河野 亮 院長の独自取材記事
こぐま動物病院
(中野区/東中野駅)
最終更新日: 2023/01/22
再開発の進む街・東中野。駅から歩くこと8分、早稲田通り沿いに「こぐま動物病院」は立っている。あたたかみのあるアースカラーを使い、シンプルですっきりした院内には、ペットホテルとトリミング施設も併設。院長をつとめる河野亮(こうの・りょう)先生は都内の動物病院に勤務した後に、改めて大学病院の全科研修医としてすべての科を回り勉強し直した。その真摯な姿勢が患者さんや飼い主さんとのよい関係に結びついていくのだろう。新しく清潔な院内でさまざまな話を伺った。 (取材日2015年7月24日)
獣医として経験を積んでから、改めて大学病院の全科研修医に
2014年11月に開業されたそうですね。東中野で開業なさったのはなぜですか。
日大の付属校に通っていた学生の頃から中央線を利用していましたので、この辺りには昔からなじみがありました。東中野は中央線沿線の中でも快速電車は止まらず、その分ゆったりとした雰囲気があって、昔ながらの住宅街があるのが魅力でしたし、その一方で駅前の再開発が進んで若い人に向けたテナントビルができるなど新しさもあります。いろいろな面のある面白い街だと思ったのが、惹かれた理由のひとつですね。「こぐま」という名前は、かわいらしくて覚えやすい名前を、ということで決めました。
開業の際どのようなところにこだわられましたか。
まず第一に清潔感のある動物病院にしたいと思いました。掃除をしやすいようになるべく物を置かず、シンプルな設えにしました。人間のクリニックにも言えることでしょうが、病院はどうしても無機質で冷たいイメージになりがちです。あたたかみのあるアースカラーを基調にした内装にし、入り口には芝生を植えたり、自転車を置いたりするなど、気軽に入りやすい雰囲気を目指しています。開業して半年あまりですが、ありがたいことに近隣の方にたくさんおいでいただいています。もともと地域に根ざした医院を志していましたので、「近くにこの動物病院ができてよかった」と言っていただけるのはやはりうれしいですね。犬、猫の患者さんが8〜9割ぐらいを占めていますが、ウサギやハムスターも診察しています。
大学卒業後、都内の動物病院で勤務したのち、改めて大学病院で研修医になられたそうですね。
はい。麻布大学附属動物病院の全科研修医になりました。動物にも、外科、内科、腫瘍科、循環器科、眼科など人間と同じような専門科が一通りあり、全科研修医というのはそれらすべての診療科目を1年間かけてローテーションで回り、万遍なく学んでいくという制度です。一度社会に出てから大学に戻ったのは、日々働く中で改めてもっとしっかり勉強をしてみたいという気持ちが沸き起こったことがありますし、勤務医としての経験をある程度積んだ時点で、自分がいったいどのくらいのレベルになったのかを見直したいという気持ちもありました。私が大学にいた頃と比べて、現在どこまで高度な医療が行われているのか知りたい欲求もありました。
研修医体験はいかがでしたか。
自分の勤務医としての習熟度について自信をもてた分野がある一方、逆にここは勉強が足りなかったなと思う、いわば一人では気づけない弱点もわかりました。病院によって、あるいは先生によって、どうしても得意な分野・不得意な分野ができてしまいます。同じところにいれば一つのやり方に固まってしまったり、そこではなかなか体験できない事例が出てきたりします。多くの専門の先生、多くの症例の集まる大学病院で各科を一通り回れたというのは、今の自分のために役立っていると思っています。特にレントゲンや超音波による画像診断に興味を持って取り組んできました。人間と違って、動物の患者さんは「ここが痛い」「あそこが具合が悪い」と訴えることができません。ですから全体を診て異常を探し、小さなうちに見つけ出す必要があります。日々の診断でも。画像診断の果たす役割は非常に大きいですね。
治療法はいろいろな選択肢を展示
診療の際にどのようなことを心がけていらっしゃいますか。
診断はなるべくわかりやすく伝えるということが第一です。また、たとえ重い病気だとしても重苦しい雰囲気にならないよう、飼い主さんが前向きに病気と向き合えるように努めてお伝えしています。私個人としては診断を下すときには、一つの固定観念に捉われて全体の見落としがないよう、注意しています。飼い主さんの情報は大切ですが、飼い主さんからみて調子が悪いという言われるところ以外に原因がある場合もあります。また、飼い主さんによって動物の医療へのお考えはいろいろです。とにかく痛くない選択肢を望む方がいらっしゃれば、お仕事などで動物に関わっていられる時間に制約がある方もいらっしゃいます。治療の仕方はひとつではありません。その動物、その飼い主さんに合ったよりよい治療法が見つかるよう、様々な選択肢をご提示し、一緒に相談しながら治療を進めていきます。複数の動物病院に在籍してきましたので、同じ症例でも病院ごとにかなり治療法が違うことを体験してきました。
