中村 悟 院長の独自取材記事
七里動物病院
(さいたま市見沼区/七里駅)
最終更新日: 2023/01/22
東武アーバンパークライン七里駅から徒歩12分ほど。住宅街の中にある一軒家風の建物が「七里動物病院」だ。笑顔が素敵な中村悟院長は、兵庫県出身。ブランド牛で知られる但馬牛が多い地方で育ったという。1994年に同院を開業して以来、地域の動物たちを見守ってきた。「開業して20年にもなると、以前は小学生や高校生だった子どもたちが、立派な社会人になって来院したりするんですよ」とうれしそうに語る。ボランティアとしてアニマルセラピーにも取り組み、老人ホームや小児医療センターを訪問。また、夜間診療にも力を入れており、地域の夜間救急病院の立ち上げにも関わってきた。そんな動物思いの優しい中村先生に、獣医師をめざしたきっかけから、診察の際の心がけ、自身の趣味に至るまでを幅広く聞いた。(取材日2016年3月14日)
身近に動物がいる環境で成長し、獣医師をめざす
先生が獣医師をめざしたきっかけについてお聞かせください。
私は兵庫県出身で、但馬牛というブランド牛が多くいる地域で育ちました。実家の納屋にも牛がいたので、獣医師さんが来ることもありました。実際に牛の世話をすることはなかったのですが、中学1年生の時、牧場で職場体験をしてから、動物に関わる仕事を身近に感じるようになりました。その頃から、漠然とですが、牛を診る獣医師になりたいと思うようになっていました。その後、大学に進学して初めて、牛を診る獣医師だけでなく、製薬メーカーに就職したり、公務員になったりするという他の選択肢もあることに気づいたんです。その頃、私が所属していた公衆衛生学研究室に出入りしていた開業医の先生のところに遊びに行く機会がありました。それから、「開業という道もあるんだ」と思うようになりましたね。
これまでのご経歴や、来院される患者について教えていただけますか?
私は、1991年に日本大学農獣医学部獣医学科を卒業しました。獣医学科では牛のような大動物だけでなく、魚から細菌やウイルスに至るまでが対象でした。大学を卒業後、川口動物医療センターで3年間勤務させていただき、1994年に当院を開業しました。当院の患者さんは、ワンちゃん・猫ちゃんが多いですね。症状としては、胃腸症状や皮膚病から癌患者さんまで、いろいろな症状の患者さんを診てきました。例えば、もう駄目だと思っていた子が、頑張って何年も生きていたり、24時間以内に亡くなるかもしれないと思われた子が良くなることもありました。また、外科手術が必要なケースで、もう難しいと思った子が今も通院していたりするんです。そのような子たちを見ると、獣医師としてやりがいを感じますね。
開業してから長くなると、いろいろと印象に残るエピソードがおありではないですか?
開業して20年にもなると、以前は小学生や高校生だった子どもたちが、立派な社会人になって来院したりするんですよ。つい最近も「あの時犬を預けたのは、僕だったんですよ」と言う方がいました。すぐには思い出せなかったんですが、よくよく考えると、確かに大きなかばんに子犬を何匹か入れて連れてきた子どもがいたなあと。その方が高校生の頃に、子犬を保護してこの病院に預けていたんですね。その時の子犬たちは、それぞれ飼い主さんたちにもらわれていきました。また、ヤギなどの珍しい動物を診ることもありましたね。
地域住民を支えるため、アニマルセラピーにも取り組む
診察の際に、先生が心がけていることについてお聞かせください。
かなり高齢のワンちゃんや猫ちゃんも来院しますので、場合によっては難しい話もしなければなりません。丁寧に説明することはもちろん、飼い主さんやペットたちの不安を和らげるよう、常に努めていますね。当院には、診察室が2つあるんですが、自分が担当していない他の診察室にもなるべく顔を出して、飼い主さんにごあいさつし、ペットを“なでなで”してあげます。また、それぞれの患者さんのことをよく把握するために、毎日すべてのカルテと電話内容もチェックするようにもしています。スタッフたちも、診察室や待合室を何度も行き来して、患者さんの不安を和らげるよう努めてくれているんですよ。
同院ではアニマルセラピーを行っているそうですね。
アニマルセラピーについては、日本動物病院協会(JAHA)の一会員として活動させて頂いています。JAHAの恩師の先生から大宮の近所にある老人ホームを紹介していただいたのが、実際の活動の始まりですね。それから、徐々に増えて、現在は3ヵ所の施設を訪問しています。現在、当院のスタッフと市民ボランティアさんで、犬猫たちと一緒に、毎月老人ホーム2ヵ所と埼玉県立小児医療センターの特別支援学校を訪問しています。老人ホームには、認知症の方も多いですが、私たちが訪問すると、微笑んだり、話しかけてくれたりします。時には、犬ではなく、私たちの手を握って笑顔になることもあるんです。施設で働いているスタッフさんも楽しみにしてくれていて、「ほら、あの子たちまた今月も来たわ!」と喜んでくださいます。
夜間の診療体制についても教えていただけますか?
