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都倉克信 院長の独自取材記事

動物救急センター

(川口市/東川口駅)

最終更新日: 2023/01/22

JR武蔵野線、埼玉高速鉄道東川口駅南口から徒歩で約10分のところにある「動物救急センター」。一般の動物病院では治療や管理が難しい犬や猫を少しでも多く救命しようと2010年4月に開院された、犬・猫専門の二次救急診療施設である。院内にはMRIやエコーをはじめとする検査機器をはじめ、さまざまな医療機器を導入し、救急診療に随時対応する。2013年より院長に就任した都倉克信氏は、「些細な症状の変化も見逃さない24時間体制による入院管理が、当センターの大きな特徴です」と語り、ドクター、看護師とのチームワークを重視し重症例や緊急症例の診療にあたっている。そんな都倉院長に、開院の経緯や診療体制、今後の展望などについて伺った。 (取材日2015年7月21日)

治療や管理が難しい病気にかかった動物の命を救うために

開院された経緯を教えてください。

当センターは、救急診療に特化した犬・猫専門の動物病院で、2010年4月に開院しました。最近は、ペットも人間と同様高齢化してきていて病気も多様化してきています。多くのかかりつけの動物病院と連携し、「一般の動物病院では治療や管理が難しい病気の動物たちを少しでも多く救命したい」というところから、当センターが作られました。二次救急診療と聞くと「夜間」のイメージがあり、もちろん夜間の診療にも対応していますが、メインの救急診療は昼間で、連携している動物病院からの完全紹介制という診療システムをとっています。かかりつけの動物病院と連絡を取り合って診療内容を連携し、当センターで治療が終了した後は、かかりつけの動物病院で継続治療やアフターケアを行ってもらう…という流れです。僕は日本大学農獣医学部(現在は生物資源科学部)を卒業後、首都圏のいくつかの動物病院での勤務を経て、高度医療センターにも勤務しました。そこで当センターの前院長と出会い、前院長から当センターで一緒に働かないかという打診を受け、開院と同時に勤務を始めました。諸事情により前院長が他の病院に移ったことをきっかけに、2013年に院長に就任し、今に至ります。

紹介制の二次救急診療機関なのですね。

はい、そうです。当センターは、埼玉県を中心に主に首都圏、北関東地方の動物病院約500件と連携し、協力体制を整えています。最近では、飼い主さんのペットに対する意識も随分変化してきていて、家族の一員としてペットを迎え入れ、一緒に暮らしている方が大半です。ですので、重篤な病気にかかって苦しんでいる動物たちを救うことで、飼い主さんのペットを思う気持ちに寄り添っていきたいと思っています。同時に、当センターが診療にあたることで、かかりつけの動物病院のドクターの負担を少しでも減らすというのも、センター設立時のコンセプトの一つです。飼い主さんはもちろん、かかりつけの動物病院のドクターの希望に沿った形での的確な診療を心がけています。

どのような症状の動物が多いのですか?

椎間板ヘルニアや重責発作などの神経疾患で来院するワンちゃんが、全体の症例の半分くらいを占めています。ヘルニアは、犬の中でもダックスフントなど胴が長い犬種がかかりやすいですね。症状が進むと歩けなくなったり、トイレがきちんとできなくなったりしてしまうので、早期に診断して適切な治療を開始するのが重要になってきます。当センターでは飼い主さんが希望されればMRIで画像診断し、ヘルニアの場合は必要に応じてその日のうちに手術しています。重度のヘルニアでこれまで歩けなかったワンちゃんが当センターで手術を受けて歩けるようになり、飼い主さんから喜んでもらうことも多いですね。

動物たちを24時間集中管理し些細な変化も見逃さない

重責発作はどのように診療されるのですか?

軽度のてんかん発作の場合は、時間が経過すると自然に治まり、通常、発作が原因で命を落とすようなことはありませんが、重責発作は十数分止まらない発作で、発作を止めないと、場合によっては死に至ります。原因としては脳炎や脳腫瘍などがあげられ、重責発作と診断した場合は注射や点滴で発作を止めます。症状によっては数日間入院してもらって管理し、症状が落ち着いて飲み薬だけで家で生活できるくらいになったところで飼い主さんにお戻ししています。猫は腎不全など泌尿器系の病気で来院する割合が多いです。入院期間は動物の種類や病気、具体的な症状によってさまざまですが、長い子で1〜2週間くらいというところです。

医院の一番の特色はどんなところでしょうか?

