上野 淳子 院長の独自取材記事
駅前通り動物病院
(さいたま市見沼区/東大宮駅)
最終更新日: 2023/01/22
「駅前通り動物病院」は、東大宮駅西口の駅前通り沿い、徒歩3分のところにある。近隣に住む人はもちろん、上尾や大宮などからの来院も少なくない。院長の上野淳子先生は、横浜と東京の2つの動物病院で勤務した後、2008年にこの地に開院。開業後も幅広い症状に対応すべく、技術向上に余念がない。プライベートでは1男の母。子育てを通じて得た気づきは診察にも生かされており、患者が話しやすい雰囲気をつくることを大切にしているそうだ。「これからも一人ひとりの患者さんを大切に診ていきたい」と言う上野先生に話を聞いた。 (取材日2017年6月7日)
みんなで動物をかわいがる子育てファミリーの手助け
開院から来年で10年ですね。この場所を選んだ理由を教えていただけますか?
ファミリー層が多いところで開院しようと決めて場所を探していたときに紹介してもらったのが、ここでした。小さなお子さんも含め、家族みんなで動物を大事に飼っている方のお手伝いをしたい、という気持ちがあったんです。子どもの成長や学びも兼ねて飼っているようなご家族のお手伝いですね。私自身も5年前に子どもを産んで、その想いはますます強くなりました。ペットの教育的効果を研究をしている方がいるのですが、そういう研究結果を見ても、優しい子に育つと思います。実際、ファミリーで来る方は多いですね。放課後や休みの日は子どもたちも一緒に来てくれて。子どもが悲しむ姿を見たくないから早く治してほしいという親御さんは多いです。
診療にあたって心がけていることを教えてください。
飼い主さんを不安にさせないことです。病気の説明で不安になってしまうのは仕方ないのですが、わからないまま帰っていただきたくないんです。難しい言葉で説明されてもわからないと思うので、病気が図解されている本をお見せしてご説明したり、紙に書いてお渡ししたりするようにしております。また、わからないところがないか伺うなど、質問してもらいやすいような雰囲気をつくるように意識しています。人間の病院でも、お医者さんが怖くて聞きたいことを聞けないこと、あるじゃないですか。私も子どもを小児科に連れて行ったときに、質問を聞きにくく感じたことがありまして。
先生ご自身が感じたことを生かしておられるんですね。
そうですね。先生が忙しそうで、こんなことを聞いたら申し訳ないかなと思ってしまったり……。ただ、聞くチャンスはそのときしかありませんよね。ですから、自分が診察するときは、質問してもらいやすい雰囲気にしたいなと思っています。それに、動物も子どもも、自分で症状を説明できないという点では似ています。診察する人はお母さんや家族とコミュニケーションを取ることになるのですが、患者である子どもへの対応を見て母親として嫌な気分になった経験があると、自分も気を付けようと思います。ここに来た方には嫌な気持ちになってほしくないんです。あと、ここは受付のスタッフや看護師も話しやすいと思いますので、クリニック全体でコミュニケーションをとることを大事にしています。
小さなことでも遠慮なく、気づいたら早めに受診を
普段の生活の中で飼い主が気を付けてあげられることを教えてください。
異変に気づいたら早めに受診してほしいと思います。「2ヵ月前から具合が悪くて」と来られる方もあるのですが、ワンちゃんたちの状況は短期間でずいぶん変わります。診察していて思うのは、小さいことに気づいて来られる方が多いということ。これは良いことだと思います。時には「しこりができているんです」と来られて、診てみたらしこりが小さくわかりづらい場所にあり、「どこだろう?」と一緒に探したりすることもあります(笑)。本当にかわいがっていないと見つけられないような異変ですから、大事に飼われているんだな、と思いますね。そういう小さなことでも、遠慮なく来てほしいです。一方で、かわいがるあまり、太らせてしまうケースが気になります。
太らせないようにするには、何に気を付ければ良いですか?
やはり食事ですね。特に、おやつをあげすぎている方が多いように思います。病院に連れてくるお母さんはわかっていても、お父さんやおばあちゃんが甘やかしてしまうこともありますよね。食事には家族全員で気を付けなければなりません。飼い主さんの中には「今度お父さんを連れてくるので先生から言ってください!」なんてこともあります。太りすぎは、関節痛や肝臓の病気、糖尿病、皮膚病などを引き起こす万病のもとですし、お散歩での解消が難しいです。おやつを我慢させること以上に、病気になることのほうがかわいそうですから、家族みんなで心がけていただきたいです。
先生はなぜ獣医師をめざされたのですか?
子どもの頃から動物や植物が好きで、生物や医療系のことに興味がありました。小学生の頃に、お医者さんや歯医者さんになりたいと話していたら、父親から「獣医さんという仕事もあるよ」と言われまして。ちょうど猫を飼っていたということもあって、面白そうだなと思いました。獣医学部を卒業した後、横浜の動物病院に勤務しました。動物を診るためには、飼い主さんとの信頼関係も重要ですから、丁寧な話し方など、ホスピタリティー面にも気を配ることが重要だと気づき、開院してからも心がけています。そしてもうひとつ心がけているのは、正常な状態を知っていないと病気の状態に気づけないということです。普段から、例えばワクチン接種で来た子の全身を診て、正常な状態を知っておくことで、病気のある子が来たときに異変に気づきやすくなります。
家族とペットの大切な時間を見守りたい
開院するときはどういうところを重視しましたか?
来やすい雰囲気にすることです。敷居が高くなくて、「ちょっとお散歩がてら寄ってみました」という方でも受け入れられるようにしたいと思っています。ここは待合室が歩道に面していますけど、中が見えるようにしたのは、そのほうが飼い主さんが安心して入れるかなと思ったからです。目の高さのところだけでも目隠しが貼ってあると、私はちょっと入りにくいなと思ってしまいますし、何となく怖そうに感じると行きたくないですよね。近寄りがたいところよりフレンドリーなほうが飼い主さんも話しやすく、質問もしやすいと思い、雰囲気づくりは重視しました。
先生にとっての仕事のやりがいを教えてください。
動物たちが元気に帰ってくれるときはやはりうれしいですね。逆に、残念ながら亡くなってしまったときでも、飼い主さんから「先生に診てもらってよかった」と言ってもらえたときはやっていてよかったなと思います。場合によっては検査をしても原因がどうしてもわからなくて、悔しい思いをすることもあります。わからないことはわからないとお伝えした上で、どこまでやりたいかという希望を飼い主さんに聞きながら治療をするようにしています。入院して病院で亡くなるよりは、おうちで一緒に過ごしたいという方はすごく多いですし、そういう方には無理には勧めません。説明と話し合いですね。お話する時間はしっかり取りたいと思っています。
地域の方にはどういうことを知ってほしいですか?
小さなことでもいいので相談していただけたらと思います。症状をネットで調べて不安になってしまう方も多いのですが、それよりここに来て直接聞いてもらえたほうが。また、一人ひとり丁寧に診察したいと考えて、この6月から予約診療制にしました。これまで、同じ時間に患者さんが重なって混雑することが結構多くて。混むとどうしても、説明が短くなってしまったり、十分にお話を伺えなかったりということがあったのですが、よりじっくりと診察できる体制になったと思います。開院から10年弱がたち、初めの頃に診たワンちゃんやネコちゃんが寿命を迎える年齢になってきました。最近は、ご家族の時間を数年にわたって一緒に見守れたかな、そうだといいなと思っています。これからも一人ひとりの患者さんを大切に診ていきたいですね。