ペットホテルとシャンプー・トリミングも行っていらっしゃいます。
単純に病気を診るというだけでなく、患者さんに何かお困りのことがあれば対応できるようにと思って併設しました。お預かりの際には、必ず健康診断をするようにしています。そこで異常が見つかればすぐにお伝えできますし、異常がなくても毎回「この季節にはこういう注意が必要」といったアドバイスをしたり、「ここが気になっているのだけれど」といったご相談を受けたりもしています。ホテルにお預かりしたペットの様子は、スタッフが日々病院のブログにアップしています。飼い主さんには「離れていても様子を確認できる」と好評をいただいています。シャンプー、トリミングの後にもきれいになった姿を写真に撮るだけではなく、印刷して記念にお渡ししているんです。先月来ていただいた子たち全員の写真を1ヵ月ごとにまとめて入り口のボードにも貼っています。こうした一つ一つが、皆さんに喜んでいただけるとこちらもうれしいですね。
ペットにも健康診断は必要でしょうか。
簡単な健康チェックだけでなく、いわゆる「動物ドック」のような精密な検査を、健康なときから行っておくのが大事です。「動物ドック」では血液検査や尿検査の他、レントゲン、超音波などで全身をくまなく診ていきます。動物は人間よりも個体差が大きいので、その子の健康な状態を前もって知って、きちんと記録に残しておくというのも健康診断の大事な役割です。しこりなど何か異常が起きたときに、それがもともとあったものか、最近できたものか判断できるよう、比較対象となるベースが重要なんですね。ペットの場合も年に1回ぐらい、定期的に検査を受けていただくといいかと思います。動物は人間より年を取るスピードが早いので、7,8歳になりますと人間でいう中年です。10歳を超えましたら半年に1回検査を受けても決して多くはないですね。
飼い主、ペット、みんなが幸せになれるように
獣医になられたのはやはり動物がお好きだったからでしょうか。
もちろんそれもあります。子どもの頃から犬、ウサギ、ハムスターなど動物を飼うのが当たり前という環境で育ちました。特に犬は、小さい頃からずっと一緒にいましたので、ともに成長してきたという印象があります。それに加えて、僕は日本大学の付属校出身で、進路としては芸術学部から医学部まで、いろいろな選択肢があったわけです。そこで、ちょっと人とは違うことをしたいなという気持ちが働き、物事をじっくり取り組むのが好きということもあって、獣医師を選びました。獣医師の中では変わり種かもしれません。
どのようなことでリフレッシュなさっていますか。
以前はバイクが好きで自分で整備をしながらツーリングにもよく出かけていたのですが、最近はなかなか時間がとれなくなってしまいました。最近の趣味といえるものは散歩でしょうか。特にコースは決めていませんが、東中野の街を隅から隅まで(笑)歩いています。気がつくと、1時間、2時間と経っているんですよ。歩きながら気持ちが整理されることもあれば、何か新しいことを思いつくこともあります。街のこんな場所にこんなものがあったんだと発見をすることもありますね。
これからの抱負をお聞かせください
自分がペットとともに成長してきたという経験があるからか、一人の患者さんを長く診ていきたいという思いがあります。子どもの頃から、年を取って亡くなるまで、成長を見ながら、長いお付き合いのできる患者さんが増えていくといいですね。ペットが年齢を重ねるとともに、お困りのこともいろいろと出てくるでしょう。そういったご相談に幅広く対応していけるようにしたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
獣医師になりたての頃はただ動物と触れ合っていればいいというわけではないので、悩んだこともありました。今は、単に病気を診るだけでなく、飼い主さん、患者さん、みんなが幸せになってくれることにやりがいを感じています。ペットホテルやトリミングの用意もありますので、お気軽に遊びにお越しください。お顔を見せていただくだけでもかまいません。ちょっとしたことでも、何か気になることがあるようでしたら、お話だけお伺いしてもいいですし、もちろん検査をすることもできます。悩みを抱え込まずににいろいろ相談していただければと思います。