薦状を書いて応援してくれました。
飼い主の気持ちにとことん寄り添うことをモットーとしていらっしゃるのですね。
獣医師の役目は動物を治療することですが、私はただ治せばいいとは思っていません。本来なら動物の命を最優先すべきなのでしょうが、飼い主さんあってのペットなので、高額の診療費に飼い主さんの生活が崩壊してしまっては元も子もないのです。腫瘍の治療に百万円かけて1年延命するのと、たとえ余命2〜3カ月になったとしても飼い主さんの納得のできる形で治療するのとではどちらがいいのでしょうか。また、回復の見込みがないからといって治療を打ち切るのと、苦痛を和らげるなどできることがあることをきちんと説明するのとではどちらがいいでしょうか。私に出来ることは自分がよかれと思う方法を押し付けることではなく、できることとできないことを明確にした上で、費用のことも含めていろいろなやり方があることをきちんと説明し、飼い主さんが1番納得できる方法で治療を進めていくこと。獣医師だからこそ「この方法しかない」と決めつけることなく、知識と経験を総動員してあらゆる可能性の中からよりよいと思われる方法を提示するのが自分の役割で、選択するのは常に飼い主さんであるべきだと思っています。さまざまな枠にとらわれることなく、とことん飼い主さんの気持ちに寄り添うためには独立するしかないと開業を決意しました。
獣医師で良かったと思うのはどのような時ですか?
犬や猫が元気になって飼い主さんに笑顔になっていただけた時がやっぱりうれしいですね。ただ、犬や猫はどんなに長生きしたとしても基本的には人間より早く死んでしまいます。私はどうしたらいい最期を迎えさせてあげられるだろうかということを常に意識するようにしています。ペットを亡くした飼い主さんに「ここまでやってくれてありがとう」「くまさん、次の子の時もよろしくね」と言っていただけたときなどは獣医師冥利に尽きる思いです。命に関わる仕事なので嬉しいエピソードはたくさんありますが、最近では以前の勤務先で診ていた飼い主さんが「やっぱり先生に診てもらいたくて」と車で小一時間ほどかけて当院まで来てくれたことが本当にうれしかったですね。
緊急時にも柔軟に対応できる地域に密着した診療を
開院したてで大変お忙しい毎日だと思うのですが、休日はどのように過ごされているのでしょうか。
休診日は木曜日なのですが、子どもたちは幼稚園へ行ってしまっているので、私は買い物やセミナーに出かけることが多いですね。日曜の午後と祝日も休みなので、そういう時は子どもたちを連れて遊びに行くようにしています。最近ようやく時間がとれるようになってきたので、高校時代にはまっていたゲームをもう一度やってみようかなと考えているところです (笑)。
ペットのかかりつけ医を探している方にアドバイスをお願いします。
一番いいのは他の飼い主さんにお勧めの獣医師を聞いてみることだと思います。ともに生身の人同士ですから、獣医師と飼い主さんといえども相性もあると思います。まずは診療方針や費用のことなどざっくばらんに話を聞いてみて、たとえ周りのみんながいいと言っていても、もし自分に合わないと思えば無理をする必要はないのではないでしょうか。良好なコミュニケーションがあってこその信頼関係ですから、大切なペットのために生涯気持ちよくお付き合いのできそうな獣医師を選ばれることをお勧めします。
今後の展望についてお聞かせください。
獣医師になって一番に感じたことは、この仕事は「生涯勉強」だということです。信頼されるためには現況に甘んじることなく常に獣医師として成長していかなくてはならないし、いい加減なことはできません。一通りの検査や診療に対応できる体制でスタートしましたが、将来的には消化器系疾患や腫瘍の治療にも力を入れていきたいと思っています。また、予防医学の観点からも年に一度は健康診断を受けていただいて病気の早期発見・早期治療につなげていきたいですね。
最後に読者にメッセージをお願いします。
当院は上の階が自宅になっているので、緊急時は夜中でも柔軟に対応することができます。地域のホームドクターとして「あそこへ行けば何とかしてもらえる」と1人でも多くの方に認識していただけたらうれしいですね。そのためにも、まずは気軽に遊びに来ていただける雰囲気をつくっていきたいと思っています。散歩や買い物の途中に立ち寄っていただいて中をのぞいてもらってもいいし、ワンちゃんのおやつもありますよ。おやつをあげるだけでも性格や触っても大丈夫なのか、どのくらいの距離をとればいいのかなどたくさんのことがわかります。何かあってからではなく、日頃からのコミュニケーションを積み重ねながら地域のみなさんとの絆を育んでいけるようスタッフ一同お待ちしております。