夜間診療には、さまざまな問題も伴います。獣医師1人だけで診察するとなると、手術や処置もできないので中途半端な診察になりかねません。また、院内には危険な薬物も保管していますので、万が一のことにも注意が必要なんです。それでも、最近は、全国的にも夜間救急に対応する動物病院が増えてきました。私もこれまで地域の夜間救急動物病院の立ち上げに関わらせていただいてきました。最初は鳩ヶ谷にできました。それから何年かして大宮にもつくられました。飼い主さんたちも、「近くなって良かった」と言ってくださいます。翌朝病院が開くまで待つと、重症化してしまうケースもありますので、不安に思ったらためらわずに近隣の夜間救急動物病院に電話し、相談していただきたいと思います。
4人の獣医師の連携で、より確実な診察をめざす
飼い主としてどんなことを心がけるとよいでしょうか?
私は、家の中でペットと生活する事は、とてもすてきなことだと思うんです。ただし、家の中で飼う場合には、事故に気をつけていただきたいですね。例えば、食べてはいけないものを、間違って食べてしまわないよう注意してください。異物誤食という症例がとても多くなっています。また、ペットと一緒にお出かけすることも大切だと思いますね。一緒にお出かけできるような親密な関係やそうできるライフスタイルがあれば、とても素晴らしいと思うんです。ただ一緒に散歩に行くだけではなく、海に行ったり、旅行に行ったりしてみることもいいのではないでしょうか。今は、ペットと泊まれる宿もかなりありますからね。当然、ノミやマダニ、回虫などの寄生虫やワクチンにも配慮しないと行けませんね。
先生のご趣味やご自身が飼っているペットについても教えていただけますか?
趣味は、車と旅行ですね。できたらヨットに乗って遊びたいなとも思っています。バイクも好きで、バイクを持っていた時期もありました。またバイクにも乗りたいですね。ペットは、家と病院の両方で飼っています。家にチワプー、病院にトイプードルが3匹、チワワが3匹、ラブラドールが1匹、猫が3匹です。その中でも、イクラという名前の白いトイプードルはいつも病院内をうろうろしていますよ。患者さんたちも喜んでくれているようです。猫を連れて来られた飼い主さんが、イクラをいつも抱っこしてくれます。不思議なことに、イクラにもわかるみたいで、その方が来られると、すぐに出ていって抱っこされるんですよ。
最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
動物を飼っていると、「どう生活したらいいか?」「どう飼えばいいか?」など聞きたいことも出てくると思います。そんなときは、遠慮なくかかりつけ病院に聞いていただきたいですね。また、当院では現在、4人の獣医師と6人の看護師が在籍していますから、それぞれに聞いていただけると、何人もの意見が聞けますから有意義だと思います。当院では、スタッフ全員で一致協力して患者さんを診るようにしていますので、安心してお越しください。