いわゆる高度な手術を施すような病院は、一般の病院でも大学病院などの大きい病院でもたくさん存在します。でも、「手術が無事終わったからそれで終わり」というわけではありません。もっと大切なのは、周術期の管理だと思うんです。せっかく手術が成功しても、術後の管理が不行き届きで亡くなってしまったら元も子もないですよね。重症例の診療が多い当センターでは、一年を通して24時間集中管理体制をとっているところが大きな特色です。夜間の時間帯も、夜間獣医師、夜間看護師が交替で見守る体制ができていますので、いっときも目をはなさず様子を診る必要がある動物にもていねいに向き合っています。突然の異変などにも臨機応変に対応できるよう、スタッフや医療機器の配置などに常に気を配っています。当センターの集中管理体制については、他の高度医療施設にもひけをとらないと自負しています。

スタッフの連携について心がけていることはありますか?

当センターは、僕を含めて4名の常勤の獣医師、5名の非常勤の獣医師、8名の看護師でなりたっています。大規模な病院ではないですし、人数も少ないのでスタッフ同士でコミュニケーションを密にとりながらよりよい医療を提供できるよう日々診療しています。僕自身の得意分野は神経内科、神経外科、一般内科、軟部外科ですが、僕からすべての指示を出すのでなく、それぞれのドクターや看護師の得意分野を生かしながらチームワークで診療にあたるようにしています。県外に関連病院があり、週に1度、その医院の理学療法士に当センターまで足を運んでもらい、手術後の犬や猫のリハビリや術後のケアをお願いしています。

一歩先の知識を吸収しながらより良い医療を提供していきたい

獣医師をめざしたきっかけを教えてください。

父が動物好きで、小さい頃から犬や亀、魚などを自宅で飼っていました。生き物が身近で、僕もよくお世話をしていました。高校時代は理系で、大学では獣医学科へ進みました。ちょうどその頃、実家でずっと飼っていた犬が病気になってしまったんです。病気の原因などはよく覚えていないのですが、病院に連れていってもどんどん弱っていくばかりで何もしてあげられず、自分で治療ができたらなあと思ったことがきっかけでした。獣医師になった当初は、いわゆる一般的な動物病院に勤務していたのですが、二次診療の専門病院に移ってより困難な手術が必要な動物や注意深い経過観察が必要な動物の診療に携わるうちにやりがいを感じるようになり、今に至っています。一般的な動物病院に勤務していた時、診療に困ったら気軽に相談でき、夜でも受け付けてくれるような救急病院が近くにあったらいいなとずっと思っていたので、これからもこの診療スタイルを続けていくことで、飼い主さんやかかりつけの動物病院のドクターに信頼される病院でありたいと思っています。

お忙しい日々の中、オフタイムの過ごし方を教えてください。

仕事以外の時間に楽しんでいるのは、温泉に出かけたり、釣りに出かけたりすることです。釣りはもっぱら海釣りですね。釣り船に乗って沖まで出て釣りをするのですが、この辺からですと房総や沼津など、遠方まで足を運ぶことが多いですね。夜中に出発し、早朝に釣りをしてその日のうちに帰ってくるので体力は使いますが、心身共にリフレッシュできます。以前は月に1〜2回行っていたのですが、最近は忙しくて、何ヵ月かに1度行くか行かないか、といったところです。もう少し足しげく通いたいですね。それから、あまり家にいないので犬は飼えないのですが、猫を2匹飼っています。

今後の展望について教えてください。

二次救急診療の専門病院として、これまでと同様常に勉強し、進歩し、使命感をもって診療に取り組んでいきたいと思っています。獣医学の世界は進歩が激しいので、勉強を怠っているとすぐにおいていかれてしまう世界でもあります。これからも積極的にセミナーに参加したり論文を調べたりなどしながら獣医師としての研鑽を続け、常に一歩先の知識を吸収しつつ、よりよい医療を提供していきたいと思います。

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